008【おかしな森】
〖神暦・3240年 4月6日〗
日記の筆者『テオ』
場所「遺跡」
コツコツ。
階段を下がる音があたりに響き渡る。
「ここも暗いね。」
イズが言った。
「そうだね真っ暗だ…というか、どうしよう。」
僕はそう言いながらあたりを見渡した。
見渡しても、魔法でつけた光が照らす。
と言っても、イズしか見えないのだが…
「どしたの?」
イズが振り向いた。
「いやぁ、実はね、この階段、下がっても下がっても、上の方に転送されてしまう魔法がかかっているらしいんだよ。いわば無限ループ。」
僕も一応魔法使いなので、イズよりは上手くないが魔力探知が使える。
しかし、こんな簡単なことにイズが気付いていないはずがない。
「え、そうなの⁈」
気が付いていませんでした。
しかし、この魔法を解くことは、僕には出来ない。
「ちょっと待ってね…[干渉魔法: 術式変更]!」
イズがそう言うと、イズを取り囲むように四つの魔法陣が出現した。
[干渉魔法: 術式変更]
他人の設置型魔法の術式を書き換える魔法だ。
設置型魔法のみに干渉可能なので、攻撃魔法には通用しない。(大掛かりな設置型攻撃魔法などには、通用可能。)
「出来たよ。」
イズが、自分の周りの魔法陣を消した。
と、同時に周りがぱぁっと明るくなった。
「すごい。」
イズの魔法に驚いていると、ふと周りがガラス張りなのが見えた。
「え、すご。森だ。」
そのガラスの奥には広大な、広大な、森が広がっていた。
「ホントだー!森だ。 …ここって本当にあの遺跡の中なんだよね…?」
イズが双眼鏡を魔法で取り出し、遠くを眺める。
「あ。なんか、家があるよ!」
イズが遠くを指さした。
…本当だ。
よく見ると遠くに五、六軒ほど、家がある。
「なんだろうね。行ってみる?」
イズに尋ねた。
「もちろん!」
即答。寄り道する時間はあるのか?
…まぁ、何か面白そうだから行ってみるか。
…否。
無理だ、時間的に。
「やっぱりさ…」
僕が言いかけた所で、イズが僕の肩を突付いた。
「もうちょっとで階段、終わりだよ。」
イズが下を指さした。
あと10段ほどで階段が終わる。
「「よっしゃ、着いた!」」
二人で声を合わせた。
目の前に、ガラス張りの扉がある。
《ピロン♫ 生命体を二つ確認しました。解析します。》
どこからともなく声が響いた。
何というか、無機質な冷たい声だ。
すると、ピーという音とともに、イズと僕の体に、赤い光が当てられた。
《ピロン♫ 敵意はないと判断。通行を承諾します。》
その声がそう告げると、その扉は開いた。
「何だろう。」
イズが呟いた。
まぁ、古代の防衛機能と言ったところだろう。
そこまで真剣に考えはしなくていいと思う。
「じゃ、行ってみるか。」
家があった方へと歩き出した。
数分後
「というか、ここ、砦の中なんだよな…」
そう言いながら、僕は木々の生えた、辺りを見回す。
忘れていたが、ここはれっきとした砦の中なのだ。
砦というから、なんかこう、ガチガチしたイメージだったが、実際に来てみたら自然公園のような場所だった。
「さっき川もあったよ。」
イズが後ろの方を向いた。
耳を澄ますと、確かに水の音が聞こえる。
「魚もいたよ。」
イズが呟いた。
あ、
ここに、食料になるもの(魚とか野菜とか)があるじゃないか!
今朝の努力は一体…
アァァァ(テオが絶望する音)
そんなことを思い、落ち込んでいると辺りが急に薄暗くなった。
「な?」
僕は剣に手を添え、辺りを警戒する。
「あ、夜になったのよ。」
イズが空を見上げた。
イズの視線を追い、空を見上げる。
すると、そこには白銀の星々が散りばめられた、暗く美しい空があった。
なかなかお目にかかれない圧巻の星空だ。
「ふぅ。じゃあテントを張るよ。」
ため息をつき、リュックを下した。
「ここ、木ばっかりだから、もうちょっと開けた場所にしようよぅ。」
イズが言い、空高く飛び上がり辺りを見回し始めた。
「イズ、大丈夫だよ。魔法で木を切るから。[円形水斬]!」
イズが反応する時間もなく、僕の周りに10本ほどの、水でできた剣が現れた。
そして、僕は指をパチンと鳴らした。
ドカン!
大きな音とともに、周りの木々が吹き飛んだ。
「ああ、忘れてた。なんか先日、そんな魔法開発していたわね。」
イズが降りてきた。
「開け!」
僕は地面に置いたリュックに向かって叫んだ。
う~ん…前から思っていたのだが、このリュックはどうしてテントになるんだろう。
当たり前のようにこの機能を使っていたがそもそもこのリュック、どこで手に入れたんだっけ…
「お腹すいたー」
イズが僕の肩を叩いた。
「は~い」
言葉を返す。
ま、べつにリュックのことは後で考えよう。
まずはギルマスのお使いだ。
僕はそんなことを思いながら、テントに入り、晩ご飯の用意を始めた。
「イズ~[作り置き召喚]して~」
別に川はあるので魚を釣ればいい話なのだが、面倒くさい。
「は~い[作り置き召喚]~」
イズが目の前に魚を二つ出現させた。
「味付けは塩にする?」
僕はテントに付いている小さな棚から塩を取り出した。
「い~よ。…塩以外の調味料ってここにある?」
イズが棚を開けて中を見渡す。
「ないじゃん。じゃぁ、『塩にする?』じゃなくて『塩でいい?』じゃない?」
なんかイズが言っているが、気にしないでおく。
そして、魚に塩を振りそれぞれお皿にのせた。
「「いただきます。」」
手を合わせから、二人で食べ始めた。
「イズ、野菜ってある?」
「うん。[作り置き召喚]!…はい。」
「ありがとう。あ、イズも野菜食べなさい。」
「うぐっ…わ、私は大丈夫なのよ。」
「大丈夫じゃない。食べなさい。」
「はぁい…」
そんな他愛ない話をしながら、ご飯を食べた。
約三分後
「「ごちそうさまでした。」」
二人で手を声を合わせ、ご飯を食べ終えた。
「じゃあ寝るね。」
と、だけイズに伝えてテントの奥の、魔法空間へ瞬間移動した。
…瞬間移動した先は五畳くらいの魔法空間…僕の自室だ。ちなみにこの空間もこのリュックを手に入れた時からある。
家具はソファーと、机、それからあの扉の奥はお風呂なのだ。
けれど、お風呂はイズがくれた魔法、[お風呂省略]で済ませているので、あの部屋はあまり使わない。
そして、実は保護した精霊がいる。
イズに見せたら、『精霊はちょっと…』と、拒否したので、僕の部屋で預かっている。
あいつはどこだ…
「おい!テオ!メシよこせ!」
あ、いた。机の上で寝っ転がっている。
見た目は白猫で、口が悪い氷の上位精霊。
「口が悪いな。」
一、二ヵ月前、道路の上で怪我をしていたのを助けたのだ。
「いいからメシ!」
「まだご飯は食べれない。薬ね、」
「コロス!」
彼が叫んだと同時に、無数の氷の矢が僕を狙うように出現した。
「無理だよ。」
僕は周りの矢を全て水に変換して、蒸発させた。
「君はまだ、魔力が完全には回復していないからね。完全に回復していれば僕に勝てるかもね。」
僕は彼を鼻で笑い、薬の準備をした。
「クソがーーーーー」
そう、それと、今、発狂しているこいつの名前はフィル。
「はい。」
僕はそいつに薬の乗ったスプーンを差し出す。
「うぇーぺっぺ」
フィルは嫌がっているけれど、怪我をしているので仕方がない。
この薬は栄養剤。
彼は、胃が傷ついているので、固形のものが消化できないのだ。
じゃあ流動食を食わせればいいって?
そんなシャレたものは持ってないよーーーー!
あああああああああああああああああああああああああ
(テオが今までのストレスの余りに、発狂する声)
バタン、キュー
こうして長い一日が終わった。
「…おい!テオ!生きてるか?…死んだか」




