表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/21

地獄の猛暑!泥まみれデスマッチ2

到着した先は、異様としか言えない惨状だった。

うだるような暑さの中、何人もの老人や子供が道や田んぼの中に倒れ伏している。救助に来たはずの救急車までもが田んぼに突っ込み、フロントから黒い煙を噴き上げていた。


その傍らで、一人の座頭の老人が田んぼに向かって必死に手を合わせ、念仏を唱えていた。


「くねくねじゃ……! くねくねが出たんじゃ……! 恐ろしい、恐ろしい……!」


「あ゛あ゛ん? なんもいねぇぞ? クソ暑くて陽炎が揺らめいてるだけじゃろが。朦朧としてんのか、あのジジイ」


課長がガリガリと首筋を掻きながら毒づく。


「そうですね。特に何かがいる訳では……」


栞も冷静に周囲を見回す。そう、鬼怒川課長は「霊感0」であり、栞は「音しか聞こえない」のだ。この灼熱の田んぼに蠢く禁忌の存在など、二人には見えもしない。


「あへ? あひゃひゃ……? ひゃはははは!」


しかし、唯一「見えて、聞こえる」真壁は、一瞥した瞬間についに脳の回路を焼き切られた。視界の端、田んぼの真ん中で「くねくね」と踊る白い影。それを見た瞬間、真壁の顔から一切の理性が消え失せた。


「なんじゃ? 暑さで本当に狂ったんか、真壁」


「ただでさえ締まらない顔が、余計に緩んで見苦しいです」


二人の冷ややかな視線を浴びながら、真壁は「あはは! くねくね!稲穂が呼んでるよ! くねくね!」と支離滅裂に叫び、白目を剥いてタコのように踊りながら課長に擦り寄っていく。


「なんじゃ! 気色悪い! 勤務中の職務放棄は重罪じゃい!!」


ガシィッ!!!

課長の容赦ない腕が、狂った真壁の首と極限までひん曲がった身体を捉えた。電光石火で極まるオクトパスホールド――通称「卍固め」。


ボクンッ!!!

不吉な破裂音と共に、真壁の右肩の関節が派手に外れた。


「ぎゃあああああああああああああああ!!!!」


激痛のあまり一瞬で正気に戻る真壁。


「正気に戻ったか? このカス。ペッ」

課長は真壁の足元に、ヤニ臭くてやけに粘つく痰を吐き捨てた。


「あ、あ、あそこに、白い何かが踊っていて、それを見たら急に……痛い痛い! 肩が外れてる!? なにこれ!?」


「それも怪異の仕業だ!」


(絶対違う、あなたの技のせいだ!!)


真壁は必死に反論しようとしたが、今ここで言い返したら次は腕ごと千切られるかもしれない。真壁は涙目で固く目を瞑り、くねくねが居る方向を震える指でさした。


「あの案山子の真横! 向かって左です!!」


「ほぉ? 逃げられたらかなわんな……。栞、メガネ!」


課長が手を差し出すが、珍しく栞の手が止まった。


「……課長。ですがそれは、この前も使ったばかりです。これ以上は課長の寿命が――」


課長はフッと「外用の顔(絶世の美女)」で妖艶に微笑んだ。


「いいから、な? こんなに被害が出てるのに何もしないなんて……私の中の閻魔さんが許さないからさ。ね?」


そう言って、愛おしそうに栞の頭をポン、と大きな手で叩いた。


「……はい」

いつもは鉄仮面の栞が、一瞬で見たこともない「乙女の顔」になる。


栞から一秒で一日寿命が縮む呪いのメガネを受け取り、ギリギリまで田んぼの畦道を詰め寄って装着する課長。視界が確保された瞬間、目の前に現れた「くねくね」に向かって、課長はドスの利いた声を浴びせた。


「おんどりゃあ! くねくねくねくねしおってからに! 少しはしゃん(真っ直ぐ)せんかい!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ