キラービー:共食い
広場に向かうと様相が様変わりする。
スライム状のネイムはおらず、人形ネイムしかいない。
それ以上に目を引いたのは、広場の端、ちょうど花壇の辺りに大樹がそびえていたことだ。
こんな樹はこちらの公園には無かった。
ということは・・・と考えた所で動きがあった。
1体の人型ネイムが急に激しく動き出す。
ダンスをしているような、いや、それにしては乱雑な動き。
やがて、それが何かを避けている動きだということが分かった。
その人型ネイムは、あちこち逃げ回るように動いた後、花壇にそびえる大樹の方に向って走っていく。
そして刺された。
刺したのは大樹から伸びる蔦のような物。それが触手のように動き、向かってくる人型ネイムの頭部を貫いた。
ネイムはジタバタと振り払おうとするも、まったくそれは抜けない。
やがて徐々に体が半透明になって行き、やがて消えた。
「ヤツら、共食いするのか?!」
「そうする場合もある・・・が、この捕食方法は初めて見た」
ベーグルも驚いているような反応。
「おそらく、公園と言う場所で様々な情報を捕食している内に、それらが混ざり合って独自進化をしたのだろう。問題は、あの誘因方法なのだが・・・」
と、ベーグルが分析している最中にそれが判明する。
「痛っ!」
今日何度も体感しているこの感覚。
腕に何かが止まっている。
黒く小さいが、やはり蜂だ。
そして、気が付けば周りに大量のそれれが、雲のようにオレを囲んでいる。
「そういうことか」
オレは納得した。
なんとかその蜂の雲を突破しようと見渡すと、唯一の雲の切れ間が大樹に向って空いていたのだ。
「その手に乗るかよ!」
オレは身構える。
向かってくる蜂を数匹パンチで叩き落した。
現実ではこんなことは絶対しにしないが、この状況が感覚を狂わせるのだろう。
しかし、分母となる数が違う。数匹落とした所で蜂たちは先の人型ネイムと違い、怯む様子は全くない。
徐々に周りを囲まれ、視界に入らない背中、脚に被弾が増える。
「もしかして、コイツら毒あったりする?!」
「分からない。ただ、捕食機能は無いようだ。お前の左手と同じで攻撃のみに特化している武器だな」
「じゃあ、刺されても痛いだけで、徐々に食われるってことはないんだな」
「そのようだ。考えてみれば、コイツらで捕食できるなら、わざわざ大樹まで誘導する必要ないからな」
「確かにな。そりゃ明るい材料だ」
わざと軽口を叩くが、状況はかなり悪い。
一つ一つの痛みはたいしたことないというか、もう慣れてきたのだが、いかんせん量が多い。
気力の方が削られていく。
(もうこんだけ刺されてるんだ。いっそ、被弾覚悟で正面突破するか)
オレは少しずつ覚悟を決める。
その時、離れた所にいる人型ネイムが何かをやっているのに気付いた。
襲われている様子では無い。
二人一組で何かをやっている。キャッチボールか?
「なんだ、あれは?」
オレは声を出した。
それだけでベーグルには細部の意図まで伝わった。
「きっと、今、現実の方で公園にいる人間に取り付いているんだ。本来遊びのようなポジティブな心理にはネイムは反応しないが、きっと競ってるうちに熱くなっているのだろう」
なるほどな。
確かにキャッチボールというよりは、もっと激しい何か球技のような動作に見える。
これは・・・そうだ!
「ベーグル!」
オレは、あるイメージを頭に描いて声を出した。
この広場に来る前に数体の人型ネイムを捕食している。
その情報を利用して、何か武器が作れるかもしれない。そういうイメージだ。
「承知!」
ベーグルが答える。
と、同時にオレの右手にイメージした通りの武器が握られていた。
バドミントンのラケットだ。




