地獄の本土防衛戦エピローグ
週末、雲一つない青空が広がる、市役所の近くの小さな公園。
緑の芝生の上で、真壁と魔子はレジャーシートを広げ、二人仲良く並んで座っていた。
「真壁君、これ……。朝、頑張って作ったんだけど、口に合うかな?」
魔子が恥ずかしそうに差し出したのは、可愛らしい重箱に詰められた手作りのお弁当だった。
「うわぁ、美味しそう! ありがとう魔子ちゃん。……うん、すごく美味しいよ!」
「本当!? よ、良かったぁ……」
魔子は顔を真っ赤にしながら、嬉しそうに胸を撫で下ろす。
悪魔もいない、魔王より強い課長もいない、神様もいない。ついに訪れた、誰にも邪魔されない二人だけの静かで甘い時間。
じわり、と二人の距離が近づき、真壁が魔子の肩にそっと手を回そうとした──まさに、その瞬間だった。
狂った大音量のクラクションが鳴り響く。
激しいスキール音と共に、芝生を容赦なく踏み荒らしながら二人の目の前に急停車したのは、あの『魔改造公用車』だった。
助手席の窓から、タバコを咥えた烈子課長が般若の顔をヌッと突き出し、大声で吼えた。
「オラ真壁!! 相引き(デート)しとる場合じゃねぇぞ! 海から【70人ミサキ】がやってくるらしいぞ!! とっとと車に乗れぇ!!」
「な、なな、ななじゅうにんミサキぃぃぃぃ!?!?(遭遇したら確実に死ぬ集団怪異の10倍)」
真壁が持っていたおにぎりをひっくり返して飛び上がる。
驚いて立ち上がった魔子の姿を見て、烈子課長はフンと鼻を鳴らした。
「あん? 聖の娘も行くのか? ──真壁から離れんなよ? 栞、出せ!!」
「はい、課長」
間髪入れず、運転席の栞さんがアクセルを床まで踏み込む。
「ちょっと待ってよまだお弁当がぁぁぁああっっっ!!!」
ガガガガガガッ!!! と芝生を削りながら爆走を開始する公用車の中で、魔子ちゃんにギュッと抱きつかれながら、真壁は今日も白目を剥いて絶叫するのだった。




