第22話 始まるワンマンショー
店長の声で我に返った。あの素早さは何だったのだろう。
二人は、急いで店へ入る。
すると。
何故か。
店長はステージにいた。
「・・・・・・」
そして。
その前。
いつもの場所に。
あの女性が陣取っている。
気がつかなかったが。
さっきのスーツ姿の女性だった。
「・・・・・・」
見覚えのある風景だった。
というか。
最近。
ほぼ毎日見ている。
やがて。
店内にメロディが流れ始める。
そして。
店長が歌い出した。
「・・・・・・」
なんだこれ。
俺たち。
ショーを見せられるの?
ちらりと。
三上さんを見る。
同じように。
ステージを見ている。
「・・・・・・」
いや。
待て。
三上さんは。
これを見せたかった?
いつから契約を?
どこまで話が進んでる?
そもそも。
あの女性は。
何者だ?
「・・・・・・」
困惑する俺。
いや。
困惑どころではない。
俺の知らないところで。
何かが。
勝手に進んでいる。
◇
檜山は。
歌い切った。
最後の音が店内に消えていく。
本人は。
とても満足そうな顔をしていた。
「・・・・・・」
そして。
ステージの前に陣取っていた女性も。
満面の笑顔で。
こちらを振り返った。
「三上ディレクター、どうです?」
嬉しそうに。
目を輝かせる。
「期待通りでしょ?」
「・・・・・・」
無邪気だ。
実に。
無邪気な満面の笑顔だった。
隣を見る。
三上さん。
「・・・・・・」
何故だろう。
まるで。
苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「ん??」
ますます。
状況が分からない。
なにこれ・・・。
『檜山新曲披露会かと思われます』
アオが。
何でもないことのように告げてきた。
いや。
違うと思うのだが・・・。
アオを無視する。
というか。
今はそれどころではない。
突然。
三上さんが立ち上がった。
「・・・・・・」
そして。
拍手。
ぱち。
ぱち。
ぱち。
最初は。
妙にぎこちなかった。
だが。
次第に。
やけに大きくなる。
何というか。
ヤケになっているようにしか見えない。
「いや、素晴らしい!」
三上さんは。
そのまま拍手を続けた。
「とてもいい曲です!」
そして。
何故か。
深く一礼。
「ありがとうございました」
「・・・・・・」
やっぱり。
なんだこれ・・・。
ますます困惑する俺。
三上さんは。
完全に。
ヤケになっているように見えた。
だが。
次の瞬間。
三上さんの顔から。
わずかに表情が消えた。
仕事の顔。
そんな感じがした。
「香坂さん」
「はい?」
「聞き覚え、ありますよね?」
「・・・・・・」
三上さんは。
ステージの方へ一度視線を向ける。
「今の曲もそうですが……」
そして。
あの女性を見る。
「茜君、先程のテープを!」
「はい!」
女性が。
嬉しそうに答える。
今度は。
さっきまでとは違うテープが再生機へ入れられた。
やがて。
違う曲が流れ出す。
イントロ。
「・・・・・・」
三上さんが。
こちらを見る。
「この曲調」
一拍。
「こちらも、あなたからではありませんか?」
「・・・・・・」
だが。
俺は。
三上さんの言葉を。
半分ほどしか聞いていなかった。
流れている曲。
それは。
Apricotの曲だった。
「・・・・・・」
かつて。
俺が好きだった曲。
アオに編曲させ。
合成した曲。
未来で。
何度も聞いた。
あの曲。
この時代では。
まだ存在していないはずの曲。
それなのに。
店の中で。
当たり前のように流れている。
「・・・・・・」
なんだか。
懐かしく思えた。
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