レアメタルとゼア
俺がミサイルの内部を見るのは、これが初めてだった。
士官学校の兵器概論で、切断模型を見たことはある。
実戦に持ち込む実物を作戦卓の上で開くことになるとは、当時は考えもしなかった。
アーロン少佐が白槍の誘導部を示す。
そこには少量ずつ、何種類もの希少金属が使われていた。
耐熱部品、磁気センサー、レーダー素子、精密な制御器。
機体一機に必要な量はわずかでも、航空隊、観測所、通信網のすべてへ積み重ねれば巨大な需要になる。
「ゼアの航空技術は、機体材料より制御装置で希少金属を消費します」
アーロン少佐の説明へ、俺は知っている言葉を重ねた。
「いわゆる精密機器だ。
化合物半導体、電極、耐熱合金にも必要になる。
代用品へ替えれば、探知距離か耐久性か、どこかを諦めることになる」
「精密機器、ですか」
白槍へ向いていたアーロン少佐の目が、俺へ移った。
「なるほど。
センサーも制御器も、精度を支える機器として一つに括るわけですね。
便利な呼び方です」
その声音には、納得より先を知りたがる響きがあった。
俺は、自分が口にした言葉を頭の中で辿った。
精密機器という括り方は、この世界でも通じる。
だが、個別に発達した部品を同じ概念で結び、化合物半導体まで一息に並べる話し方が、どこまで自然なのかは確かめていない。
前世の固有名詞は出していない。
まだこの世界に存在しない技術も口にしていない。
そう確認してから、俺は小さく頷いた。
アーロン少佐の前では、知っていることをそのまま話すだけでも気をつける必要がありそうだった。
アーロン少佐は部品を戻した。
「メガフロートを止めても、明日の戦闘機が墜ちるわけではありません。
狙うのは軍需生産です。
原料を断ち、交換用レーダーや誘導弾を作れなくする。
ゼアの工業能力を、時間をかけて削ります」
資料によれば、海底鉱脈はゼア沿岸からレイ第1領の地下へ続く巨大な地質帯の一部だった。
第1領で鉱床が発見されるまで、ゼアはこの海域の採掘に大きな関心を示していなかった。
だが、かつて割譲した土地の地下に莫大な資源があると分かると、海側から同じ鉱脈へ届く技術へ国家予算を投じた。
その成果がメガフロートだった。
表向きには、ゼア領海内で完結する合法的な資源開発である。
レイ側は、傾斜掘削によって第1領側の鉱床まで抜き取っていると主張した。
ゼアは否定し、施設の詳細な坑道図を軍事機密に指定した。
「つまり、資源施設を壊すだけじゃないんですね」
ハーゼンが言った。
「採掘量が分かれば、ゼアの兵器生産量も推定できる。
地下坑道の方向が分かれば、レイの主張も確かめられる」
「そのとおりです」とアーロン少佐が答えた。
スペクトルは採掘施設を止めに行く。
同時に、ゼアとレイのどちらが嘘をついているのか、爆撃の照準器越しに確かめに行くのだった。




