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救出任務

本隊が空母へ戻ったとき、飛行甲板には一機分の空白が残った。


着艦した四機から燃料と弾薬が抜かれる。

だが、本隊隊長は飛行服を脱がず、デブリーフィングが終わると艦長室へ向かった。


扉の前で一度呼吸を整え、ノックする。


「本隊隊長、入ります」


艦長はハーゼンの着水位置を記した海図へ目を落としていた。

副長のミレアと、救難飛行艇の運用表も広げている。


「報告書なら、先ほど受け取った」

「報告ではありません。

お願いに来ました」


隊長は机の前で姿勢を正した。


「ハーゼン少尉の救出を許可してください」


艦長はすぐには答えなかった。


救難飛行艇を出せば、着水と収容の間は無防備になる。

護衛をつければ、帰投直後の航空隊をもう一度飛ばすことになる。

北東には、一番槍を含むゼア機がいる。


「発信機は」

「弱いですが、まだ受信しています。

日没まで一時間四十分。

いま出れば間に合います」

「敵編隊が戻る可能性は」

「あります」


隊長は危険を小さく見せようとしなかった。


「それでも、あいつは私の命令で先行しました。

発見を報告し、離脱命令にも従った。

被弾したのは、私たちと合流する直前です」


握った拳が震えている。


「置いてきた責任は私にあります。

救出隊の指揮も私に取らせてください」


艦長は海図から顔を上げた。


「責任の所在は帰ってから決める」


隊長の表情が固まる。


「いま決めるのは、誰を飛ばせば連れて帰れるかだ。

格納庫へ戻れ。

十分後にブリーフィングを始める」


隊長は一拍遅れて敬礼した。


「了解しました」


格納庫の作戦卓には、救難飛行艇の搭乗員と護衛隊が集められた。


海図上の着水地点を中心に、風と海流から三つの捜索区画が引かれている。

ハーゼンの発信機は断続的で、波に隠れるたび方位がずれた。


「救難飛行艇が低空で捜索し、本隊四機が上空を護衛する」


艦長が指示棒で区画を示した。


「最優先はハーゼン少尉の発見と収容。

敵機を認めても、救難飛行艇から引き離す以上の追撃はするな」


本隊隊長が尋ねる。


「一番槍が救難空域に残っていた場合は」

「所属と救難任務を通告する。

向こうが交戦を控えるなら、こちらも撃たない」

「応じなければ」

「飛行艇を逃がせ。

護衛隊はそのためにいる」


飛行艇の機長が、残照の時刻を確認した。


「波が高くなっています。

着水は一度だけです。

見失えば、暗くなる前の再進入はできません」

「一度で見つける」


本隊隊長が言った。


艦長は全員を見回した。


「これは戦果を得る任務ではない。

一人を帰すための任務だ。

救出開始」


格納庫の扉が開き、傾いた夕日が機体へ差し込んだ。


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