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詰めが甘いのはデフォです

フェアーさんの屋敷で働き始めて1週間が過ぎた。

あの屋敷は本当に不思議だ。

だって何処を掃除しても埃ひとつ落ちてない。

だから掃除してても意味があるのか分からない。


大きな庭も手入れが必要ないくらい綺麗だ。

葉っぱ1枚落ちてない。

本当に・・・俺は必要ない。


朝と晩のご飯を作るのも俺だ。

一人暮らしが長いのである程度の料理は出来る。

今のところ失敗した料理はない。

フェアーさんは特に何も言わず食べてくれる。

美味しいも不味いも言わない。こっちが聞くと「美味しいですよ」とは言ってくれるけどね。

ニコニコしながら食べてくれる。

でも決して嬉しそうに食べることはない。結構辛い。


3日煮込んだビーフシチューを昨日の晩に出した。

やっぱり反応はいつもと同じだった。悲しい。

そろそろ心が病みそうだよ・・・。

ますます働いている意味が分からなくなってきた。



「フェアーさん、今日のご飯はどう?」

「美味しいですよ」

「もっとこうしたほうがいいとかない?」

「大丈夫ですよ」

「フェアーさん、食べることは好き?」

「はい、好きですよ」


知人に『食事は栄養補給するだけのもの。味はどうでもいい』ってヤツがいた。

もしかしたらフェアーさんもそっち系の人なのかな?

よくある異世界モノだと、元の世界の料理は凄く美味しくて主人公が尊敬されるのがある。

最初はそんなのにも期待したんだけどね・・・。


でもここは天界なのよ。

下界、つまり俺が住んでた世界のモノは全て天界で生まれたらしい。

天界と下界の生活環境などがビックリするくらい同じなのはそれが理由らしい。

困るよね。食事すらチート扱いされないんだもん。







「ぅあ~い~びぃ~~~た~すけ~て~~~」

「・・・はぁ。アナタが自分で決めたんだから私に言われても知りません~」

「チッ駄女神のくせに正論かよ」

「はぁ?はぁ!?はぁああ!?だ、駄女神ってまた言った~!」

「ダ・ダ・ダ・ダ駄女神アイビー♪」

「むきーーーー!!」


色々鬱々としていたのでアイビーをからかって遊んだよ。

アイビーのいいところ。それは気軽にからかえるところ。疲れない。

最初はイラっとするような出会いだったけど、今では一番仲がいい女神だ。

アイビーにとってはイラっとする存在だろうけどね。


「でもマジでフェアーさんが分からないんだよなぁ・・・」

「フェアー様ねぇ・・・私達からすると、今までのアナタの態度のほうが驚きだったし~。そう気軽に話せる御方じゃないのよ本来は~」

「ん~、能力云々って言うより性格的なモノでも敬遠されてるのかね?」

「私達は接点が元々なかったし。アナタに関わるまでは数回見かけた程度なのよ~」


見かけることすら少ないレア女神か。

働き始めるまではもっと付き合いやすい人だと思ったんだけどなぁ。

ニコニコしてるし冗談にも付き合ってくれるし。

でもいざ働き始めると・・・ね。雇い主と使用人って立場を絶対に崩さない。

いや、それが正解なんだろうけど。ちょっと寂しい。


「それじゃ、私はそろそろ帰るわ~。せいぜい頑張りなさいな~」

「おぅ。お前も帰り道に気をつけろよ。俺が後ろからバットを振りかざしながら追いかけてくるかもしれないからさ」

「ぶっ、何それ怖い」




さて、アイビーも帰ったことだし明日からの事をもう少し考えますかね。

ラッキースケベどころか会話が少ないんだよなぁ。

雇われる前のほうがもっと色々話せてたし、冗談も言えてた。


フェアーさんは思考が読めるから俺の今の状態も分かってるだろう。

それを逆手に取るか?弱った振りとかして同情を誘う?う~ん何か違うなぁ。

そもそも「振り」とかしてもバレるわ。


あ~~面倒くさい。

ウダウダ悩むのは俺らしくない。俺らしくないぞ~!

いつも通り、当たって砕けて泣いてやるっ。

人生は一度きり。あ、俺は2回目か・・・まぁいい、それは置いておこう。

せっかくの人生、ウダウダやってる暇なんてない!楽しんでやる。




次の日からも俺は変わらず仕事をした。

綺麗な部屋を掃除して、綺麗な庭を掃除して、朝と晩にご飯を作った。

今までと何も変わらず淡々と。


え?変わってないなら意味ないって?

馬鹿言っちゃいけません。俺には自由に使えるお金がないのです。

一応、保証金みたいなものは貰ってるけど、これは俺の金じゃない。

俺が働いて稼いだ金じゃない。まずは給料出るまで現状維持。


辛くなったらアイビーいじって

悲しくなったらアイビーからかって

時々ソラールさんも食事ネタでいじって

ティニーさんに膝枕お願いして断られて

そうやって毎日頑張った。自分が病んでしまわないように他人を犠牲にしたよ。








「やって来ました給料日!どんな使い方しても文句を言われない俺の金!」

「あらあら、今日は元気ですね」

「働いた実感が持てる日ですからね。これで・・・これで・・・」

「ふふ、では今日はお休みにしましょう。ワタルさんも疲れているでしょうから」

「休み!ありがとうフェアーさん。で、ちなみにフェアーさんの今日の予定は?」

「私ですか?特に今日やらないといけないモノは・・・ないですね」


よ~しよし。

お金OK。休みもらったから時間もある。フェアーさんも忙しくない。


「じゃあフェアーさん、デートしましょ」

「え?デートですか?ワタルさんと?」

「そうそうデート。やっぱり自分で働いたお金でデート誘いたかったんですよね~」

「あらあら、デートですか・・・はい、いいですよ」



あ・・・肝心な事を忘れてた。大事な事を忘れてた。

天界に来てけっこう早い段階で働き始めちゃったんだよね俺。

街をちょろっと歩いて商店をのぞいた程度。働き始めてからは家と屋敷の往復。


つまり・・・デートしようにも、ろくな場所知らねぇ!!!

甘々のデートにしようか、ほろ苦のデートにしようか

次回はデート回・・・の予定(・x・)

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