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妄想の歌姫を紹介しろと迫られても困る  作者: kawauso2017
第1部

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第23話 檜山デビューする?

 香坂翠は焦っていた。



  ◇



 目の前で立ち上がり。


 こちらを見てくる男性。


 東都ミュージック。


 プロデューサー、三上。


 聞かれることには。


 なんとなく予想が付いた。


 檜山をプロデュースするために。


 楽曲の提供が欲しいと。


 おそらく間違いない。


 俺の勘では。


 十中八九。


 そうだろうと想像できていた。


「それで、こちらの曲なのですが・・・」


「お断りします」


「いえ、まだお話は何も・・・」


「提供や紹介でしたら、お断りいたします」


「いえ、せめて会わせていただけないかと」


「すみません。これ以上はマズいと思うんですよ。まずは十分、本人と今後について計画なさった方がいいのではないかと」


「ですから、一度会わせていただいて、ご挨拶をしたいのですが・・・」


「・・・・・・」


 ふと。


 疑問に思い。


 ステージを見る。


 なんだか。


 次の準備をしているようだが・・・。


「既に、二曲目を準備されているようですが?」


「え?」


 三上さんも。


 ステージを見る。


「もう新曲を? デビュー予定の方なのですか?」


「・・・・・・」


 ん?


 その時。


 突然。


 ステージ脇から声が飛んできた。


「三上プロデューサー! 次、一緒にやりませんかー?」


「茜君?」


「・・・・・・」


 あの女性。


 茜というのか。


「おい、翠も一緒にどうだ?」


 今度は。


 檜山さん。


「檜山さん、私はそんなつもりないのですが・・・」


「まあまあ、堅いことはなしで」


 楽しそうに。


 檜山さんが手を振る。


「準備も終わったし、開店までもう少し時間があるからさ!」


「・・・・・・」


 やがて。


 店内に音楽が流れ始めた。


 聞き覚えが。


 あるような。


 ないような。


「アオ?」


 小声で呼びかける。


『はい。以前作成したオリジナルです』


「・・・・・・」


 俺は。


 さらに声を落とした。


「お前、前に何もしてないって言ってなかったか?」


『はい。あの時は何もしておりません』


「じゃあ、どうやった・・・」


『正確には、何もしておりません』


「・・・・・・」


『引っ越す前に借りていた部屋へ置き忘れた、最初に作ったオリジナル作品です』


「・・・・・・・・・・」


『歌詞を付けていない物は別の棚に保管されていましたので、そのままとなっていました』


「・・・・・・」


『部屋の確認を命じられませんでしたので、見過ごしてしまいました』


「オイ!!」


 思わず。


 声が大きくなる。


「何曲だ!! 何本忘れた!」


「????」


 三上さんが。


 不思議そうな顔でこちらを見る。


「香坂君?」


「あっ・・・」


 しまった。


「いえ、何でも・・・」


「おーい!」


 檜山さんの声。


「始まっちまうぞー!」


 ステージを見る。


「歌詞はそこにカンペ流れるようにしたから、一緒にやろうや! 練習だ練習!」


「・・・・・・」


 そして。


 歌い出す檜山。


 喜ぶ茜。


 いや。


 喜ぶどころではない。


 驚喜している。


 既に。


 茜はマイクを握って。


 檜山さんと一緒に歌っていた。


「・・・・・・」


 俺は。


 呆然とステージを見る。


「これって、デュエットだったのか・・・」


 隣を見る。


 三上さんも。


 呆然としていた。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


 暫くして。


 曲が終わる。


 茜が。


 満面の笑顔で檜山さんを見る。


「檜山さん、さすがです!」


 かなり嬉しそうだ。


「やっぱりこの歌詞、とてもいいです! 頑張った甲斐がありました!」


「おうよ!」


 檜山さんも。


 ご機嫌だった。


「よくメロディに合わせて作ってくれたな! 歌いやすかったぜ」


「・・・・・・・・・・」


 俺は。


 ゆっくりと三上さんを見る。


「既に、企画が進んでいるようで・・・」


 一応。


 頭を下げる。


「お慶び申し上げます」


「・・・・・・」


 三上さん。


 拍手。


 ぱち。


 ぱち。


 ぱち。


 だが。


 かなり鋭い目つきで。


 ステージを見ている。


 いや。


 あれは。


 睨んでいるのだろうか・・・。


 やがて。


 三上さんが。


 再びこちらを振り返った。


 そこには、とても鋭い視線があった。

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