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地獄のクリーンオフィス大作戦2

「失礼します。県庁の監査室から参りました、――」


「あらぁ〜♡ 遠いところわざわざお越しいただき、ありがとうございますぅ〜♡」


鬼怒川課長が、4オクターブ上の天使の歌声で県庁の監査員を迎え入れた。その姿は、どこからどう見ても儚げで上品な、職場のオアシス的ヒロインである。


「どうぞ、有機栽培の豆を使用したコーヒーです」


栞がいつになく愛想よく(真顔のままだが)コーヒーを淹れておもてなしを始める。なんと、資料を渡すフリをして、監査員の背中に豊かな胸をわざとらしく押し付けている。


(……嘘だろ。あの栞さんがハニートラップ仕掛けてる。ギャップで風邪ひきそうだよ!)


真壁はあまりの茶番劇に眩暈を覚え、関わりたくないので自席のデスクで黙々と「新しい辞表」を書き進めることにした。


監査の役人は、絶世の美女二人(※一人は中身がドブ、もう一人は狂気のサイコ)に囲まれ、鼻の下を伸ばして終始ご満悦だった。


裏予算の帳簿データを改ざんしたダミー書類を渡すと、彼は大したチェックもせずに「うんうん、問題ありませんね!」とハンコを押し、穏便にやり取りは終了した。


「それでは、これで失礼します」


役人が満足げな笑顔で部屋を出て、ドアがバタンと閉まった。その――まさに0.4秒後だった。

シュッ、ボッ!

課長は凄まじい早業でハイライトに火をつけると、そのまま真壁の頭に泥のようにドカッともたれかかって毒づいた。


「あ゛〜〜〜〜クソがッ! ヤニ切れで死ぬかと思ったわボケナスがぁぁ!!」


「うおっ!? 課長、重い、重いですって!」


「うるさい黙れ! 私の灰受けになれ!」


ハラハラと落ちたタバコの灰が、真壁が今まさに書き終えようとしていた辞表の上に落ちる。ジュッと音を立てて、渾身の辞表が焼き焦がされていく。


「ああっ! 僕の辞表が!」

「何が辞表じゃコラァ!」


課長が真壁の頭を容赦なく引っ叩いた、その瞬間。

ガチャ。


「あ、そういえば、提出書類の件で一つ伝え忘れが――」


さっきの役人が、信じられないタイミングで部屋に戻ってきてしまった。

そこにあったのは、クリーンオフィスとは程遠い、タバコの煙が充満する中で部下の頭をシバき回している絶世の美女(見た目だけ)の姿。

役人の目が点になる。


「え……? タバコ……? 庁舎内は禁煙のはずでは……? え、パワハラ……?」


状況を理解されかけるより、課長の身体能力が勝った。

ドゴォン!!!


「ぐぇっ!?」


風を切る音がした。課長の神速の踏み込みによる鋭いボディストレートが、役人の鳩尾を正確無比に抉った。役人は白目を剥き、声にならない悲鳴を上げてその場に昏倒した。

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