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それゆけ!奥野坂上大学オカルト研究会7

「奥坂オカ研〜ファイトー!」

「お、おー!?」

謎の掛け声と共に──


「ゴーゴーゴーゴー! ムーブムーブムーブ!」

米海兵隊もかくやと言わんばかりのテンションで、階段を駆け上がる俺たち3人。


バンッ! と二階の襖(ふすま)を蹴り開ける烈子先輩。

ハイテンションでタンスを一段ずつ漁っては中身を後ろへ投げ散らかす性子先輩。

そして、その横で呆然と佇む俺。


「伊地知! 隠し部屋はどこじゃい! ぎゃおぉぉん!」

(ひっ……怪獣!?)


「あ、この部屋じゃなくて……廊下の突き当たりの壁かと!」


「おう! さすがは男の子じゃ! 空間把握能力が高い!」


「烈ちゃんが無さすぎるだけよぉぉ〜! おほ? セクシーな下着よぉぉ!」


「可憐な大和撫子は地図が読めない方が可愛いんじゃい! ぶっ飛ばすぞ、伊地知を!」


(ひぃぃぃ! 大和撫子っていうか戦艦大和と武蔵だよおおおおお!!)


「ふん、なんの変哲も無い壁だな……伊地知、やれ」


「へ? あ……はい! やります! やりますからぁ!」

(危なかった……断ったら烈子先輩の拳が『中高一本拳』で俺の鳩尾を撃ち抜くところだった……!)


すうぅぅ……呼吸、息吹ッ!

独特の呼吸法で、全身の気を丹田へと静かに練り上げる。

そして繰り出す──渾身の前蹴り!

ドゴォォォォンッ!!!

壁が激しく砕け散り、奥に隠されていた重々しい扉がぶち破られた。


「うっ……これは……」


「さすがのワシでも、胸糞悪いわな……」


「私だって……こんなの……」


漂う濃密な死臭と邪気。

爪でかきむしられてズタズタになった壁紙。

無惨に転がる錆びた拘束具や刃物……そして、あまりにも小さく朽ち果てた幼い骸。


『あぁぁぁあ……おかあさん……痛いよぉ……あぁぁぁ……』

泣き叫ぶ子供たちの霊。それらがドロドロに混ぜ合わさり、およそ元は人間だったとは断言できないほど醜く歪んだ巨大な霊体へと変貌していた。


「よしよし……ほら、怖くないわよぉ〜」

次の瞬間──性子先輩が、その恐ろしい形相の霊体を優しく胸に抱きかかえ、あやし始めたのだ。


妖艶で、暖かく、圧倒的な母性が溢れ出す。そこに居たのは、いつもの淫乱な先輩ではなく──傷ついた魂を救済する、美しき『聖女』の姿だった。


「この子たちは、私が責任を持って成仏させるからぁ……二人は『そいつ』をお願いねぇ」


「けっ、面倒を押し付けやがって。……伊地知、後ろだ」


「え?」

振り向いたその瞬間。

そこには──鬼の形相で血塗られた巨大なヤットコを振りかざす、母親の怨霊が立ち塞がっていた。


「さて、ワシは可憐な乙女じゃから、そんな物騒な幽霊とはやりあえん。……伊地知! 君に決めたぜ!」


「そ、そんな急にポケットなモンスターみたいに言われても!?」


「いつも通り、殴って前歯全部折ってやれ!」


「くっそ……怨霊とはいえ女性を殴るのは……!」

振り下ろされる巨大で血塗られたヤットコを、俺は間一髪で『回し受け』でいなす。そして、後ろで霊体をあやす性子先輩の方へ攻撃がいかないよう、自らの体で壁を作った。


「そう言いうとこ、好きよぉ〜。今度ぱふぱふしてあげるわよぉ〜」


「後が怖いんで! 遠慮しときます!」

死線の中で、俺は爽やかすぎる満面の笑みで即答した。


「ツレないわねぇ〜。おぉよしよし、大丈夫よぉ〜。怖いお姉さんと強いお兄さんがやっつけてくれるわよぉ〜」


「誰が『怖い』んじゃい!!」

さっきの部屋から烈子先輩の怒号が飛んでくる。


「よし! わかったぞ! その女(あま)は聞き齧った中途半端な呪法に失敗して、そんな姿になったようじゃい! 伊地知、こっちの部屋にそいつを連れてこんかいボケェ!」


「ええ!? なんでですか!?」


「いいから早く! 子供の前で親を殺れっちゅうんか!? あ゛ん?」


「はッ……!」

自分の考えの浅さにハッとする。

俺の拳でこの怨霊を粉砕すれば、子供たちも報われると一瞬思ってしまった。だが、世の中はそんなに単純な話じゃないのだ。


「わかりました! やってみます、先輩!」


「おう! 良い返事じゃ! 漢(おとこ)の声じゃ!」


俺は襲いかかってくる母親の怨霊を引きつけながら、隠し部屋を出て廊下を戻る。

鏡台のある部屋へと戻ると、烈子先輩が三面鏡の三段目の引き出しに手をかけていた。

「先輩! それを開けたら──」


「おら! 女! 見ろ!」

バッと引き出しが開け放たれる。

──だが、引き出しの中には、何も入っていなかった。

『あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ……!!』

女の霊が、自身の罪と絶望に狂うようにさらに暴れ狂う。

「最後の最後で……『母親』しちまったんだな。伊地知、抑えておけ! 頑張ったらぱふぱふしてやる!」

「後が怖いんで遠慮します!」

「おう! そうか! ツレないな!」

「はい!」

「後でゲンコツな?」

「はい! 喜んで!!」


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