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地獄の配属先3

庁舎の地下にある「幽霊社会復帰課」という名の魔窟へと戻ると

そこでは、先ほどハンディクリーナーで吸い上げられた怨霊が、床に投げ出され、強制的に実体化させられた状態で正座をさせられていた。


「これだから平成生まれの幽霊はよぉ! 全然なってねぇ!」


鬼怒川課長は、煙草を二本同時に口から離し、怨霊の目の前でドスを利かせる。


「あぁ? イタズラするなら普通はセル結合だろ! ルックアップを壊してやれよ!!」


課長の手には火のついた煙草。それをそのまま、実体化した怨霊の腕に押し付けていく。

「アァァァァッ!!」

オフィス内に響き渡る断末魔。肉の焦げる香ばしい匂いと、安酒の鼻を突く悪臭、安定の紫煙が混ざり合い、真壁は立っているだけで眩暈がした。


「いいか、データを消すなんて愚の骨頂よ。そんなもんバックアップがあるに決まってる。そんなの素人の嫌がらせじゃ」


課長はレモンサワーのストローを噛みちぎりながら、怨霊の頭を掴んで説教を続ける。


「違う、全てを1セルずらせ! セルを結合しろ! 計算式を全部『#REF!』で埋め尽くせ! 復旧に一番手間がかかる、最高に陰湿な『ズレ』を叩き込むんだよ!」


怨霊は、白目を剥きながらも、課長の英才教育をブツブツと壊れたラジカセのように呟き続けている。


「すべてを……1セルずらして……結合……#REF!……すべてを……」


課長は満足そうに鼻を鳴らすと、真壁を指差した。


「おい新人! コイツを別のオフィス街に捨ててこい! 今日の夕方の退勤ラッシュ時が一番効くぞ!」


「え? でもそれじゃあ、何の解決にも……。成仏させてあげるべきでは?」


真壁の問いかけが終わるより速く、課長の投げた空き缶が、真壁のこめかみに正確無比にクリーンヒットした。


「あぁ? 成仏は逃げだ! この世に未練があるならば! 擦り切れるまで私の為に働かせろ! 社会の歯車として復讐し続けるのが死者の義務やろうが!」


「は、はい……! 行きましょうか……」


真壁は、課長の圧倒的な暴力と歪んだ正義感に完ーフなきまでに敗北し、肩に乗せられた怨霊の生暖かい重みを感じながら、再びママチャリへと向かった。

そう、幽霊社会復帰課とは、世間には「救済」の皮を被せながら、その実、数少ない幽霊を保護し、悪質なイタズラを叩き込んで街に放つという、永久機関のようなマッチポンプで成り立っていたのだ。


真壁はサドルのないママチャリに跨り、夕闇の迫る街へと走り出した。

怨霊が肩の上で「すべてを……1セルずらして……」と呪詛を呟く。


(明日、絶対、辞表を出そ……!)


真壁は、物理的にも精神的にも磨り減った体で、死ぬ気でペダルを漕ぎ続けた。

彼の公務員としての、地獄の日常はまだ始まったばかりだった。

こちらの作品もガランド戦記同様にゆっくりと書いていきます。ので更新は未定ですが全12話を予定しています。

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