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それゆけ!奥野坂上大学オカルト研究会5

「あれ……鍵、かかってますよ?」


「伊地知……いちいち聞くな、やれ」

(うわぁぁ……住居侵入に器物破損だぞこれ……。バレたら一発で退学だよぉ……。でも、退学より目の前の二人の先輩の方が100倍怖いよ!!)


「せいっ!」

ドガァァァンッ!!!

俺の渾身の前蹴りでドアノブごと扉が吹き飛び、最恐の心霊スポット『黄色い屋根のお家』の玄関が強引に開け放たれた。


「おぉ、やれば出来るじゃねえか! よしよし、頭を撫でてやろう」


「や、やめてください……恥ずかしいです……」

女っ気のない人生で、親以外に頭を撫でられたことなんてなかった俺は、一瞬悪い気がしなかった。……が、すぐにこれまでの二人の残虐な悪行を思い出して身体が勝手に萎縮する。完全にトラウマ(PTSD)だ。


「さて、この家は二階建てじゃが、栞が入手した設計図によれば二階に『隠された部屋』がある。外からよく見ると、窓があるはずの場所に窓がないらしい。さぁ、気を引き締めないと怨霊に心臓を握り潰されちゃうぞぉぉ〜」


「きゃあ〜こわいわ〜」

性子先輩の物凄い棒読みに、ここが最恐の心霊スポットだということを少し忘れそうになる。


だが、もう玄関の時点で、奥の風呂場や左右のリビング、階段の陰から伸びてくる「この世の者ではない視線」の群れに、俺の膀胱はとうに決壊寸前だった。


「二階は……後回しだな。少し厄介なのが見とる」


「そうねぇ、アレは不味いわね……」


「急にシリアスにならないでくださいぃぃ!!」


「でも、あいつ下に降りてこんのぉ?」


「何か縛りがあるんじゃないかしらぁ?」


「なるほど、一理ある……か、あるいは様子を見ているだけか」


「え? 無視ですか? おーい!?」


「せからしか! 早漏に候(そうろう)か貴様は!」


「ひぃん! 意味がわかんないよおおお!!」


「とにかく、ここは手分けして一階を探索じゃい! ワシは居間を、性子は風呂場がお似合いじゃい! 伊地知は台所を調べろ! 何でも良い、この家の隠された因果を見つけるんじゃ! 除霊ってのはそういうもんじゃい!」


「ひ、一人で!?」


「おうよ? なんじゃ、怖くてワシらに手を繋いでもらわんと何も出来んのか?」


「はい!!!」


「あらぁ、素直なのは良い事よぉ?」


「もう心臓が口から飛び出そうで、膀胱もマジでヤバいんです!」


「ふん、そんなに漏れそうならトイレはお前が見てこい! ここで見張っててやるから!」


「あ、いや……それはちょっと……」


「あ゛あ゛ん!? じゃあここで漏らすかぁ!?」


「はひぃぃ! 行きます行きます! から、本当にそこに居てくださいよ!?」


「おう、美人巫女に二言は無い!」


「じゃあ私は台所を調べているわねぇ〜」


暗い廊下の奥にあるトイレへ向かいながら、俺は涙目で心の中で呟いた。

(本当に……地獄の鬼だよ、亡くなった宮木師匠のしごきの方がまだ優しいよ……あ……)

ジョボボボボボボーーー……


トイレのドアを開けた瞬間に──俺は見てしまったのだ。

そこに転がる、カサカサに干からびた死体を。


「あーーーーー……」

ジョボボボボボボーーー……


「あーあ、漏らしやがった。どうした伊地知? カンバリ入道でもおったか? あれはありがたい神様じゃから、そう邪険にしてやるなよ? 少し臭いけど気のいい奴だからな」


「ひっ……ひっ……!」

腰を抜かして後ずさる俺。

恐怖でガタガタ震えながら烈子先輩の方を振り返り、恐る恐るもう一度トイレの中を覗き込む。


……あれ? 居ない……? 見間違いか……?

ほっ……いや、盛大に漏らしたけどさ!?


『おーい伊地知〜、見間違いじゃないぞー。ほれほれ、右を見ろ』


「え? 右って──ぎゃぁぁぁぁぁッ!!! ミイラが動いたぁぁぁあ!!!」


「ミイラってか、ミイラの幽霊だな? 普通は死んだら一番イケてる頃の姿で出るもんだが……不思議なこともあるもんじゃな! ガハハ!」


「うぉぉぉぉぉおおお! 動け!俺の筋繊維ぃぃぃぃ!!!」


俺はバッと飛び跳ねるように立ち上がり、空手の基本である『騎馬立ち』の姿勢を取った。

深く呼吸を整える──スゥゥ……ハァッ、ハァッ、ヒュッ。

独特の呼吸法で肺の底まで息を溜め込み、丹田へと一気に力を集中させる!


次の瞬間、突き出した俺の右拳に、ゆらりと『青い炎』が纏わりついた!


「宮木流────大和の火!せいッ!!!」

ドガァァァァンッ!!!


青い炎を宿した正拳突きが、ミイラ幽霊の顔面を真っ直ぐに打ち抜く!

ギャァァァッ! と苦悶の断末魔を上げてのたうち回るミイラ幽霊。


そこへ、玄関からダダダッと走ってきた栞先輩が、迷いなく消火器のピンを抜いた。

プシューーーーーーーーーーッ!!!!

容赦なくぶちまけられる消火剤。


俺の青い炎が消える頃には、ミイラ幽霊は消し炭と消火液の泡の中に虚しく消滅していた。


「よくやったぞ伊地知! 良い技持っとるじゃねえか!」


「ハァッ……ハァッ……いや……あの……必死で……っ!」


「もう漏らしたんだから、何も怖いものは無しねぇ〜」

台所の方から、性子先輩のおっとりとした声が響いてくる。


「伊地知さん、臭くなる前に着替えてください。はい、替えのジャージです」


「栞さん……有能過ぎませんか!?」


「いえ、普通ですが?」


「は、はぁ……」

(絶対このヤバい人たちと過ごす内に、危機管理能力が異常なレベルまで研ぎ澄まされたんだな……)


「では、私は車に戻ります。怖いので」

スタスタと迷いなく車へ戻っていく栞先輩。


一方、居間の方からは──ドカッ! バキッ! ドゴォン! と、烈子先輩が部屋の中をことごとくひっくり返し、絡んでくる怨霊どもを素手で殴り倒している凄まじい破壊音が響いていた。


(え……。ってことは、俺がこれから風呂場を見る流れ……!? えぇーっ!? 水場が一番出るって言うのに!? もうやだーーーーッ!! 早く帰って深夜アニメ見ながらコーラ飲みたいよぉぉぉおおおーーーッ!!)

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