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11,爆炎の魔法使い『氷室、炎々羅』と未成年のメイド。

四鏡空港。

大人気リゾート地なだけあって立派で広い。

しかし閑散としていた。

たまに見かける人も観光客のそれではない。

恐らくは警察かその関係者であろう。


「流石に外は暑いっすね。夏用のブレザーでもきついや…って先生は暑くないんですか?」


天川はそういってtシャツ姿になった。ドラムバックにブレザーの上着をしまう。

一方の六文銭はいつもの白衣で中は女性用のタイトなスーツだった。

それでも六文銭は涼しい表情を崩さない。


「水属性変化で私の表面の温度を調節しているからね。…ああ、言っておくが君にはこんな器用な事はできないから真似しないように」


そうあっさりと返す六文銭に内心やろうと思っても出来ねーよと突っ込む天川だった。

そもそも一つの属性変化すら多大な集中力が必要なのに、そんなことにリソースを割く余裕が天川にはなかった。

因みにアルマは物珍しそうに周囲を見ながら天川たちについてきていた。

ツインテールにキャミワンピ、麦わら帽子という出で立ちだ。


そして。


空港の出入り口に着いた。



「よう六文銭。久しぶりだな」



一人の男が天川たちの前に立ちふさがった。

190前後はあるであろう長身。細いが引き締まった体でノーネクタイの濃紺スーツをチンピラみたいな感じで着崩している。

咥えたばこに無精ひげ。茶色いウルフカットでワイルドなイケメンだが人相の悪さがそれを台無しにしていた。


「誰かとおもえば『魔法公安課』の氷室くんじゃないか。わざわざ出迎えに来てくれたのかい?ただ一応言っておくとここは外だけどタバコはマナー違反だよ。曲がりなりにも君は警察なのに」


そう答える六文銭に天川は驚きを隠せなかった。

目の前の男はどう見ても警察に見えない。よくてがたいのいいホストと言ったかんじだ。


「てめえとそんな無駄話をするきはねえ。てめえがここに来た目的とてめえが失踪事件に関して知ってることを全部話せ」


そう不機嫌そうに煙を吐く氷室。

しかし六文銭はどこ吹く風と言った感じで首を傾げる。


「…おかしいな。君が私にそんなことを聞く権限はないはずだよ?それと『上』に許可は取っている。そもそもこの事件に魔法は関与してないから『魔法公安課』である君の出番はないと思うけど」


そうしれっと返す六文銭だった。


「しらばっくれてんじゃねえよ。何らかの形で失踪事件に魔法が絡んでるとてめえは踏んでるんだろ?でなきゃわざわざこんなところに来る理由がないからな…それに」


そう言いながら氷室はつかつかと六文銭に近づきそのまま胸倉を掴んだ。


「…上なんて関係ねえよ。俺に焼かれたくなかったらさっさと吐け」


そう凄い形相で六文銭を睨みつける氷室。


《…天川。止めなくていいのですか?》


ここで初めてアルマが介入してきた。ちなみに転生の女神であるアルマは天川以外視認できない。


《いいよ別に。六文銭の強さは知っているし、見て見ろよあの余裕の表情》


六文銭にそう視線を向ける天川。


《…まあ、それはそうですね》



「焼かれたくなかったら。ねえ。私を焼きたかったら『爆炎』程度じゃねえ…せめて『獄炎』くらいじゃないと」



そう余裕どころか挑発の笑みを氷室に向ける六文銭。


「いい度胸じゃねえか。…おいガキ。巻き添え食らいたくなかったら今すぐここから離れろ。ダッシュでな」


ここで氷室は初めて天川に視線を向けた。


「…えーと、氷室…さんでしたっけ?この人僕の先生なんでできればその手をはなしてほしいんですけど」


天川はなるべく無表情で何も状況を理解できてなさそうな子供を演じた。


「…ち!緊張感のねえガキだな」


そう不機嫌そうな顔で六文銭から手を離す氷室だった。


「あれ?もういいのかい?」


まだニヤニヤしながら挑発を止めない六文銭をみて天川は深くため息をついた。


「興覚めだ。ガキに救われたな。目障りだからとっとと失せろ」


いいながら新たなタバコに火をつける氷室。


「やれやれ。自分から絡んでおいて勝手だねえ。まあ、そういう事ならさっさといこうか?天川」


そう手招きする六文銭に黙って頷いてついていく天川だった。

二人がいなくなった後。

氷室は煙草をふかしながら青い空を眺めていた。

さっきとは打って変わってご機嫌な表情で。


(…あのガキ…天川とかいったか?恐らくはあいつが何かしがの鍵だな。でなければ六文銭が連れて歩く理由がない。ならしばらく泳がせてやるか。くくく…ようやく事件が進展しそうだな)



「神隠しとかいうふざけたことをした野郎…絶対に俺が焼き殺してやる」




ーーーーーーーーーーーーーーーーー



「なんなんですかあの人?」


レンタカー内。六文銭は運転席で天川は助手席。アルマは後部座席といういつもの配置だった。


「フルネームは氷室炎々ひむろえんえんら。魔法公安課所属。階級は警部。さっきの様子でわかるだろうが所謂武闘派という奴だ」


奇麗に整備された街道に南国の木々が奇麗に並ぶ。真っ青な海も見えて大変すばらしい景色だが、観光客ぽい人は全くいなく警察やその関係者がたまに歩いている程度だった。


「警察なのに武闘派なんているんですね…。それに先生大分嫌われていたようですけど」


ていうか嫌われているというより憎まれているような感じだと天川は思った。本気かどうか定かではないが少なくとも冗談をいっているようにはとても思えなかった。


「超法規的措置が許されているからね魔法公安課は。警察でもないのに『同様の扱い』を受けている私が単純に気に入らないんじゃないか?…ああそれで思い出したけど、私が側にいないときは彼にさっきのような態度は控えたほうがいい。最悪殺されるからな」


最悪殺される。

それはあまりにもあっさりと口から出た。


「さっきはわざと気の抜けた態度をして彼を冷静にさせたんだろう?中々にいい判断ではあるが…魔法公安課は自身の判断でその場の処刑を許されているからな。例え冤罪の一般人でも…ね」


「…まじすか?」


ドン引きする天川に対し六文銭は淡々と話す。


「それぐらいでないと魔法犯罪者に逆に殺されるからな。そう言う意味では彼がああいう横柄な態度になるの仕方ないと言えばしかたないんだ。命がかかっているから自ずと表情も険しくなる。なので天川、もし私がいないときに氷室に出会ったら…私が教えたあの力をいつでも発動して置けるようにしておけ、わかったな?」


六文銭から授かった力。

時属性変化。


「氷室はとびっきり突出した火属性の魔法使いだ。その炎は爆炎にも勝る…が。時属性の前には無意味なものだ」


六文銭はそう口元を歪めた。


「その割には大分先生に食って掛かってましたよね?普通に考えたら先生に勝てるとは考えないだろうに」


六文銭は属性変化にて自身の魔力内の時間を自在に操れる。

それだけでも十分凄いのに各種魔法も使える。

恐らくは天川の知らない強力な時魔法を使えるだろう。

そんな六文銭に一歩も引かず喧嘩を売る男。


氷室炎々羅。



「世の中には理屈関係なく動く奴も少なくないからな。氷室もそういう人種なんだろう。まあなんだかんだああいう男は私は好きだね。…なんというか命知らずでさ」


六文銭はそうくつくつと笑った。

そうこう話している内に車は山道に入り辺りは自然だらけになっていた。


「…多分ですけどそういう感じだから氷室さんに嫌われてるんですよ………あが!?」


六文銭のげんこつが天川の頭に直撃した。


「君はあれかい?定期的に私に殴られたいのかな?」


頭をさすりながら天川は答えた。


「…どうなんすかね」



気づくと。

山中にでかい洋館が見えてきた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



山中に聳え立つ古ぼけた洋館。

ともすればミステリー小説に出てきそうな感じだ。


「ここにあれですか?四鏡勘九郎って人が住んでるんです?」


エントランス前。

天川と六文銭とアルマが並んで立つ。

天川の質問に六文銭はうむと頷き、大きい扉に似合わないチャイムのボタンを押した。


《なんか殺人事件でも起きそうな館ですね。…面白そうです♪》


アルマはそう言いいながらうふふと微笑する。


《勘弁してくれ…と言いたいところだが、まあ同意だわな。ゾンビとか出てきそう》


半ば強制的に四鏡島に連れられてきた天川だったが、ここまで来たら開き直って楽しもうとも思っていた。

勿論警戒心は残しつつだ。

それに実際いるかどうかも分からない水無月霧雨の追跡もあるのも踏まえつつ。


(しかしなんだな。危険が伴うのは知っているんだけど…こう考えることが多いとやはり面白い)


天川は転生前の仕事の事とかそういう事を考えるのは大嫌いだったが(面倒だから)こういう未知なるものに対してする思考は好きだった。

時の試験然り。

無表情の裏で様々な思考を天川が巡らせていると目の前の大きな扉が開いた。


「………六文銭様ですね。お待ちしておりました」


扉が開くとそこには一人のメイドが立っていた。

身長は160前後。天川よりも一回り小さい。ピンク色のメイド服を着ている。

髪はブロンドというよりも銀髪。ロングヘヤーの先端を白いリボンで結んでいる。

無表情だが可愛らしい顔で系統はアルマに似ていた。

彼女はお辞儀をしてから天川の方に視線を向けた。


「こちらの方は?」


「私の教え子だ。ちなみに名前は天川翔という。身元は保証するから一緒に邪魔させてくれ」


六文銭がそう答えると彼女は無表情のままかしこまりましたと天川に対してもお辞儀をした。


「それではこちらへどうぞ」


彼女はそう言って振り返り歩き始めた。

中はTHE洋館と言った感じで本当に殺人事件かゾンビの出そうな感じのクラシックな造りだ。


《…本当に『ああいう』メイドなんて存在するんだな。あんなもん架空の存在だと思ってたよ》


前を歩くメイドを見ながらアルマに語り掛ける天川。ちなみにこれは念話でアルマは天川以外視認できない。


《そうですか?メイドって言い換えれば家政婦みたいなものでしょう。そう考えれば別に日本でも不思議ではありませんけど》


アルマの返答に天川はそういう意味じゃないよと返す。


《ああいうごってごてのメイド服にあんな可愛らしい女の子がだぜ?しかも多分未成年ぽい。こりゃなーんか…闇を感じてきたな》


天川の見立てでは女子高生くらいの見た目だった。まあ年齢と見た目があっていないパターンもあるが、もし本当であれば学校に通っているはずであろう歳の少女にメイドをやらせている…普通に考えれば犯罪が匂う。


《言われてみればそれは違和感ありますね。だとすれば…》


とアルマが言いかけた途中で。



「おーい!!華音かのん!!着替えが置いてないぞ!!!」



奥から。

野太く、ややしわがれた声が響いた。






































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