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12,四鏡勘九郎と四鏡華音

奥に男性が立っていた。

歳は60前後な感じ。白髪交じりの髪をワイルドなオールバックにしている。

筋肉質な身体で太い。長身190はある。


いや。

そんなことより。


「…相変わらずですね。取り合えず前を隠した方がいいんじゃないですか?四鏡さん」


六文銭にしては珍しい憂鬱な感じでため息をついた。

それもそのはずで華音と呼ばれたメイド、天川、六文銭、アルマの前に水にぬれた素っ裸の筋肉ダルマが仁王立ちして現れたのだから。


(…うわーきっつ。そしてえぐいもん持っているな)


天川は男だが股間につい目が行ってしまった。それぐらい立派だった。


「おおう!?舞雪か!久しぶりだな!ようやく俺に抱かれたくなったか?俺はいつでも準備OKだぞ!!」


四鏡はそう目を見開いて叫ぶ。

それと同時に。

四鏡の股間についている物がぐぐぐと緩やかに上がっていった。

天川はなんとなくアルマの方を見てみた。


《…》


一切目を逸らさずゴミを見るようかの目で四鏡を見ていた。


(…流石っす。アルマぱいせん)


天川がそうひそやかに賞賛していると六文銭が口を開いた。


「元気なのはわかりましたから、さっさと着替えてください。いい加減にしないとぶん殴りますよ?」


六文銭も目を逸らすことはなかったが流石に切れ気味の表情をしていた。


「なーんだよ、相変わらずつれねえなあ。そしたらこのいきり立った俺の息子をどう鎮めればいいんだよ?」


そうわざとらしく落胆する四鏡に六文銭は初めて顔を背けた。


「知りませんよ。ご自分で処理したらいいんじゃないですか?」


「かー!!!わかったよ。しょうがねえ。華音!お前で我慢してやるからついてこい!!」


「…かしこまりました」


そう不機嫌そうに振り返りどすどすと出てきた部屋(おそらくシャワー室)に戻っていく四鏡。

その後ろをアルマや六文銭同様、一切目を逸らさず無表情でいたメイドの華音がついていった。


そして。


「はあ!はあ!はあ!!…出すぞ華音!!うおお!!!」


「…」


扉の向こうから大音量の息の荒い声が響いてきた。

何をしているか容易に想像できた。


「…気は済みましたか?」


「おう!!がっはっはっは!!変わらず言い締まり具合だったぞ華音!もういいからあいつらをダイニングに案内しろ」


「かしこまりました」


シャワー室から若干着乱れた華音がでてきた。

しかし無表情は崩れず何もなかったかのように振る舞う。


「お待たせしました。奥にどうぞ」


そう言ってまた前を歩き始める華音。


「…先生。大分話が違うと思うんですけど。四鏡さんって貧困した島を救った英雄なんですよね?」


そう華音に聞こえないようにひそひそ声で六文銭に問う天川。

天川の疑問はもっともで四鏡は華音を性処理の道具扱いにしているかのようにしか見えなかった。

そんなやつが島民のために動くのだろうか。


「そうだな。私は『結果的』に英雄になったと思っているよ。少なくとも四鏡は誰かのために動くような奴じゃない。だが自分のためならどこまでも追及する男だ」


それはつまりリゾート開発は島民のためではなく別の目的があると言いたげだった。


(…なるほどね。四鏡勘九郎に四鏡華音。早速面白くなってきたじゃねえか)


天川の口元がわずかに歪む。

自分のメイドを容赦なく犯す四鏡。そしてそれを何とも思わない年端もいかないメイド。

常軌を逸した新たな登場人物に天川の底にある暗闇の部分がほんの少しだけ顔を出した。



ーーーーーーーーーーーーー



ダイニングルーム。

とても広く中世のヨーロッパ風のクラシック感が強い。

豪華なテーブルクロスに四鏡がその一番奥に、その両サイドに六文銭と天川が座っていた。天川以外視認できないアルマは天川の隣に座っていた。


「お飲み物はいかがいたしますか?ソフトドリンクならオレンジジュースにパインジュース、グレープジュース等があります。それ以外であればウーロン茶やミネラルウォーターを用意しています」


華音が天川にそう伺う。


「とりあえずビ………いや、ウーロン茶でお願いします」


「?。かしこまりました」


前世の癖でとりまビールでと言いかけて慌てて修正する天川だった。

そういえば自分は今は13歳だった。

一瞬首を傾げた華音だったがすぐに踵を返し部屋を出ていった。

六文銭と四鏡には既にワイングラスに赤ワインが注がれている。


「さあさ。遠慮せず食ってくれ。そこの小僧もマナーなど気にせず好きに食べろ。俺はそういうめんどくさいの気にせんから」


白いいかにも金持ちが風呂上りにきそうなガウンを身にまとった四鏡がそう軽快に笑った。

小僧とは天川のことだろう。

それぞれの前には上手そうな赤身ステーキが音を立てていた。


「それじゃ遠慮なく頂きます」


天川はそう四鏡に軽く頭をさげてから肉をナイフで切り始めた。


「おう、ガキはいっぱい食べて俺見たいにでかくならないとな。…勿論いろんな意味でな?」


そうにやけた笑みを天川に向ける四鏡。

天川は食事中に嫌なもの思い出させんじゃねえよと内心突っ込んだが無視する。


「私の教え子にそういうセクハラいこと言わないでもらえます?ましてや食事中だってのにまったく…」



そう呆れ顔でワインを口にする六文銭だった。あんなものと間接的だがあんな行為を見せつけられてなにを今更感があったものの自分が言いたいことを代弁してくれた六文銭に天川は密かに感謝した。


「そういやお前が弟子を持つなんて蓮沼以来だな。この小僧はそんなに優秀なのか?」


言いながら豪快にステーキを口に運ぶ四鏡。


「お待たせしました。天川様」


とここで華音が戻ってきた。

天川のワイングラスにウーロン茶が注がれる。


「ありがとうございます。華音さん」


天川がそう返すと華音は無表情のまま答えた。


「私は使用人ですのでお礼等は必要ありません。なにかあれば遠慮なく申し付けてください」


そう一礼して華音は四鏡の後ろ脇に立った。

別にお礼ぐらい言ってもいいだろと思う天川だったが、それよりもこの感情の無さはどういう背景があるのだろう疑問に思った。


「…話が逸れたな。で、どうなんだ?舞雪」


四鏡は言いながら空になったワイングラスを持つ。すると華音が間髪入れずグラスにワインを注ぐ。


「そうでなければこんな所までつれてきませんよ。それよりも例の神隠しの件なのですが、それについてここで我々が調査することを許していただけませんか」


六文銭の話題変更にさっきまで天川に興味津々といった感じの四鏡が途端つまらなそうな顔を見せた。


「ん?ああ、好きにしろよ。そもさん俺に許可なんか取らなくても勝手に調査できたろ。ただ魔法公安課の連中も動いてるから気を付けろよ?特に小僧、あいつら多分調査が進まなくてイライラしてっから切れたら見境なく魔法ぶっぱして巻き添え食らって最悪殺されるからな」


最悪殺される。

二度目の忠告だった。


「…ええ。ご忠告感謝します」


しかしそれでも天川は冷静にステーキを口に運ぶ。


「ほう。中々肝が据わってるな。…それで?ここに来たのはまあせっかく来たんだっていう挨拶が建前で、本当の目的があるんだろ?舞雪」


そう視線を天川から六文銭に変える四鏡。


「話が早くて助かります。率直に聞くと神隠しの件についてなにか知っていることはありませんか?私たちもあてずっぽうでどうにかなるとも思えませんので」


そう六文銭がワイングラスを飲み干すと華音が近づいてきたが、六文銭は首を振った。そして華音はなにも言わず定位置に戻る。

その後四鏡が口を開くと意外な返事が返ってきた。


「勿論知っていることはある。警察にも言ってない情報がな。だがそれをお前らに話すかどうかはまた別の話だ」


知っていることはある。それは単純に情報なのか。それとも事件に直接的でも間接的でも関わっているのか…。


「そうですか。どうしたら話してもらえますか?」


最後の肉切れを口に入れた四鏡は六文銭の問いにその前に。と返す。


「そっちもなにか手がかりがあってここに来たんだろう?先ずはそれを俺に言うのが礼儀ってもんだろ」


手がかり。

夢で出会った少女。

水無月霧雨。

そして六文銭曰く天川翔に備わった所謂非凡な人物を引き寄せる才能。


「わかりました。こちらが話せば教えてくれるという認識でいいですか?」


「知らん。返答次第だな。それで納得できないなら別に話さなくてもいいぞ?後は好きにしたらいい」


言いながら四鏡は華音に手招きをした。華音は懐から葉巻を取り出し四鏡に一本渡す。

その後火をつけた。

紫煙の香りが部屋に広がる。

六文銭はため息をつき頭を抱えた。


「…わかりましたよ。では結論から言います。四鏡さんは『水無月霧雨』という少女をご存じですか」


「……!?」


水無月霧雨というワードを聞いて四鏡が停止した。

さっきまで豪快だが笑顔だったのに鋭い目つきになり六文銭に視線を向ける。

気のせいだが華音も一瞬目を見開いたような気がした天川だった。


「…その名前。どこで聞いた?」


四鏡の反応に六文銭は水無月霧雨が実在するということに確信が持てた。

そして口元が歪む


「続きは天川に聞いてください。彼が発端ですので」


「ええ!?お…いや僕ですか?先生から説明したほうが…」


急に振られた天川は若干慌てる。

だが四鏡は鋭い視線を今度は天川に向けた。


「…丁度全員食事を終えたようだな。小僧…天川とか言ったな。華音、舞雪を客室に案内しろ。こいつと差し向かいで話したい」


「かしこまりました。では六文銭様こちらへどうぞ」


華音が六文銭にそう手招きをする。


「…だそうだ。上手くやれよ天川。あの子を助けたいんだろ?」


「ちょっ!!?先生まじすか!?どこまではなしていいとか…」


そう慌てて引き留めようとする天川にどこ吹く風と言った六文銭だった。

追いかけようとした天川の腕が動かなくなった。

振り返ると四鏡のごつい腕が天川の右腕を捕らえていたのだ。


「なーに、取って食いやしねえさ。男同士、腹割って話そうぜ?」


がははとそう豪快に笑った四鏡だったが。


(…めんどくせえ)


対照的にため息をつく天川だった。






























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