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はい、こちら幽霊社会復帰課  作者: 拝頼人
二章 地獄の実地研修編
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魔子の観察日記1

◯月◯日(天気:晴れ)

今日も朝からキッチンに立つ。

お洒落なカフェのテラス席でのデートは、うちの淫乱熟女(ママ)のせいで台無しにされたから、今日は近くの公園でリベンジお弁当デートなのだ。


『魔子ぉ、真壁君は童貞だからねぇ? 卵焼きとタコさんウィンナーでも詰めとけばイチコロよぉ〜? ウフフ、男なんて単純なんだからぁ』


出掛けにママからそんな最低なアドバイスをされた。

私、童貞の生態なんて詳しくないし!

でも……ママの言う通り、お弁当の定番だし、一応ちゃんと作ってみた。卵焼きはちょっと甘めにして、タコさんウィンナーの足も綺麗に広がるように切れ込みを入れて。寝不足で少し目の下にクマができちゃったけど、真壁君が喜んでくれるなら……って、私なに考えてるのよ! べ、別にただの同僚(?)への差し入れなんだからね!


お昼、市役所の裏の空き地で真壁君とお弁当を広げる。

一口食べた真壁君は、目を丸くして「凄い美味しい!」って、何度も何度も言ってくれた。

美味しそうに、幸せそうにモグモグ食べてる姿、なんだか大型犬みたいで凄く素敵……。

──って、ふん! 手料理をここまで褒められたら、誰だって嬉しくなるに決まってるじゃない!


「あ、魔子ちゃん、このタコさんウィンナー可愛いね」


「そ、そう? 普通よ、普通!」


二人の距離がじわりと近づく。真壁君の顔が近くて、心臓が爆発しそうだった。真壁君の手が、私の肩に触れようとした──まさに、その瞬間。

──プァァァァァァァンッッッ!!!!!

鼓膜が破れるかと思うほどの爆音クラクションと共に、芝生を轢き潰して突っ込んできたのは、いつものあの『魔改造公用車』だった。


「オラ真壁!! 相引きしとる場合じゃねぇぞ! 海から【70人ミサキ】がやってくるらしいぞ!! とっとと車に乗れぇ!!」


窓からタバコの煙と一緒に怒鳴り散らす鬼怒川烈子課長。

70人ミサキ……!? 遭遇しただけで人間を呪い殺し、その死体を媒介にしてネズミ講みたいに増殖する、日本でもトップクラスにヤバい集団怪異の……10倍!?

そんな危険なところに、私の真壁君を行かせられるわけがない!


「ちょっと課長! 私も行くわよ!!」


私がそう叫ぶと、烈子課長はぶっきらぼうにフンと鼻を鳴らした。


「あん? 聖の娘も行くのか? ──真壁から離れんなよ? 栞、出せ!」


なんだかんだ言って、鬼怒川課長も栞さんも、口と態度と暴力は最悪だけど、根は優しいから嫌いじゃない。

……何より、うちの『幽霊成仏課』の、毎日幽霊の未練に付き合わされて心が完全に目が死んでる先輩達に比べたら、この人たちの方がずっと人間味があって、私は好き。

そうして乗り込んだ公用車が、猛スピードで辿り着いたのは、荒波が打ち付ける薄暗い海岸の崖の上だった。


車から降りた瞬間、私の全身に鳥肌が立った。成仏課の私には、ハッキリと視える。

海中から這い上がり、崖の上へと向かってゾロゾロと行進してくる、顔のない、あるいは溺死体のような凄まじい怨念を纏った『影』の群れ──。

その数、文字通りおよそ70人。


「……あ、あ、頭が、割れそうに痛い……!」


崖の近くの展望台にいた、何も知らない罪の無い観光客やカップルたちが、その怪異の行列を見てしまった瞬間、白目を剥いて次々と地面に倒れ伏していく。

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