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異界とは:加藤という人間

(本当にアンナの見立て通りだ)

 ベーグルは考えた。

 それは彼には存在しないと思っていた感動、感心、興味という情動を伴っていた。

 おそらく人間と円滑にコミュニケーションを取るために、ひそかにアンナが仕込んでおいた機能なのだろう。


「こんな奇天烈な話を受け入れ、見返りも無いのに協力してくれ、かつ遂行能力がある人種は世界中探しても希少だ。その中で一番可能性が高いのは日本という国の、社畜と呼ばれる人種だろう」

 アンナはそう言っていた。


 おびただしい数だった猫型ネイムは、既に半数程度に減っている。

 プレジデントは動かない。判断に迷っているのが分かる。これはヤツのベースとなる人間を知っていれば理解が容易い。


 ()()()()()の行動原理は野心と保身だ。今は保身の占有率が高いのだろう。


「おっと!」

 加藤が叫ぶ。

 見ると、巨大なドアが3体の衛兵に変わった。

 敵勢は増えたが、退路が出来たとも言える。さて、どうするか?


「今度は人型かよ!」

(これ、出来るか?)

 言葉の裏で、加藤からのイメージが届く。


 念話機能は本来、相手の国籍・言語を問わずコミニュケーションを取る為に作られた機能だ。しかし、それがこんな風に役に立つとは。

 ベーグルは日本語自体もかなり理解するようになっているが、だからこそ改めて感心する。発声と思念を使い分けるとは随分器用なことをするものだ。おそらく裏で随分練習をしたのだろう。


「仕事は予測と準備が八割だ」

 そんなことを加藤は言っていた。上司の無茶ぶりに対応するには瞬発力では限界がある。どんな仕事が振って来るかをあらかじめ予測し、準備しておくのが会社で潰されないスキルなのだと。

 今回、届いたイメージは奇妙な物だったが、おそらく何かしらの事前訓練(イメージトレーニング)を積んでいると思われる。


(可能だ。面白い)

 ベーグルはそう返して加藤の要望に従う。

 

 尻尾は2本になり、双方の先に手の平が出来る。そして肩の位置に移動。

 要は肩から追加で2本腕が生えたような形態。


 熊手型だった爪は一本に集約する。つまり、両腕の手甲に短剣が装着されたような形。

 命中率を犠牲にして、斬撃特化にした形だ。


 この変身意図はすぐ分かった。


 加藤は踵を返して衛兵に向かうと、1人の首を跳ねた。

 すかさず背中の腕がそれを掴み、吸収する。


 斬られた衛兵の首はすぐに再生するが、情報が減った分、一回り小さくなる。

 そして、その再生の隙に加藤は更に衛兵の片腕を切り落としていた。


 加藤の勢いは止まらない。

 気が付けば相手はプレジデント一人になっていた。


(最後はキックで決めたい。出来るか?)

 と加藤の念話。

 時々出てくるこういう変な拘りは、ベーグルはまだ理解できない。

 どうやら、日本の子供番組のヒーローに自分を当てはめているようだ。

 これもある種のモチベーションコントロールなのだろうと解釈し、あまり深くは干渉しないようにしている。


(キックの瞬間だけで吸収は不可能だ。どうしても足で決めたければ、先に動きを封じなければいけない。こういうのはどうだ?)

 ベーグルは提案する。


(いいね!それもロマンだ!)

 加藤は提案を受け入れる。


「行くぞ!ベーグルーーーー!ネーーーーーット!!」

 ベーグルには意味の分からない言葉だったが、発射のタイミングということだけは理解したので、要望通り加藤の腕から捕獲用の網を噴出した。


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― 新着の感想 ―
「社畜」の利用価値、そして「出来る男」に必然のスキル……エンタティメントの中に、現代社会を生きる知恵が潜んでいますね! そしてラストは……「超電磁タツマキ」的な奴からキックでフィニッシュ!? 世代的に…
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