癒しと共にチャンス到来!
「・・・おはよう、ペコ」
「ペコは拒否。アル。ルリ。リーナ。ネコリーナどれでも。おはよ」
「ネコリーナはいいんだ」
昨日、家に戻ると懸念していたペコはいなかった。安心したよ。
すっかり油断した朝、ドアを開けると・・・いた。
ドアの横にちょこんと座って日向ぼっこをしていた。猫だね。
「・・・はぁ。材料買ってないからご飯作れないよ?」
「がーん。待ってたのに」
「うん、自分ちで食べようかご飯くらい。あ、買い出し手伝うなら途中で何かおごってやるよ?」
「ん。行く」
我が家には鍵がない。
だってここは天界だよ?泥棒なんて存在しないのさ。
なので内鍵があるだけ。
家でくつろいでいる時に勝手に入られるのはさすがに嫌だからね。
最近フェアーさんのところで食事を済ませてしまうから食材買ってなかった。
せっかくペコという荷物持ちがいるんだ使わない手はないよね。
俺は買い出ししたらそのまま仕事行くけど、ペコには荷物を運んでもらおうかな。
「俺は今日も仕事だからさ、買ったモノをウチに運んでくれないかな?」
「ん。ご飯くれるなら」
「オーケー、交渉成立だ。頼むね」
二人でのんびりと街へと向かう。
ペコは基本的に自分から話をしない。こっちが話しかけると答える感じ。
まぁ相変わらず言葉は少ないけど。
無理して会話をしなくてもいいのは楽だ。
ペコは機嫌が良さそうに鼻歌を歌いながら横に並んで歩いている。
・・・ペコ、残酷なようだけど君は多分音痴だ。
「今日もいい天気だなぁ・・・」
「ん。いい天気」
「・・・・」
「・・・ふ~んふん♪ん~♪」
「何の歌?」
「ん。適当」
うん、何ていうか・・・癒される。
お腹ペコペコで突然現れていつの間にか消える。言葉も独特だけど美少女、存在感があるようなないような・・・不思議な子だ。
周りの空気に溶け込んでいるような感じで邪魔しない。
多分、ウチみたいな狭い部屋に2人でいても苦しくならないと思う。
あれだ、同棲とか結婚とかしても気苦しくならない子だね。
ん?何で分かるかって?そりゃ・・・下界では色々あったしね。色々と。
「なぁ、ペコは何処に住んでるの?」
「ん。家」
「そりゃ家に住んでるだろうさ。場所を聞いてみたんだけどなぁ」
「ん。あっち。来る?」
あっちと指さした方向は街の外れのほうだった。
来る?と言われてちょっと行ってみたい気もしたけど、そんな時間はない。
フェアーさんの屋敷以外、女神の家なんて行ったことないから興味はあるね。
「今度時間があるときね」
「ん。了解」
街に着くと、すっかり顔馴染みになった店で店主と挨拶。
最初の頃は視線が冷たかったなぁ・・・。もちろん対応も。
少しずつ街にも馴染んできたのが実感出来て嬉しい。
「あら天地さんいらっしゃい。今日は珍しい人と一緒だね」
「どうも~。今日は荷物持ち同伴なので少し多めに買っていきますよ」
「女神様を荷物持ちとか・・・アンタ凄いね。アルリーナ様はそんな扱いでいいの?弱み握られてるとかじゃなくて?」
「ん。問題ない。好きだから」
「あらまぁ・・・アンタ、女神様に好かれたのかい」
凄いかどうかは別として・・・
弱みを握って荷物持ちをさせるとか、この人は俺を一体なんだと思ってるんだろう。
2時間くらい正座させてそこのところを聞いてみたいよ。
ちなみに、次の店でも同じような事を言われた。
俺は女神をコキ使う鬼畜のような男だと思われてるのかね。
いや、確かにコキ使ってはいるけど・・・ちゃんと見返りあるよ?
「お、串焼きの屋台なんてあったんだ。ペコあれ食べる?」
「ん。食べる。早く」
「そんなに慌てなくても屋台は逃げやしないって」
下界でいうところのバーベキューのようなものを焼いている店だ。
とりあえず1本ずつ買って食べたらこれが旨い!
追加で俺は1本、ペコは2本買って食べた。いい店を見つけたな。
「ほらペコ、フルーツジュース。もっと何か食べるかい?」
「ん。ありがと。もうちょっと食べたい」
「りょーかい。何を食べようか・・・お、あっちにも屋台あるね」
「ん。食べる」
別の屋台はバーガー屋さんだ。
俺は野菜をたっぷり挟んだバーガーを、ペコは鶏肉が挟んであるものを。
途中でお腹いっぱいになり、半分くらい残そうとしたらペコが食べてくれた。
小柄なのに結構食べるよね。いっぱい食べる君が好き♪ってか。
お腹も膨れたのでベンチでちょっと食休みを。
ペコも満足したようでニコニコしながらお腹をさすっている。
串焼き3本にバーガー1個半だ。そりゃ満足するよね。
ベンチでまったりとしていると、何だか眠たくなってくる。
このまま家に帰って寝たいなぁ・・・。
ふと、横に座っているペコを見ると、目をとろ~んとさせている。
うんうん、眠くなるよね。
「ペコ、俺はそろそろ行かないといけない時間なんだ。荷物は俺が持って帰るからペコはいいよ。買い物付き合ってくれてありがとね」
「・・・ん。大丈夫。荷物持つ」
「本当に大丈夫?無理しなくていいよ?」
「大丈夫。無理じゃない」
ぐ~っと背伸びしてから荷物を持つと、ペコはそのまま俺の家のほうに向かって歩いていってしまった。
ありがとうペコ。約束通り今度ご飯作るよ。
その後はフェアーさんの屋敷でちゃんと仕事をした。
今日もフェアーさんはニコニコしてたし、今日も変わらず綺麗だった。
ペコのことを話すとクスクスと笑いながら「買い物デートですね」と言った。
まぁ確かにそうとも言えるんだろうけど・・・デートって雰囲気じゃなかったよ。
それよりもフェアーさん、少しは嫉妬してほしいもんです。
「ズルい。今度は私も」くらい言ってよって嘆いたら、またクスクスと笑われた。
仕事の疲れと嫉妬すらしてもらえない悲しみと共に家に帰った。
家にはペコがベッドで寝ていた。寝顔が可愛いぞコンチキショー!
いやいやそうじゃない、そこじゃない。
昼間、確かに眠そうにしてた。
昼寝くらいしていくかもな・・・って思ってはいたさ。
でもずっと寝てるとは思わなかったよ!
「ペコさ~ん、起きて~。起きないとキスするぞ~。しちゃうぞ~ほれほれ」
「・・・・ん~。いいよ」
「!? いやいやいや、そこは拒否しなさいよ!」
「君。好き。だからいい」
「女神様とのキスのチャンス到来!!」
ん?キスしたかって?そりゃ内緒ですよ内緒。
小柄で可愛らしい女神様ですよ?しかもOKって言ってるんですよ?
そこは男を見せないとね!うん。
・・・チキンなのでそんな事出来ませんでした。はは・・・。
いざチャンス到来となっても何も出来ない
それがワタルという男(・x・)




