それゆけ!奥野坂上大学オカルト研究会4
そうこうしている内に、聖先輩がツヤツヤのお肌で部室へ帰ってきた。
「ただいまぁ〜。すっきりしたわぁ。あらぁ? お酒が進んでないんじゃないのぉ? ほら、ラグビー部からたんまりとお酒を頂いてきたから飲みましょう〜。運んでくださるぅ?」
「うっす!」
野太い掛け声と共に、部室に屈強な漢達が次々とビールやらチューハイやらを運び込んでくる。
「うっす! お世話になりました! うっす!」
「ありがとう〜。また頼むわね〜」
「うっす!」
ラグビー部員たちは礼儀正しく、嵐のように去っていった。
「ほぉら、じゃんじゃん飲みなさいな」
「あ、でもこれから肝試グホォッ」
聖先輩の鋭い左ボディブローが、俺の無防備な脇腹を深く打ち抜いた。
「い……いただきます……ッ!」
「おう、最初から黙って飲んどきゃ良いんだよボケ。性子はワシより手が早いから気をつけろ」
「あらぁ、烈ちゃんには負けるわよぉ〜」
「あ゛あ゛ん? お前には言われたかないわい! なぁ、栞?」
「はい。五分五分です」
「だってよ? ガハハ!」
「そうみたいねぇ? うふふ」
(ヒィィィ……! 二人の先輩の目が全然笑ってないよぉぉぉおおお!!)
「さぁ、程よくアルコールも摂取して温まってきたな? さっそく行くぞ! 『黄色い屋根のお家』へ! 皆、性子の車に乗り込め!」
「えぇッ!? ちょっ……飲酒運転じゃないですか!? 一発免停どころの騒ぎじゃないですよ!?」
「うるさいわい! 華の女子大生は法で裁かれんのじゃ、覚えとけピンクのバッタが!」
バチンッ! と頭を引っ叩かれ、俺たちはキャンパス内の駐車場へと連行された。
そこに鎮座していたのは……世にも珍しい、スバル・ヴィヴィオ T-TOP。
男の子である俺ですら、思わず「うわぁ……」と声が漏れてしまうマニアックすぎるチョイス。
「うふふ、良いでしょう? 少し弄ってるから、馬力も軽く100は出てるわよぉ。ブッチギリよぉ」
ボゴォォォォン……ババババババッ!!!
闇夜のキャンパスに響き渡る、軽自動車の域を完全に脱した爆音。
激しいスキール音を轟かせながら、俺たちを乗せた悪夢の黄色い軽トラ……ならぬヴィヴィオは、最恐の心霊スポット『黄色い屋根のお家』へと夜の闇を切り裂いて暴走を始めたのだった。
「着いたぞ! ここが『黄色い屋根のお家』じゃい! 栞は車でバックアップ、ほいトランシーバー」
「了解です。バッチリサポートいたします」
「伊地知は先頭、ワシと性子が後ろから続くから、お前は何も気にせずにその筋肉を駆使して道を切り開け!」
「え? なんで俺が先頭なんすか? 先輩達の方がこういうの得意なんじゃ──ブゲェッ!?」
烈子先輩と性子先輩のダブルラリアットが、俺の首筋を両側から鋭く挟み込む!
「マイム・マイム・マイム・マイム・マイム・ベッサッソン!」
そのまま俺の首を挟み込んだ状態で、無慈悲にマイムマイムを踊り狂う両先輩。
「あ……それ以上は、まずいかと?」
栞先輩が止めるのがあと1秒遅かったら、俺は二度と自分のケツを一人で拭くことができない体になっていただろう……。
「ゲホッ、ゲホッ……! わ、わかりましたよ! 行きますよ! 行けば良いんでしょ!? もうどうなっても知りませんからねっ!」
まったく、鬼怒川先輩が神降ろしでもすれば一発で済みそうなのに、ぶつぶつ……あいてっ?
烈子先輩のゲンコツが俺の後頭部を襲った。
「バカヤロウ! そんなチートを毎回ほいほい使えるかボケェ! 神降ろしは一日一回って決めとんじゃい!」
「そんなの知りませんよ! 聞いてませんよ!」
「うふふ、良い活動ビデオが撮れてるわよぉ〜」
性子先輩がおっとりと家庭用ビデオカメラを構えている。
……なんで、この人たちは全然怖がらないんだ?
俺はもう恐怖でチビりそうなのに!
だって──さっきから、すんげぇ怖い顔をした男の怨霊が、俺の真横ほぼゼロ距離にへばりついて、ずっと喋りかけてきてるんだから……。
『ハーレムじゃん? いいな? え? なんで? ハーレムじゃん? え? 全員美人だし? え? なに? え?』
ほらね?めちゃくちゃキレてるもん!無視無視!無視!視えてません!




