キラービー:疑念
人間が関与しているのであれば、先の小川ネイムのような存在がいる可能性がある。それをベーグルに捕食させれば蜂はおとなしくなるかもしれない。
「同意 改善 可能性 ある」
というのがベーグルの答え。
ならば行ってみるか。新しい拠点での体力作りに利用しようと考えていた公園があんなんじゃ、物騒で不便だ。
「潜入 今 ダメ」
すぐにでも部屋を出ようとするオレを、ベーグルは止める。
さすがに性急で準備不足なのを窘められたかな?と思ったら、別の理由だった。
前回同様、異界の潜入にはエネルギーが必要で、かつ、数秒かかる。
だから、前回と同じ方法でやろうとするとコーラに蜂が寄ってくる可能性があるとのこと。
「確かにな。人目もあるし、じゃあ、また夜にするか」
オレはネット情報を検索し、ミツバチは夜は巣に戻ることを確認した。
そしてふと思いついたことを聞いてみる。
「そう言えば、ベーグルはまだコーラ必要なのか?ネイムの『情報』って、お前にとって食い物なんじゃないの?」
「こっちの世界 居る時 必要」
というのがベーグルの答え。
あちらの世界では、あちらの材料(情報)で体を作り、エネルギーの変換しているが、こちらの世界で活動するにはこちらの材料が必要とのこと。
そして、こちらの世界では、こちらの生命体同様炭素ベースの身体なのだとか。
最低限の生命?維持は空気中の二酸化炭素吸収で出来るが、大きな活動には炭素ベースの燃料補給が必要で、その際には高カロリーの液体から接収する作りらしい。
というのも、ベーグルには消化器系といった器官は無く、生物で言えば細胞それぞれが直接栄養を摂取するような作りで、この世界の固体は消化吸収出来ないんだとか。
本来の作りは果実等から摂取するような設計なのだが、高カロリーかつ、二酸化炭素も放出するコーラは最適な物質らしい。
まとめるとこんな感じなのだが、この情報を整理し、理解するまでに1時間程かかった。
だが、それでいい。
というか、今話しておいて良かった。
直接話していたら、咄嗟に沸いたオレの疑念も読み取られていただろうから。
やっぱり、コイツ、古代人の道具というのは嘘なんじゃないか?
聞けば聞くほど向こうがホームで、こっちの世界に合わせる為に工夫している感がある。ベーグルは異界出身なんじゃないか?と思えてくる。
じゃあ、何のためにそれを隠す?
コイツの存在自体が突拍子もないので、別に古代人だろうが異界人だろうが、どっちでもいいのだが、隠し事をされていること自体に疑念がわく。
「なるほどね・・・おっと、だいぶ話が逸れたな」
オレは一旦区切りを付けるように言った。
「空腹 か?」
ベーグルが聞いてきた。
危ない危ない。やはり読まれている。
実際、オレは声に出す前にカレーのことを考えていた。
ベーグルは言葉そのものじゃなく、発声している時の思考を読んでいる。だから雑念もまとめて読まれることがあるので、先の疑念を消す為に一旦カレーを食べるイメージをしたのだ。
これは、ひそかに色々試してみたのだが、オレは食べ物のことを考えるのが一番イメージしやすく、思考を切り替えやすい。だからベーグルと会話する時は、意識してそうするようにしている。
「夜までまだ時間もあるし、視察がてら、ちょっとメシでも食いに行こう」
オレはなるべく、軽い感じで声を出す。
「承知」
とベーグル。
「ほとんど何も無い所だけど、公園近くに一軒だけカレー屋を見つけたんだ」
オレは椅子を立って手早く支度した。
腹が減っていること自体は本当だから。




