1379 星暦559年 藤の月 24日 魔力認証結界(7)
試作品ならサイズはどうでもいいので、取り敢えず以前消臭魔術回路の実験に使った小屋の後ろの壁をぶち抜いて風除室モドキにして実証実験をしようと始めてみたのだが。
「やっぱちょっとこれ、大掛かり過ぎない?」
準備している最中でシャルロが音をあげた。
貴族としてお金を掛けることに慣れているシャルロでも大掛かり過ぎると思うなら、貴族はまだしも豪商とかでも嫌がりそうだな。
「警備の方への通信を繋ぐのは無しにして、単に比較的大きな音で『承認された人間以外が部屋に入ります』って録音した声を流す形にしたらどうだろう?
友人とか家族を誘っていると分かっていれば屋敷の使用人は何もしないだろうし、聞いていなかったら大丈夫か調べに来るように周知しておけばいいんだし」
アレクが提案する。
「だな。
とすると、入る時は魔力登録された人が決まった場所に触れたら防御結界が解除される形になって、中に入り……」
「それ、解除するんじゃなくて風除室の部屋側の扉の方に結界範囲が狭まる形で良くない?」
俺が黒板のメモを書き換えていたらシャルロが口を挟む。
「防御結界の範囲変更なんて出来たっけ?」
「範囲指定の指標を変える形にすれば、防御結界の範囲を変えられるでしょ?」
シャルロが指摘する。
確かに?
「範囲を狭くして風除室モドキに入れるようにして、入り口側の扉を閉めたら防御結界を入り口側のところまで元の指標を使って再展開するって感じで良いか。
で、その際に風除室の中に探知結界に魔力登録されていない人間が居たら録音された警報なり注意喚起なりが響き渡ると」
夜中にこっそり誰かに美術品を見せて自慢するって言うのはしにくくなるが、まあそれで良いかな?
貴族だったら夜中に大きな音を立てて使用人を驚かしても別に気にしないだろうし。
客人や家族の寝室からは部屋が離れているんだろう。多分。
防御結界と探知結界を組み合わせて、その際に防御結界の範囲指定を変更できる仕組みにする。そんでもって探知結界は最初に触れる部分で機能させるのと、風除室に入った後にその空間全体に機能させるのとで二通り必要になるが、取り敢えず遠隔の警備室まで通信機で繋がなくて済むだけ、もうちょっと単純かな。
「ちなみに破りやすい防御結界とそうでもない防御結界ってあるのか?」
アレクが俺に聞いてきた。
「う~ん、どれだって魔力を弱そうなところに注ぎ込めば壊せるだろ?
二重に展開して大丈夫だった防御結界が特に壊しやすいって訳でもないから、あれを使うんで良いんじゃないか?」
絶対に壊せない結界なんてないからな。
単純に壊し難い様にたっぷり魔力を使い、壊された時のバックアップを二重三重にしておく様な作りにしてあると突破しにくいってだけで、強固にすればするほど金が掛かるのは何でも同じだ。
「探知結界で魔力認証された人が入ったからって流れでないのに防御結界が解除された場合も警報が鳴るようにしておこうか」
シャルロが提案する。
「だな。
探知結界の認証以外で防御結界の魔力が消えたら警報が鳴るようにしよう」
これは誰にも言わないでしれっと含めておいたら、少なくとも最初の一回は仕組みを騙そうとした奴を撃退出来る流れになるんじゃないかな?
探知結界に探知されないように魔力の流れを止めるとか隠蔽するっていうのは比較的簡単だけど、探知結界に登録した魔力だと自分の魔力を誤認させるのは難しいから、実はこれって良い仕組みかも。
力技で結界を壊さない限りだし抜けないんじゃないかな。
そう考えると、もしも誰かがヤバい手紙とか裏帳簿をこのシステムの中に隠して、断れない人からそれの回収を頼まれた場合にどうするか……ちょっと考えておく方が良いかもなぁ。
最初から抜け穴を作るつもりはないが、少なくとも俺だったら何とか出来る方法っていうのをじっくり考えておかないと。
誰でも利用できる抜け穴は売り出す前に全部潰しておきたいが、ほぼ俺だけが使える抜け穴だったら残しておいても良いよな?
そう言うことしているから色々と依頼が来るんですよねぇ




