ひとりになりたい?
先日はペコを帰すのに苦労した。
そしてそれ以降、毎日のようにウチに来る。
そりゃ可愛らしい女神様だからさ、嬉しいって気持ちはあるさ。
でも毎日は・・・ちょっと困る。
今日は使用人の仕事も休みなので本当はのんびり家で休みたかったんだよね。
でも、絶対ペコ来るでしょ?
たまにはひとりでいたい時だってあるさ。
って事で、今日は山に来ました!
山って言っても道が整備されていて歩きやすい。あ、高尾山みたいな感じ。
さすがにあんなに人はいないよ。時々すれ違う程度。
ウチからだと距離があるのでかなり早い時間に出発。
ふふふ、ペコよ残念だったな。俺はもういないぞ。
あ・・・監視組は大丈夫かな?まぁいいか、今日の担当はアイビーだし。
頂上に着いたのは昼をちょっと回ったくらいの時間。ご飯の時間だオラーー!
リュックからお握りとおかずを取り出しパクパクと。
やっぱり自然はいいね~。ご飯が3割増しくらいで美味しく感じるよ。
2個目のお握りを食べようとした時、下のほうから猛烈な勢いで登ってくる人が見えた。
いくら登りやすい安全な山とは言えダッシュとか凄いよね・・・。
あ、あの格好は女神様だね。お~、頑張るねぇ。
・・・ん?あれ、見たことある姿のような・・・うん、知ってるわ。
確か名前はアイビーとかいう駄女神様だった気がするよ。
うわ~・・・ちょっと顔が怖いんですけど。隠れようかな。
「ぜー はー ぜー・・・アンタ・・・ねぇ・・・ぜー ぜー 」
「そんなに急いで何処行くのさ。ほれ、水飲むかい?」
「ぜー あ、あり・・がと はー はー 」
うん。女神様がしちゃいけない顔してるね。
もし、もしアイビーにファンがいたとしたら、確実に幻滅しちゃうだろうな。
「で、どうしたのさこんなところまで」
「・・・はぁ~。もう嫌。アンタが消えたもんだからこっちは大騒ぎよ?」
「消えたって言ってもなぁ。休日にハイキング来ただけだぞ?」
「そ、そりゃそうだけど~。今さらだけど、一応監視されてるってのは分かってるでしょ?その対象がいなくなったら騒ぎになるわよ」
「監視については知らないことになってるしね。そっちの都合なんて知ったこっちゃないさ」
「ぐぬぬ・・・確かに」
アイビーの息も落ち着いたようなのでお握りを1個あげた。
俺もまだご飯の途中だったしね。
おかずを遠慮なく食べ始めたので軽くデコピンしたのは言うまでもない。
それにしても・・・
今日はひとりでのんびりしたかったんだけどなぁ・・・
何処にいても監視の名目で誰かがいるのは嫌だなぁ。
どうして俺の居場所が分かったのか聞いてみたら、ティニーさん経由で調べたらしい。
プライバシーなんてないのね天界は。
まぁ、いつも忘れちゃうけど住んでるのはほとんど神様だしね。
「アイビー、俺の監視っていつまで付くの?」
「その辺は私も分からないな~。加護無しの人間なんて前例ないだろうし~」
「綺麗な女神様に囲まれるのは嬉しいけどさ、たまにはひとりになりたいもんだよ」
「あ~、それは分かるような気がする~」
アイビーも駄女神だけど見た目は結構いいしね。駄女神だけど。
下界にいる時に彼女だったら自慢したくなるくらいではある。
あぁ駄目だ。アイビーごときでこんな事を思うなんて俺の心は疲労モードだな。
こんな時、彼女でもいれば違うのかね?
「・・・彼女ほしいなぁ・・・」
「ぶはっ!?いきなり何言ってんの?どしたどした~?」
「・・・いや、何か疲れてるみたいだ。気にすんな」
「いいじゃない~。お姉さんが悩みを聞いてあげるから言っちゃいなよ~ほらほら~」
参った。よりによってアイビーの前で思わず呟いちゃったよ。
ほら、コイツ目がキラキラしちゃってるよ・・・。
やっぱり神様も恋話とか好きなんだね。普通の女性と変わらんね。
「お前に相談するなら恋愛の神様とかに相談するさ。てか、そんな神様いるの?」
「む~、私だって相談乗れるのに~。 あ、そっち系の女神はいるわよ。でも最近やる気がないみたいでね~、あんまり人前に出てこないのよ」
「やる気のない神様とかまた新しいタイプ来たな」
「ほら、下界を担当すると色々ストレス溜まるのよ~」
確かに色恋沙汰なんてドロドロすること多いしね。
浮気・不倫・DV・・・色々ありそうだしなぁ・・・ストレス溜まりそうだわ。
神様も大変なんだろうね。神様ガンバ!
アイビーの「相談乗ります」オーラをかわしながら世間話をしていると、いい時間になっていたので山を下りることにした。
結局、今日も誰かと歩くことになったね。
またひとりになりたくなったら前もってティニーさんに言っておこうっと。
「なぁアイビー、俺ちょっと疲れてるみたい。家の前にペコが見えるわ」
「ペコ?誰それ・・・って、あぁ・・・アルリーナ様じゃない~」
「やっぱりいるよね」
「アンタまた変なあだ名つけて~。何でペコなの?」
「いつもお腹ペコペコだから」
「ぶっ ・・・色々ひどい~」
家が見えるところまできたら、ドアの横にちょこんと座るペコが見えた。
うん、その姿はとても可愛らしいよ。でもいつからいたのかな?
「お~いペコ~、いつからいたの?」
「ん。朝来た。君いない。昼来た。君いない。だから待った。お腹空いた」
「・・・ぶはっ」
「アイビー吹き出すな。 ごめんなペコ、今日は朝から出掛けてたんだ」
さっきペコのあだ名の話をしていたせいで、ペコが「お腹空いた」って言ったらアイビーのヤツ吹き出しやがったよ。俺は我慢したけどね!
アイビーが駄女神ならペコは残念女神だなぁ・・・。
お腹空いたなら家に帰って何か食べればいいのにね。
すっかり餌付けされた猫だよこの女神様は。
まったく・・・仕方ないなぁ。
「じゃあこれから晩御飯作るから食べていきな。アイビーも食べるだろ?」
「ん。食べる」
「食べる食べる~」
「少しは手伝えよ~君たち」
あんまりひとりの時間はとれなかったけど、まぁいいや。
アイビーやペコの嬉しそうな顔見てたら悩むのバカらしくなったよ。
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