1373 星暦559年 藤の月 17日 魔力認証結界
次の開発品を『魔力認証によって侵入を妨害する防犯結界っぽい物』と決定して、どんな魔術回路が必要なのか話し合うことになった。
「魔力認証の鍵って結局登録した魔力が触れたら何かが動くか解除されるかってだけだよな?
鍵を開けるって段階無しに特定の誰か以外を入れないように止める結界タイプってあったっけ?」
こう、王宮の進入禁止区画とかにそういう機能があってもおかしくはないが、盗賊ギルドは王宮侵入の様なやばい仕事は受けないので、俺も視たことがないんだよな。
少なくとも、俺はそんな仕事の話を聞いた事がないし、受けたことも無い。ひっそりギルド内でも口外禁止で誰かが長から直接話を貰ってやっていた可能性はゼロでは無いだろうが。
それはさておき。俺も何度か(合法的に)王宮へ出入りしているが、そんな感じな進入できない区画にも行きあたっていない。
王宮は兵が立っていたり巡回していたりで物理的に侵入者を止めるのが基本なんじゃ無いかな?
宝物庫とかがどうなっているのかは知らないけど。
「ないから作ろうって話になった訳だ。
既存の魔力認証を防犯結界に組み込めば登録された人物以外が結界に触れると警報が鳴る魔具は出来るが、侵入を拒否するような防御結界で拒む対象を魔力で認証して選ぶなんて言うのが、可能かが問題なんだ」
アレクが困ったような顔をしていった。
「まあ、最後の手段的に魔力認証してある人が触れたら一瞬防御結界が解除されて、中に入った後に結界が再展開される形にすることで、外から魔力認証していない人間が入れなくなるって流れも可能かもだけど……これって魔力認証している人をナイフで脅して後ろから一緒に入ったら入れちゃうよね~」
シャルロが溜息を吐きながら付け加える。
「第一、窓とかがある部屋だったらドアから入る人間が魔力認証して防御結界を解除させた瞬間に窓から侵入とか出来ちまうぞ?
しかも魔力認証された人間が入った後に防御結界が再展開したら、そいつは敵対的な人物と結界内で二人っきりになる上に、外の人間が気付いて助けようとしてもそこに入れなくなる」
魔力認証の作動そのものはそれ程時間が掛らない筈だから、窓を開けて中に入るタイミングはかなり厳しくなるが、誰かが廊下の向こうから声を掛けるとかで魔力認証された人間の動きを一瞬止めれば、簡単な窓程度だったら鍵をこじ開けて入れる。
というか、結界の範囲がどこまで及ぶか次第だが、窓の鍵だけ先に開けておくのだって可能かも知れない。
防御結界って人間は拒否するが針金を差し込む程度ならゆっくりやると意外と出来ちゃうのも多いんだよな。
完全に何もかもの侵入を拒否するタイプにすると中にいる人間が窒息しかねないから、人間を中に入れるタイプの防御結界は無機物の移動はある程度融通を利かせる構造になっているのだ。
「防御結界とは別に重ね掛けした探知結界にも魔力認証を使って、関係ない人が入ってきたら警報を鳴らし続ける形にするとか?
警報が鳴る魔具はそう簡単に止めたり壊したり出来ないように場所を工夫したら後ろから脅して入った人とかが止められないんじゃない?」
シャルロが提案する。
「いや、結局それでも防御結界の中に認証された人間がヤバい人間と閉じ込められる状況に変わりはないぞ?」
探知結界の方が防御結界よりも魔力消費量は少ないしあれは元々探知する相手を特定できる魔術回路だから魔力認証を組み込むのに相性はいいと思うが。
「そうなると、侵入拒否は諦めて警報が鳴るだけにするか?」
アレクが微妙な顔をしながら言った。
「う~ん、音だけだと、それこそ部屋に押し入って絵や美術品や金目の物を奪って窓から逃げるって言うのを止められないだろ?
ドアの外に常に護衛が立っている場所ならまだしも、貴族の屋敷とかだったら警報がなって警備の人間が駆けつけるまでにかなり時間が掛るところも多いぞ」
下男とかが駆けつけたところでそれなりの腕前な盗賊だったらそいつを無力化して逃げられそうだし。
俺はガキだったし戦闘はそれ程得意ではなかったから、徹底してお邪魔した対象の家の人間と顔を合わさない(下男や臨時の下働きとして入った場合は盗賊として認識されない)ようにしていたが、盗賊ギルドの人間の中には警備や使用人と出会ったら躊躇せずにぶん殴って無力化して逃げる方針の奴らも居た。
流石に殺すと捜査と追求が厳しくなるのでそいつらも刃物は使わないことが多かったが、殴る蹴るぐらいは当然の対応手段の一つだった。
「そうなると、やはり防御結界を何とかして対象を選択できるように改造しないとだな。
魔術院で防御結界と魔力認証の魔術回路の特許を色々と探してみるか」
アレクが総括的に話をまとめた。
だなぁ。
明日から探し物が大変そうだ。
押し入り強盗とかもばったり会って殺されるのが一番危険らしいですからねぇ




