1375 星暦559年 藤の月 20日 魔力認証結界(3)
「へぇぇ、今度は防犯用の魔力認証結界?
熊避けから人間除けに代わる訳?
結界を展開している魔具に認証無しな人が近づけなくて安全性が高まるんだったら、美術館とか高級路線な宝飾店なんかも欲しがりそうね。
ちなみにそういう結界って、外部からの攻撃にどのくらい耐えられるものなの?」
毎度おなじみの休息日のシェイラ訪問で、ノンビリ朝食を食べながら先日始めた新しい開発に関して言ったら、そう聞かれた。
そういえば、前回来た時はまだ巨木を使った獣除け結界の話をしていたんだっけ。
あれから数日間の麻薬関連の捜査協力がやたらと面倒だった上に最後がなんかちょっと重苦しかったせいで、すっかり頭の中から熊避けのことが消えていた。
流石に巨木の生命力を活用した熊避け結界は魔力認証を使った防御結界には使えないよなぁ。
巨木に樹木霊が居るならば特定の個人と契約を結んでそいつだけ入れるような結界を作ってくれと頼めなくはないかも知れないが、常に一人しか通さない上に、何かあって変更を申し出たくても下手をしたら数年間ぐらい樹木霊がこちらからの要請に気付かない可能性があるから、実用性が低すぎる。
精霊や妖精と契約した魔術師がいれば少なくとも要請には気づいてもらえると思うが、そういう魔術師ってそう多くはないからなぁ。
まあ、港に行けば船に乗る契約をしている魔術師の多くは水精霊と契約していると思うが、連れてきて時間が掛りがちな樹木霊との交渉に付き合ってくれなんて言ったら船の出航に間に合わないと速攻で断られそうだ。
確か軍にも風精霊と契約した奴がいたと思うし、考えてみたら学院長だって火精霊の加護持ちだから、国がやってみたいなら協力を得るのは可能だろうけど。でもやはり一人しか樹木霊の契約相手になれないことを考えると、応用性が無すぎてダメだろ。
それはさておき。
「結界ねぇ。
魔術で壊そうと思ったら魔力か時間を掛ければ色々と手はあるかな。
物理的に壊そうと思うと普通の壁を壊すよりは大変だから、時間が更にかかるね」
物理で魔力に対抗しようとしても、力の種類が違うからか、かなりの部分の物理的な力はすり抜けるというか無駄になるんだよな。
だから、それこそ建物の外壁をハンマーでぶち壊すよりも大変な思いをすることになる筈。
魔術でも、攻撃魔術をぶつけることで魔力を飽和して壊そうとしたら中々大変だし人目を引く可能性が高い。俺みたいに魔力の流れを視れて、干渉出来るタイプだったら解錠と同じで認証を騙す程度だったら慣れれば問題なく出来るが。
とは言え、魔術師でそんな練習をしている人間はあまりいないだろうから、違法行為を繰り返したのが魔術院にばれたものの、魔力を封じられる前に上手くやって裏社会に逃げ籠めた魔術師を連れて来る必要があるだろうな。
当然のことながら、そんな人間は数が少ないし人前に出てくるのを嫌がるから、見つけるのはは大変だし確実に依頼費も高くなる。
「ふ~ん。
だとしたら、魔力認証で認められた人だけ中に入れる防御結界は中々優れモノになるかもなのね」
シェイラがちょっと感心したように言った。
「だけど、防御結界に認証機能を組み込むのは難しそうなんだよなぁ。
まあ、試してみるけど。
頑張ってみても無理そうだったら、探知結界で認証された人間が来たら一旦防御結界を解除してそいつを入れてから、また防御結界を再展開する形になるかも」
防御結界を何度も解除・展開するのは魔力の無駄だし、出来れば防御結界で認証が出来ればそれが理想なんだけどねぇ。
「解除しちゃうの?
それってこう、後ろからナイフでも突きつけた悪党が一緒に入れちゃわない?」
シェイラが問題点を指摘する。
「そう。
そこが問題。
窓からもタイミングを計れば入れかねないし。
まあ、窓はお洒落だけど頑丈な鉄格子でも嵌め込めばいいかもだが」
というか、窓には別の防御結界を展開させておいてそっちは認証なしでそう簡単には解除されないようにしておけばいいか。
鉄格子って幽閉されているようなイメージがあるから嫌う貴族が多いんだよな。
いや、普通の一般人だって閉じ込められるイメージは嫌いだろうが。
「一人ずつしか通れないような扉でも作ったら?
こう、回転ドアとか、一人しか通れない角度でしか開かないドアとか。
じゃなきゃ牧場にあるような一頭ずつ対応するための二重扉っぽい小部屋を作るとか」
シェイラが指摘した。
そんなのがあるのか?
まあ、毛を剃ったり何か治療をしたり、耳に所有牧場を示すタグを付けたりする時とかって確かに一頭ずつやってそうだよな?
何かあるのか、今度聞いてみてもいいかも。
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