第3話「新たな敵」
あれから俺たちはお互いの話をしながらイニティウムに向かった。どこに住んでいるのか好きなことは何なのか。何時間も旅をする中で俺たちは互いのことを理解した。
結構な時間を進みイニティウムに近づいてきた時俺はなぜグラフ絵を描くのが好きなのかを聞いた。
そしたらグラフは昔の話を軽く交えながら答えてくれた。
「俺は幼いころから旅に出ていた。
というより物心がついたころから俺は親の記憶が一つもない。家も親の顔も名前も一つもわからない。ただわかったのは着ていた服の胸ポケットに入っていた紙に書いてあったグラフという名前だけ。
だから定住する場所もなく旅をするしかなかった。そんな中時でもちろん腹は減る。幸いガキだから町にはかわいそうだと同情して飯を恵んでくれる人がいた。その人たちのおかげで死ぬことはなかったがそれでも腹いっぱいにはならなかった。
ただある時。俺はいつも暇だから街に落書きをしていてその時もいつもと同じように落書きをしていたら大人が俺の落書きを気に入って自分の服に書いてくれと頼んできた。変な奴だが俺は特にすることもないから書いてやった。そしたらそいつが笑顔で対価をくれた。俺は初めてその時自分のことをガキいう理由でなく正当な評価で対価を得た。それからは自分で描いたもの誰かに見てもらうことが好きになったんだ、そして絵を描くことが好きになったのもな。」
グラフの話を聞いた俺は自分と似た部分を感じながらこいつと会えてよかったとなんとなく思った。特に特別な理由もないけどね。
ここまでがだいたい10年前の話らしい。そこから先の話も聞こうとしたところで目的の酒場に到着した。
相当な距離を止まることなく進んだ俺たちは少し疲れていた。と思ったけどグラフは俺よりも少しだけ余裕そうな表情を保っていた。
結構強がっている気がしたけど俺はそもそも強がることもしんどいくらい疲れてたので触れないで置いた。
「ここが酒場か?」
「あぁ。」
「そういえばどんな本なんだ?」
「ここにいるマスターは情報商売もしていて、実はマスターが持っている本にはいくつかの宝の地図が記されていてな。酒場の店主はそれを冒険者やトレジャーハンターに伝えることで酒場として以外にも収入を得ている」
「へぇ……」
カランッ、カランッ。
なんか思ったより荒れてる?
俺は入った瞬間妙な違和感を覚えた。椅子は倒れているしテーブルの上にはいくつか瓶が割れていた。
グラフの方を振り返ってみたら焦ったような表情のグラフがいた。
「……マスター?おい、どうしたんだ! マスター!」
ここまで静かだったグラフが声を荒げていた。そしてその視線の先には傷だらけの男がいた。
「おぉ……グラフか。久しぶりだな。いてて……情けねぇところ見られたな」
「何があったんだ?」
「スパイダーっていうここら辺で名の通ったトレジャーハンターの奴らが来やがった」
「スパイダー?」
ここまで傍観者だった俺が疑問を漏らした。
「あぁ、宝を探したり強奪したりしてる野蛮な奴らだ。奴らが酒場の本の噂を聞いたらしく残りのすべての宝を独占するために奪いに来やがったんだよ」
「リーヴルごめん。旅を始めたばかりだが少し寄り道してもいいか?」
「取り返しに行くのか?」
「あぁ、やられた借りを返しに行く。」
「いいぜ!」
俺が探していた本を盗む奴なんてゆるさない。それにグラフが焦るってことはこのマスターもグラフにとって大切な人なんだろう。だったら俺もやり返す道理はあるしな。
「だけど、まずはこのおっちゃんの治療が優先だな」
「あぁそうだな。治療が最優先だ」
傷はあるが話すことのできるおっちゃんの姿を見てグラフは少し落ち着きを取り戻したようだな。
「俺がおっちゃんの近くにいてやるからここら辺の土地に詳しいグラフお前が回復薬を買ってきてくれ。」
「わかったありがとう。じゃあ頼んだ。」
「おっちゃん、大丈夫か?」
「あぁ、何とかな。お前はグラフの友達か?」
「歴は浅いけどな。旅をする仲間だ。」
「そうか。あの静かで一人行動ばっかだったグラフに仲間か」
「ところでおっちゃんはグラフとどういう関係なんだ?」
「あぁ、俺からしてグラフは息子のように思ってる。あいつと初めて会ったのは10年前だ」
10年前か。ちょうどさっきグラフに聞きそびれた時の話になるな。
そしておっちゃんは見かけほど大けがではなかったのかゆっくりと昔話を始めた。
「あの時、グラフは10歳でな出会ったのはイニティウムの商業街だった。あいつは親が分からないらしくてずっと一人で過ごしていたらしい。俺は街でボロボロの服を着ているあいつを初めて見た時見捨てられなくてな。そのまま店に連れて帰って風呂に入れて、飯を食わせてやったんだ。そしてボロボロだった服を着替えさて少し世話をしてやった。そしたらあいつは居心地が良かったのかだんだんとここに居着くようになった。そしてあいつに俺は店の手伝いを教えてやった。別に何もしなくてもよかったんだがどういうわけかあいつはただ、子供という理由で助けられるのが好きではないらしい。手伝いを覚えたあいつと二人で一緒に店をまわしながら過ごしていた。そしてグラフが17歳になった時、俺はあいつに一つ話をしてやった。」
「どんな話をしたんだ?」
「ある場所の話さ」
「なんでかは知らんがあいつはガキの頃からずっと絵を描いていた。店の風景を描いたり、街を描いたり、空を描いたりな。だから俺は冒険者たちから聞いた世界一の景色――マグヌスカーテンという話をしたんだ。
「マグヌスカーテン?」
そんなのはあの本にも見当たらなかったな。
「俺もよく知らない。ただ、冒険者たちの間で話題になっていたんだ。誰もたどり着いたことはないが世界にはそういった『世界一』が多く集まる場所がどこかにあるらしい。」
そう話し終えたところで入り口から物音がした。
「リーヴル!マスターは大丈夫か?」
「早かったなグラフ。おっちゃんは大丈夫だ」
「良かった。マスター回復薬だ。これを飲んで」
「ありがとう」
「お前にとって大切な人なんだな」
「あぁ。このマスターは俺の父親のような人だ」
この二人どっちも親子のように思ってるんだな。
「10歳の金のないガキの俺にただで飯を食わせてくれた。それに、ここで一緒に働くことを許して一緒に住ませてくれた」
「あぁ、さっきおっちゃんからグラフの昔の話を軽く聞いた」
「そうだったか。なら俺の旅の目的も聞いたか?」
「マグヌスカーテンのことか?」
「そうだ。世界一の絶景のある場所――マグヌスカーテンだ」
マグヌスカーテンか。俺も旅の奇跡の本に書き残したい場所だな。見る人すべてを魅了する場所と。
「俺はマスターには返しきれない恩がある」
「じゃあなおさら取り返さねえとな!」
「もちろんだ。」
「今からスパイダーのアジトに行って取り返してくるからよ。待ってろよ、おっちゃん!」
「すまねぇ。ありがとう、二人とも」
次回はいよいよリーヴル、グラフの戦闘が始まります。




