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8、『魔力を喰う』魔法使い。水無月、霧雨。

「そういえば僕の聞き間違いだったらあれなんですけど。なんか『課外授業』がどうのこうの言ってませんでしたっけ?」


車内。

六文銭が運転席で天川が助手席に座っていた。

アルマは後部座席に座っていた。

…ウイングにぶら下がって遊ぶのはどうやらあきたらしい。


「…ああ。その通りだ。別に隠すようなことではないから話そうか。天川は『四鏡島しきょうとう連続失踪事件って知ってるかい?一部では神隠しとさえよばれている」


六文銭の問いに天川はうーんとなる。

そういやニュースで見たような見てないような。


「まあ、いままで例の試験で忙しかっただろうからね。そう言うのが耳に入らなかったのだろう。まあとは言えことはシンプルで島内での失踪者が30人を超えたのだ。今は戒厳令が出て島内は一般人の出入りが封鎖されていて警察が厳重に島内の警備を続けているのさ」


「そりゃあ随分…物騒な話ですね。ちなみに四鏡島って日本ですよね?どこら辺にあるんですか?」


天川の問いに六文銭は一瞬怪訝そうな表情を見せたがすぐにそれは収まる。


「…結構有名なリゾート地なんだけどね。まあいいさ。丁度沖縄と九州の真ん中くらいにある大きな島さ。そこで観光客が30人ほど失踪している。…30人だぞ?この平和ボケした日本でだぞ?にもかかわらず操作は全く進んでおらず犯人の手がかりなど全くつかめていないのが現状だ」


確かに30人からなる人が失踪は異常な事態だ。しかもそれでいてその行方が全く分からないのがやばい。


「日本の警察が無能説ありますかそれ?普通そこまで露骨なら何かしがあると思いますけど」


天川の問いに六文銭は横に首を振る。


「よくドラマやアニメでそういう部分が誇張されて表現されてはいるが、日本の警察は優秀な類だよ。しかも今回のような大事件だ…威信を賭けて捜査しているさ」


だが、現在もそれは実ってはいないがねとくつくつと笑う六文銭。


「とは言え探すべきところは全て探したはずさ警察はね。にもかかわらず何も見つからない…これをどう見る?天川翔」


突然の問いに天川は黙る。

…探すべきところは探した、か。

そして本来無関係である六文銭がその話題を出す。

つまり。


「魔法が関与しているって言いたいわけですか?」


天川の返答に惜しいなと視線を向ける六文銭。


「知っての通り魔法を使えば今回の事件の大部分が説明できるが、しかしそうであるなら魔法を使用した時点で魔法監視装置で今頃犯人はお縄だろう。だが魔法監視装置では察知できない『力』を君も私も知っているだろう?」


「属性変化…ですか」


天川の返答に満足そうに頷いた六文銭。


「…先生はもしかして僕たちでその事件の犯人を調査するつもりなんですか?」


「流石察しがいいな。それが私のいう所の『課外授業』だ」


こいつ正気か?と思う天川だった。

最悪自分が失踪する羽目になるかもしれないのに。

そもそも失踪なのだから犯人がいるかどうかさえ分からない。

人災ではない超常現象かもしれないのにだ。

天川が渋い表情でそう考えていると六文銭はにやりと笑った。


「これで益々やる気が出たろう?時属性変化をより強力に発動できるようにならないと自分が『神隠し』にあうことになるからな。一応私が君を守ってはやるが、想定外な状況はいくらでもあるから…ね」


喜々として話す六文銭に対して、天川の心中は穏やかではない。

こいつ…思っていたより大分性質が悪い。

最悪アルマから能力を貰えばそういった危機は打開できるがその選択は天川の中ではありえない。

自分には目的がある。


「つまり先生は僕を危険な状況に身を置かせることで、成長を促進させるという目的ですか?」


六文銭とは対照的に天川は無表情で聞く。


「目的の一つではある。ただまあ、どちらかといえば事件の真相のほうが知りたいというのが一番かな?もしかしたら、新たな属性を持つ魔法使いに出会えるかもしれないからね」


新たな属性…そのワードに天川が夢で見た水無月霧雨という少女を思い出した。


「先生質問があります。『魔力を食う』魔法使いって存在しますか?」


「魔力を…食う?」


それを聞き喜々としていた六文銭の表情が一気に怪訝なものに変わった。

そして天川を睨みつける六文銭。


「…知らない…聞いたこともない…が君が意味もなくそんな質問はするまい。経緯を全て話せ」


六文銭のトーンが低くなった。

まさかここまで食いつかれるとは思わなかったが、ここまできたのだから笑われてもいいからとこれまでの夢の話を全てした。

砂浜で水無月霧雨霧雨という少女に何回もあったという事。

彼女が魔力を食べちゃうと話していたこと。

そして決定的なのが砂浜であるという事。

リゾート地である四鏡島にも砂浜は当然あるだろう。


「水無月霧雨…水無月…水無月…」


噛み締めるかのように少女の名前を連呼する六文銭に天川は思わず聞いてしまう。


「先生…水無月霧雨っていう名前に心当たりがあるんですか?」


六文銭は今まで見たこともないような真剣な表情で頷いた。


「霜月…煉獄、神無月…三月、如月…土門、皐月…エリザベス、葉月…真心、卯月…ティアラ、そして…『師走…舞雪』」


ぶつぶつと独り言のように続ける六文銭。


「せんせい?」


分からないと言った表情を向ける天川に六文銭は真剣な表情を崩さず天川に視線だけを向けた。


「各属性における『世界を滅ぼしかねない』力をもつ魔法使いの名前さ。そして私の現在の姓は六文銭だが旧姓は師走…舞雪」


六文銭は続ける。


「こいつらの共通点は月名が姓になっていることだな。そして天川、お前が言っていた少女…魔力を食うと言った少女…水無月…霧雨。これも月名が姓だ。そして砂浜というシチュエーション…根拠はないが事件と無関係とは到底思えない…単なる偶然にしては出来過ぎている。…天川、お前はつくづく面白い奴を引き寄せる才能があるな」


口があんぐりとなって停止している天川に構わず六文銭は続ける。


「もともと許す気はないがさらにこの課外授業を断ることが出来なくなったな、天川翔。どうやらこの事件は私たちにしか解決できないらしい。…ふふふ、…魔力を食う…実に楽しみだ」


続ける六文銭にたしてフリーズが止まらない天川。


「ん?驚くのは構わないがいい加減何か言え天川」


そう目を細める六文銭。


「せ、せ…んせいって…」


「?」


「結婚してたんですか!?」


「ぐが!!?」


無言で鉄拳制裁を食らった天川だった。



ーーーーーーーーーーーーー


「いてて…。いや別に先生がモテないとかそういう意味じゃなくて、なんかそういうのに興味なさそうだと思ってたので意外で」


殴られた頭をさすりながら話す天川。


「だとしてもだな。真面目な話をしている最中なのにからということもある」


…真面目な話ねえ。と思いながら天川は車の窓に顔を向け車外を眺める。

そもそも世界を滅ぼしかねないとか、神隠しだとか振り返ってみると随分荒唐無稽な話をしていると思う。そういった理由で多分六文銭が既婚者という事実の方が脳内にドーンと響いたのだ。

だが実際現実に起きている以上、それは真面目な話になるのだ。

天川の隣にいる六文銭も、自称『世界を滅ぼしかねない力を持つ』魔女らしい。

本来であればそれも頭のおかしい人の発言でしかないがまあ実際そうなのだろう。

天川が六文銭から授かったあの力…。

それだけでも世界を滅ぼしかねない力を持つものだと理解できる。


「…。元からその『課外授業』を断る選択は僕にはありませんよ。そんなことをして先生に見放されたらそれこそ僕の命が危うい。あなたからはもっと色々なことを学ばないといけない」


そして夢で出会った水無月霧雨。

もし彼女が現実にいて。

四鏡島にいるのなら。

単純に会ってみたい。

少なくとも六文銭というが自分の側にいるのであれば、自身の安全は担保されてると思うから。


「懸命な判断だ、天川翔。ちなみに反射的に殴ってしまったが、君の見解は実は的を得てはいる。実際に私は結婚しているものの、旦那が好きとかそういう感情はない。利害関係が一致しているから結婚した感じかな?」


そう笑って話す六文銭になら殴るんじゃねえよと心の中で突っ込んだ天川だった。

しかし自身のリアクションも考えてみれば相当に失礼なものであったのは間違いないので飲み込む。


「答えたくないなら答えなくてもいいんですけど、利害関係の一致って具体的になんです?あ、これ単純に興味本位です」


時魔法の権威、六文銭舞雪をして結婚をするまでの利を持つ男。


その利とは?


「うん。彼、超に超を重ねるほどの金持ちで同時に大きな権力も持ってるんだ。だからだね」


「…」


天川の無言の反応に六文銭はあははと笑った。


「軽蔑したかい?」


「いえ。むしろ普通な理由過ぎて意外でした。軽蔑どころかむしろ真っ当な理由だと思いますよ僕は。愛は大切ですけど、お金はもっと大切ですからね。愛で飯は食えない」


そもそも一部の人以外はその人生の大半の時間をお金のために使うのだ。

お金より大切なものがあるという論は分からないでもないが、だとすればお金と同じくらい大切だと表現すべきだと天川は思う。


「13のくせに夢のない事言うんだね。でもはっきり言ってその論は薄っぺらいよ。なぜなら人は愛…いや想いというべきか。その力で生きていけてるのだから」


金目的で結婚した奴が何を言ってるんだと思った天川だったがとりあえず次の言葉を待つ。


「確かに君の論は正しい。お金が大切なのも否定はしない。だが何事も強い想いから全てが始まるんじゃないのかい?君の現状を含めてね」


六文銭は続ける。


「君が私に認められたことは金では決して得られないものだ。そしてそれは君の内なる強い意志…つまり『想い』によって成し遂げられた…どうだい?これでもお金より大切なものはないというのかい?」


そういいながらにやける六文銭。

しかし天川は不満げな顔を六文銭に返した。


「別に薄っぺらくても構いませんよ。僕にとってその『想い』とやらも金も等価値と言いたいだけです。結局大抵のことは金がなくてはできない」


天川の返答に六文銭はあーそういう事かと納得する。


「つまり君は単純に比べることはできないといいたいわけか。…何というべきか君は随分捻くれてるねえ…」


てめえにだけは言われたくねえと思う天川だった。


「ちなみに先生の旦那さん側の利ってなんなんです?答えたくないなら別にいいですけど」


天川の突然の問いに六文銭にしては珍しい言葉に詰まる感じになった。


「えー…あいや、別に言ってもいいけど聞きたいのかい?彼の性癖に関わることなんだが…」


「やっぱいいです」


天川の即答に六文銭はあははと笑った。


「意外と潔癖症なのかな?まあいいさ。ついたね」


そこは。

バッティングセンターだった。


























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