009【テオが倒れていた件について】
〖神暦・3240年 4月7日〗
日記の筆者『イズ』
場所「遺跡」
《今、私達は遺跡の中にいる。
なんか、見つけた家のような建造物に興味本位で向かっているが、あれは安全なのだろうか。》
「おはよー」
私はあくびをしながらベッドから起きる。
ちなみにだが、私には魔法空間の自室がない。
が、代わりに戸棚の中に小さな部屋がある。
私は身長20cm。部屋は小さくても快適だ。(実は魔法で少し拡張している。)
……
あれ?
返事が返ってこない。
いつもなら『朝ごはん、できてるよ』とか、『遅いな』とか、テオが返事をするはずなのだが…
「テオ?」
目をこすり、あたりを見回す。
「あれ?」
テオが、居ない。
え、テオ、生きているよね…
そんなことを思いながら、とりあえずテオの自室に向かう。
瞬間移動でテオの部屋に入ると、テオが泡を吹いて倒れていた。
…そして、倒れたテオの頭を白猫がペチペチしている。
「うっ。フィル…。嫌な奴にあってしまった。」
こいつは嫌いだ。
「あー! ちっこい、妖精風情野郎!お前なんで、ここにいるんだ?」
いつも、こう言う事を言ってくる。
いや、まぁ私が小さいのは認めるが『妖精風情野郎』は気に食わない。
妖精族は、元々は神の側近…天使だった。
が、大昔に精霊にその座を奪われ、堕天した姿が妖精なのだ。
堕天した後、闇落ちした姿が『悪魔』で、堕天したあとも、めげずに頑張ったのが妖精という事である。
まぁ、悪魔とは言っても、闇落ちしたのは原初だけなので、その子孫にあたる者たちとは、今は仲良く共存している。
しかし!
精霊は許すまじ!
私のご先祖様から天使の座を奪った奴が、『妖精風情野郎』とか言う資格はない!
そして、精霊は、死んだ瞬間に新たな体(憑依する対象)が構築され、記憶と能力が完全に新たな体に引き継がれる。
今、私の目の前にいるフィルとかいうやつの記憶と思考回路は、数万年前から、ずっと変わっていない。
う~んまぁだから、こいつは祖先から天使の座を奪った張本人というわけだ。
「あんたに言われる筋合いないわよ!クソ精霊。」
まだまだ、言いたい事がある。
人間が祈るとき『神様』と言うのは分かるが、『精霊の加護があらんことを』って言うのは何故だ!
せめて神だろ。
なんで精霊なんだよ。
おばあちゃんが『わしのばあちゃんのばあちゃんが天使だった頃…「天使さま~」って言ってくれた人、おらんかったって言ってたのに…精霊はズルい…』って泣いてたよ。
「はぁ?堕ちた天使が喋んな。」
「堕ちたのは、私の祖先であって、私ではない!ってか、お前らに墜とされたんだよ!」
私たちが言い争いをしていると、テオがむくっと起き上がった。
「う、うぅ、おはよう…」
頭を抱え、ゆっくりと立ち上がる。
「あ、お前生きてたのか。」
「生きてるよ。」
「ってか、メシ!」
「薬ね。」
「コロス!」
「毎日このオチ、やめてくれないかな…」
テオが、起きたばかりなのに、この精霊に殺されかけている(?)可哀想に…
というか、この精霊の近くにいるのは居心地が悪い。
「お邪魔しました~」
テオの安否も確認できたことだし、さっさと自室へ帰るとする。
「え!イズ、いたの?」
いたわよ。
「うん。まぁ帰るね。」
私はテオの自室を後にした。
朝ご飯は[作り置き召喚]があるので問題ない。
そして、私は、自室に戻り朝ごはんを食べた。
精霊って寿命どれくらいだろう…
そういえば、あいつら死んだら天界に行き、そこで死んだら地上にくるっていう性質持っていたな…
天界。
正式名称は『精神次元空間』。
人間は天国と呼び、雲の上のどこかにあると信じているらしい。
私は、一度だけ行った事があるのだが、別に雲の上にあるわけでも、虹のふもとにあるわけでもない。
正確には何処にも存在しない。
いや、訂正しよう。
この次元には存在しない。
天界とは、全く別の次元の世界を指す。
そこには、物理を介したものは存在しない。
有るのは魂と、大量の魔力のみ。
その魔力量は世界を数兆回破壊し、数兆回創造できるほどだ。
数字に換算すれば、1000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000の10000000000000000000000000000000000000000000乗wI。
まぁ、普通に生活していれば、こんな数字とは出会わないだろう。
「ん?」
私の魔力探知に何かが引っ掛かった。
ああ、昨日見た家だ。
正確には家の中にいる人だ。
「こんなところに人がいるなんて…」
うん。行ってみよう!
そして、私はテオがいる部屋へ向かった。
…精霊のことは一回忘れよう。
「テオ!行くわよぅ!」
「え、あうん。どこに?」
「さっき見つけた家よ!」
「…あのさ、この旅の目的覚えてる?」
「もちろん!…何だっけ?」
「ギルマスのお使いだよ。」
「ああ、そうだったわね。」
「あの家は後で行けばいいから、先に進もう!」
「後でっていつ?」
「いやぁ…」
『後で』はないんだな。
まぁいいや家は無視して、目的地へ進むとしよう。




