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キラービー:顛末

 数日後。

 仕事から帰宅したオレは、公園にジョギングに向かった。

 新しい職場では、まだ人間扱いされており定時退社が出来ている。部活帰りの学生とすれ違う時間に帰宅するのはなんとも不思議な気分だ。


 まだ数日ではあるが、その後は蜂に刺されることは無い。

 数十分ほど走っていると日が落ちて来た。これで今日も刺されることは無いだろう。


 そう考えてた時、3人の比較的大柄な男子が、サッカーボールを持って広場にやってきた。

 格好は動きやすそうではあるが、ジャージではなく普段着の範疇。身なりも小洒落ている。

 おそらく大学生だろう。色々なことから解放され、自由を満喫すると、自由が故に怠惰になり、運動不足になり、ふと部活が懐かしくなる・・・そんな自分の過去を振り返った。


 彼らも似たような境遇なのかもしれない。

 3人は、恰好こそラフだが、明らかに経験者という動きだった。

 攻撃が一人、守備側はキーパーとディフェンダーが一人ずつ。ディフェンダーを交わしてシュートを決めるという形式を交代でやっている。


 技術は上手いのだが、場所が例の花壇に近いのが気になった。

 日が落ちれば蜂の活動も収まるし、管理事務所も閉まるので、夜に利用する人達は別段気にしていないのだろう。


 オレは彼らに接触する為の機会を伺っていると、運よくこぼれ球が近くに来たので、急いでそれを拾う。


「すみませーん」

 と彼らの一人が手を上げる。


「ごめんね!ちょっとお願いがあるんだ!」

 と、オレはボールは蹴らずに手に持って歩み寄る。


「なんでしょう?」

 オレが着く頃には3人が集まっている。

「サッカーはね、あっちの方でやってほしいんだ」

 オレは花壇から離れた方を指さす。

「はぁ・・・」

 と、怪訝な表情をする彼ら。


「悪いね。そこの花壇がさ、子供達が世話してるんだよ。そこにボールが入ると『ボール遊びは禁止しろ!』って声が過去に何度かあってね。そうなるとメンドくさいから、協力してくれるとありがたい!」

 オレは片手で拝む仕草をし、申し訳なさそうに言う。

 多少誇張しているが、カレー屋で聞いた話を元にしているので、嘘ではない。


「そうなんですね。知らなかった」

「だよね。だと思ってお願いしたんだ。急に悪いね」

「いえ、むしろ、ありがとうございます。移動します」

「あざっす!」

「あざっす!」

 三人は、素直に場所を移動した。


 彼らが花を倒した者かどうかは分からない。でも、これで一つの目は摘めただろう。

 そもそも公園のルールとして、彼らは何も悪いことはしていない。

 もちろん、花壇を守りたい少女の思いも当然だ。

 ボール遊びが子供に危険だと心配する親の思いも分かる。

 そして、そういう物事の板挟みになる管理者が疲弊し、保身的になることもあるだろう。


 誰も悪くないのだ。だが、公園という多くの人達が使う場所ではそれぞれの思惑がぶつかることはある。そこにネイムが干渉したのが今回の事象なのだろう。


 それにしてもネイムとは、いったい何なのだろう。

 今回、多様な進化・学習をするポテンシャルを秘めているのを目の当たりにした一方で、生物として見るとあまりに雑だ。


 元を辿れば、花壇を守りたい少女の危機感にネイムが反応したことなのだろう。

 彼女を軸に周辺の様々な情報を得て行ったと思われる。

 踏み倒された植物の無念や、人が必要以上に蜂を恐れるという感情。そして、理不尽に駆除される蜂の怒り。そういったものからあの大樹ネイムは形成されていったのだと。


 ボタンの掛け違いは、ネイムの影響で蜂が狂暴化したことだ。

 それにより、あの花壇自体に人が近寄らなくなる。そうすると人からのネガティブ思念を捕食出来ないネイムは、共食いに走るしかない。それがあの異様な進化形態を生み、その進化がハマりすぎてしまった。


 しかし、その急成長は様々な歪みを生む。

 そして、その歪みが目立ちすぎる。

 案外、オレが手を出さなくても、近いうちに他のネイムが自力で何かしらの対抗手段を講じていたかもしれない。


 以上がオレとベーグルが推察した内容だ。


 しかし、あの人型ネイムと大樹ネイムのように、捕食者と非捕食者がコロコロ変わってしまうのは生態系として雑、というか不安定過ぎないか?

 もしかすると、ネイムの存在自体が比較的新しいのかもしれない。


 ということは、作られた生物?

 そして、およそネイム自身の生存戦略が雑な設計を考えると・・・


(作られた生物兵器?!)

 そんな考えが頭をよぎるのだった。



ーー キラービー 完 ーー

お読みいただきありがとうございます。

この後も、同じぐらいの章(中編)の連作という形で続いていきますので、良かったらまたお読みいただければと思います。


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