メガフロート攻略任務
メガフロートは、ゼア本土から百二十キロ離れた大陸棚に係留されていた。
メガフロート、すなわち超大型浮体式構造物。
それは一見軍艦と見間違えるが明確に巨大だった。
――一つの「学園都市」を内包していると言われても納得できるぐらいには。
ゼア――正式名称、ゼア学園都市合衆国。
太平洋北東部のゼア大陸を統一する連邦国家である。
国名にある「学園都市」は、単なる教育都市ではない。
教育、研究、行政、産業、軍事を一体化した自治単位であり、一つの学園都市が一つの州に相当する。
主要な学園都市は、航空、航海、通信、金属、気象、宇宙開発など、それぞれ異なる専門分野を担う。
優秀な学生が国家計画へ加わることも珍しくなく、研究者、技術者、軍人の境界は他国ほど明確ではなかった。
長い鎖国を終えて国際社会へ姿を現したゼアは、航空機、通信機器、動力機関、兵器工学によって他国を驚かせた。
より遠くから、より正確に、味方の損害を減らして敵を無力化する。
それがゼア技術の掲げる合理的な理想であり、今やエスティマが戦う敵国の姿でもあった。
公開資料では、海底鉱床を採掘する民間施設となっている。
だが周囲には軍用レーダーが置かれ、補給船へゼア海軍の護衛艦がついていた。
飛行甲板として使える平面と、航空燃料らしい貯蔵区画も確認されている。
「任務目的は、採掘設備の停止と防空能力の確認だ」
艦長が目標図を切り替えた。
「戦闘中隊は先行して上空を確保。
実験飛行中隊は精錬区画と送電設備を攻撃する。
居住区、救命艇、海中へ延びる作業員退避路は攻撃禁止。
救出部隊は本艦と目標の中間で待機する」
艦長は航空隊の配置を重ねた。
「先日遭遇した一番槍と、その所属編隊にも警戒を怠るな。
姿が見えないからといって、メガフロートの防衛から外れたとは限らない」
ハーゼンは図面の端を見た。
施設中央に大きな空白がある。
採掘船なら、選鉱機か資材庫の位置だ。
施設側はそこを非公開区画として塗り潰していた。
「この空白は確認できているんですか」
「できていない。
だから実験飛行中隊が撮影する」
別の飛行士が手を挙げた。
「採掘設備を壊すことが、ゼアへの戦略攻撃になる理由は何でしょうか」
石油なら艦艇と航空機が止まる。
食料なら軍と都市が飢える。
だが目標が採っているのは、地図に小さく「希少金属」とだけ記された鉱石だった。
「機体を作る金属なら、鉄やアルミニウムでも足りるはずです」
実験飛行中隊の技術士官、アーロン・ルクバル少佐が、机の上へ白槍の誘導部を置いた。
「外板だけでしたら、そのとおりです」
円筒形の装置を開くと、内部には細い配線と小さな素子が詰まっていた。
「ですが、ここから先は私たちの担当です」




