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地獄の猛暑!泥まみれデスマッチ3

「おんどりゃあ! くねくねくねくねしおってからに! 少しはしゃん(真っ直ぐ)せんかい!!」


「え……?」


くねくねの動きが一瞬、ピタリと止まった。見た者を一瞬で狂わせるはずの精神汚染の波動を放っているのに、目の前の女は1ミリも狂う気配がない。「え? なんで狂わないの? え?」という焦りが、霊体からありありと伝わってくる。


「あん? 聞こえんなぁ! こちとら元から『社会』という荒波に揉まれて酔って狂っとんじゃい!! お前のそのひん曲がった背骨、今すぐ矯正してやるわ!!」


ガシィイイイイッ!!!

課長の力任せの両腕が、くねくねの背後に回り、完璧な形でロックされた。伝説の関節技「パロスペシャル」が、怪異相手に見事に炸裂する。


「ギ、ギャァァァァァァァアアア!?」


バキバキバキと霊体がひしゃげる断末魔をあげるくねくねを、課長はそのままチキンウィングで持ち上げ、驚異的な跳躍力から――見事なスープレックスをブチかました。


ドゴォォォン!!!

田んぼの泥の中に、頭から真っ直ぐ突き刺さり、完全に直立不動のまま微動だにできなくなったくねくね。


「よし! 新しい案山子の誕生じゃい!」


課長はメガネを乱暴に投げ捨てると、泥まみれのくねくねに向かって堂々と中指を立てた。

パチパチパチ、と背後から栞の熱狂的な拍手が送られる。

真壁は外れた肩を押さえながら、ただ呆然と呟いた。


「うわぁ……あの人、怪異まで物理で倒しちゃってるよ……」


隣で見ていた座頭の老人は、「た、祟りじゃ……! 荒御魂あらみたまじゃあ!!」と泡を吹いてそのまま白目を剥いて倒れていった。


今回の怪異は「幽霊とは霊体の構造が違う」とか何とかいう難しい理由で、ハンディクリーナーには吸い込めないらしい。栞にそう説明されつつ、一同は怪異の力を奪う特殊なロープでくねくねを簀巻きにし、車の後部座席に乗せて帰ることにした。


「あの、真横に怪異が転がってるの、凄く嫌なんですけど……?」


泣き言を言う真壁だったが、助手席から「うるさい黙れ!」と、真壁とくねくねに向かって火のついたタバコが同時に飛んできた。熱さに絶叫して車内で共に「くねくね」と暴れ回る真壁と怪異の姿を見て、課長と栞はケラケラと楽しそうに笑っていた。


捕らえられたくねくねは、その後3日ほど地下の課内にて、課長のプロレス技の練習台(関節技のサンドバッグ)にされ、完全に尊厳を破壊されたのち、とある怪しい機関に高値で買い取られていった。


数日後。

課長の腕にはダイヤモンドが散りばめられた高級時計が眩しく光り、栞さんのバッグはさらにハイブランドの新作に新調されていた。


そして僕には、課長が「ほらよ」と自販機の缶コーヒー(微糖)を1本、奢ってくれました。


(……肩の治療費、引かれてるな、これ)

真壁は冷たい缶を頬に当てながら、高級時計を眺めてガハハと笑う上司を、ただ遠い目で眺めるしかなかった。

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