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キラービー:現地調査

 カレー屋を出て公園に向かい、園内の地図で管理事務所の位置を確認した。

 そして、事務所に向かう途中で、ふと思う。


(なんでオレ、こんなことしてるんだろう?)


 ただ、これを考え過ぎると行動が鈍るので、理由は後で考えることにした。


「行動力あるね」

「度胸あるね」

 気が付けば、そんなことを言われることが増えた。

 しかし、オレの行動力や度胸は諦めから来ている。


 やらなきゃ進まない、自分がやらなきゃ誰もやらない、誰も教えてくれない、そういう環境から形成されたもの。

 そのせいで様々な試行をせざるを得ず、その経験がまた行動力や度胸に繋がってるのも皮肉なもんだ。


 じゃあ、あのクソみたいな前の職場や、それを増長させたネイムには感謝すべきなのだろうか?

 ネイムの駆除は大きなお世話?


 いや、それは運良く乗り越えたからこそ言えることだろう。

 やっぱり・・・いや、これは『後で考える』と自分で決めたばかりだ。

 ここらで本当に思考を区切ろう。


「すみませ〜ん」

 オレは管理事務所の窓口に向かうと、退路を断つように声をかけた。


「はい」

 白髪で細身な男性が応対に来た。公園の名前が入った緑のジャンパーを着ている。

「そこの花壇の周りで蜂に刺されまして」

「立札してたのに」

 白髪の男は話を遮るように言った。要件を話す前から露骨に『自分は悪くない』というバリアを張ってくる態度。


「いや、中には入って無いですよ。ロープの外2mぐらいで刺されました」

 オレは少しムッとして答える。

「はぁ・・・何か刺激するようなことしたんじゃ」

「歩いて通り過ぎただけですよ。というか、別にクレームじゃないですから」

「ああ、そうですか。情報提供ありがとうございます」

 と、老人は会釈程度に頭を下げ、戻ろうとする。


「いや、そうじゃなくて!」

 オレは呼び止める。

「なんでしょう」

 明らかに面倒くさそうな老人。

「あそこにいる蜂、何蜂か分かります?応急処置はしたんですが、必要なら病院に行こうかと思いまして」

「ミツバチだと思いますよ。アシナガ蜂やスズメ蜂の巣があれば、場所を見て駆除依頼してますから」

「ニホンミツバチかセイヨウミツバチかは分かります?」

「いや、そんな難しいこと言われても、学者じゃないんでね。ワタシらもボランティアでやってるだけだから」

 老人は呆れたような態度を取る。面倒なヤツに捕まったなぁと言わんばかり。


「採取した標本とかって無いですかね?あれば自分で調べますが」

「いや、分からないね。ミツバチですよ。アシナガ蜂やスズメ蜂の巣があれば駆除してますから。巣を見つけてくれたら対応検討しますがね」

 老人特有の、繰り返しの説明になって来た。もう、たいした情報は出ないと判断し、適当に礼を言って管理事務所を出た。


 その足で広場に向かう。

 慎重に蜂注意のあるエリアを確認して回った。

 危険エリアを見つけては、管理事務所から頂いて来たパンフレットの地図に印を付けていくと、あることに気が付いた。


 蜂の危険エリアは、広場の一角に集中している。

 アナログ時計で言えば10時から2時位の範囲に有り、オレが刺された花壇は12時の位置にあった。


 逆に、それ以外の場所は平穏で、野球の練習をやっている小学生のグループもいる。


(そう言えば『ボール遊びが危ない』って言ってたな)

 カレー屋での主婦達の言葉を思い出し、その近くまでオレは歩いて行った。


 野球をしていたのは、おそらく小学生の3人。4年生ぐらいだろうか。

 オレは近くのベンチに座り、携帯をいじっているフリをしながら、しばらく様子を眺めていた。


 1人はバッター、1人はピッチャー、1人は守備という形で、ワンアウト交代でやっているようだ。


 打者が一巡するまで眺めると、オレはベンチを立った。

 何か話しかけようにも、特に言うことがない。

 道具はプラスチックのバットに、柔らかいゴムボール。通行者がいれば適宜中断している。

 立場によって見解の違いはあるのだろうが、かつて少年だった身としては、これを「危険だ」と注意する気にはなれない。


 まぁ、他に危険な遊びをする連中がいるのかもしれない。今日の所はこれで退散するかと思い、去り際に再度広場全体を見渡す。


 オレは数秒フリーズした。


 しかし、意を決してUターンした。


 例の花壇に、やはり小学生ぐらいの女の子が近付いて行くのが見えたからだ。


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