異界とは:決断と儀式
「一つ確認したい」
オレは、いくつか頭で考えてから切り出した。
「なんだね?」
「その敵対国家の者なら、オレは対抗して構わないのかな?それならwin-winだよな」
最初「駆除していいか」と言いかけて、さすがに失礼な気がして「対抗」と直した。変な表現ではあるが、意味は通じるだろう。
「いい観点だ」
幸いプレジデントは、言い回しなど全く気にする様子もない。そして続けた。
「結論から言えば、その問の答えは半分YESで半分NOだ。敵対国家の者ならば好きに虐殺してかまわない。しかし、その機会は無いだろう。何故なら、その国家はもう滅びているからだ。無論、我々の勝利によって」
オレが気を使った言葉は、遠慮無く過激な言い回しに変えられていた。
「依頼主が滅んだのに別世界のウィッチは敵対を続けているってことか?何故?」
「可能性はいくつか考えられる。我が国の資源が目的に変わったのかもしれないし、共闘するうちに思想的に通じたのかもしれない」
「詳細は分からないってことか」
「その通り」
プレジデントの回答は概ね予想通りだった。
「しかし、やっかいだな」
オレは腕を組んで考え事をした。
「何が?」
「キミ達がウィッチに手をこまねいているということは、ヤツは一国に相当する力があるということだろう?しかもかなり執着心が強い」
「そこだよ!」
プレジデントは食いついた。
「ウイッチがやっかいなのは戦力ではない。二つの世界を行き来し、捉えどころがない所なのだ。こちらの世界からだけでは追いきれない。そこでだ!」
いよいよ本題とばかりにプレジデントは一旦言葉を切る。
「貴殿に情報提供をして欲しい。貴殿は、ウィチが貴殿の世界でどのような生態をしているのか知っているのではないか?どこにいて、何を捕食し、どんな能力があるか?貴殿とはどうやって接触して来たのか?」
「なるほどね」
「知らないということは無いだろう?」
「まぁな」
オレは少し考える。
「もし、それを断ったらどうなる?」
「どうもしないさ。我々は平和的な種族だ。ここで根気よく、誠意を見せて、いくらでも対話を続けるつもりだ」
「そういうことか。たいした誠意だ」
要は、YESと言うまで元の層には帰さないということだろう。
「……分ったよ」
条件は出揃ったようだ。
「腹は決まった」
オレの言葉に、プレジデントは満足そうに頷く。
オレはリュックを開いて準備していた物をテーブルの上に乗せた。
「では、お見せしよう」
立ち上がってオレは言う。
「なんだね、それは?」
「まぁ、儀式みたいなもんさ」
「儀式?」
オレは、テーブルの上に乗せたタンブラーの蓋を開いた。
シュポっと気が漏れる音がする。
「こっちの世界の儀式さ。図らずも異能を持ち、とまどい、立場を決めかねていた人間が、自分の役割を認識し、覚悟を決めた時にこう言うんだ」
オレは片足を引き、両腕のガードを上げ、ファイティングポーズを取る。
「変身!」
オレの言葉に合わせてタンブラーの中から黒い塊が跳び出した。
そして、オレの全身を黒いスーツが包んでいく。




