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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後8年目

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1371/1423

1371 星暦559年 藤の月 15日 調査協力(24)

 結局、1階の他の部屋に隠し場所は特にはなかった。

 台所の横にあった下へ降りる階段から続いた先にある地下室は普通のワインセラーで、多少のワインと要らなくなった道具が余った場所に置いてあるだけだった。


 昔はもっとワインを飲んでいたんだろうなぁと思わせるワインセラーだったが、今では買い足していないのか、空っぽな棚が奥の方に寄せてあり、手前の棚に残っているワインボトルが埃だけ払われて奇麗に保管されているのが微妙に物悲しい印象だった。


 そのまま上に戻り、今度は二階へ上がっていく。

 最初に入った部屋は客室用なのか、数少ない家具に白い布が埃避けとして掛けてあるだけだった。

 そのまま廊下を進むと鍵がかかった部屋がある。

 日当たりのいい場所の筈だから……鍵がかかっているってことは無くなった子爵夫人の部屋なのかな?

 もしかしたら遺品として宝石とかがそのまま部屋に残っていて、使用人とかに盗まれないように鍵をかけているのだろうか?

 家宝的な宝石だったら金庫に入れると思うが、考えてみたら多分子爵夫妻には子供はいなかったんだよな?

 だとしたら宝石があったとしても受け継がれるのはどこかの親戚になるから、あまり注意を払っていないのかも知れない。


 と言うか。

 もしもこの状態で子供がいたら、不幸極まりないな。

 子爵に直接会っていないが、確か40歳前ぐらいな筈。

 キャズベック病は発病から死ぬまでに10年程度かかる筈だから結婚してから子供が生まれる時間的余裕はあったと思われるが、考えてみたらいつ子爵夫人が病気になって子爵が麻薬(というか痛み止め)の研究に没頭し始めたのか知らない。


 つい最近なのかと勝手に思っていたが、もっと前からやっていたのだったら結婚して比較的直ぐに発病して子供を作る暇はなかったのかもだな。


 そんなことを考えている間に補佐官が部屋の鍵を開けた。

 中に入ってみたら……明らかに、子爵夫人の部屋だった。

 服とか、家具とか、飾ってある小物とか。典型的な貴族夫人の部屋だった。

 生前の時のまま、残されている様だ。


 うわぁ。

 まあ、再婚するつもりがないなら無理に妻の服とかお気に入りの家具や小物を捨てる必要は無いのだろうが、まるで妻が戻ってきたら明日から普通に暮らせそうな感じにそのままな部屋はちょっと不気味だ。

 ある意味、痛み止めではなく蘇生秘術の研究でもしていて、妻が生き返ると信じているのかと思わせる様な部屋だ。


 奥にある衣裳部屋も奇麗に服がたたんで棚に入れてり、ドレスは吊るされている。

 貴族女性のドレスなんて、流行があって何年も前のじゃあどうせ着れないんだから処分しちまえば良いのにとも思うが、そういう問題じゃあないんだろうなぁ。


 衣裳部屋にある箪笥の引き出しの鍵を補佐官が頑張って解錠したら、そこそこな数の宝石や装飾品が出てきた。

 うん、子爵は妻に色々とプレゼントするタイプだったらしい。


 だが、怪しげな書類とかは隠してなかったし、ここの宝石もそれなりな価値はあるだろうが逃げるときの資産にするつもりはないだろうなぁ。


 開けた鍵を補佐官がもう一度施錠するのを待って、隣接している部屋へ入る。

 此方は当主の部屋だな。

 夫人の部屋と同じぐらい奇麗に片付き、生活感が薄い。

 奥の衣装部屋に何着かの礼服や燕尾服があり、鍵のかかった箪笥の引き出しには宝石を使ったカフリンクやピンがあったが、こっちも逃走用という訳では無さげだ。


 子爵は寝ている所を襲われる心配をしていなかったのか、ナイフなどもどこにも隠してない。


 ある意味、麻薬の研究をしているならば他の麻薬組織の人間に就寝時に襲われる危険性はあるんだから、枕元にでもナイフを隠し持っておいても良いぐらいだと思うんだけどね。


 本も書類も何もない。

 本当に、着替えて寝る為だけの部屋と言う感じだ。


「そこの絵の後ろに隠し金庫があるな。

 多分家を建てた時に作ったものだと思う」

 心眼サイトで視る限り、中にも少量の書類が入っているだけだ。

 補佐官もあまり期待できないのかと思っていたのか、大して興奮した様子を見せずに絵をどけて隠し金庫に取り掛かったが、流石に補佐官程度の腕ではちゃんとプロから買ったらしき金庫は解錠出来ないのか、下へ人を呼びに若いのが降りて行き、解錠専門の捜査官らしき男が上がってきた。


「お?

 金庫ですか?

 下では研究関係の書類ばかりで、あまり発見が無いんですよ~。

 此方に期待したいですね」

 そう言いながらちゃちゃっと解錠していた。

 うん、古いタイプの金庫だし、そんなところだよねぇ。


「中は……屋敷の権利書とか遺言書の写しとかだな」

 中の書類に目を通した補佐官が溜息を吐きながら言った。


「思うに、どうせ子爵はもう妻を助けられないし、妻の為に欲しかった痛み止めの研究も止めることになるんだ。

 普通に質問したら、普通に答えるかも?

 どうせダルベール伯爵も捕まって今後は子爵の研究に協力できないんだろうし」

 質問に答えない人間と言うのは、何か情報を隠すことで得る物があると期待しているから、口を噤むのだ。


 この当主と夫人の部屋を見た感じ、子爵はもう惰性と研究への執念で生きているだけな感じがするから、普通に質問したらあっさり答えるんじゃないのか?


「確かにその可能性はありそだな。

 だが、他の部屋も一応全部確認してくれ」

 溜め息を吐きながら補佐官が言った。


 だよねぇ。


なんか今までになく物悲しい感じになりました……

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― 新着の感想 ―
死者の復活の方に手を出さなかったのが不思議なくらいですね
子爵、愛故に病んだか。 これは同情も入りそうだけど、上は法を持って統治しないといけないからなぁ。 というか徳治主義だと、補習で出てきた初代のようないざこざが発生しまくるし。 で、現場は同情気味と言うか…
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