010【馬鹿であり天才である。】
〖神暦・3240年 4月7日〗
日記の筆者『イズ』
場所「遺跡」
私達はテントをたたみ、歩き出した。
「ねえテオ。今回も中心に向かって歩いてるの?」
テオに尋ねた。
「ちがうよ。真っ直ぐ…2Kmくらい先に、大きな扉があるんだ。そこに向かっている。」
なるほど。
…しかし、なぜテオは2km先に扉があると知っているのだろうか。
飛べるならまだしも、2kmをも先を見ることは人間には出来ないのでは?
「あのさ、なんで2kmも先が見えるの?」
気になったので尋ねてみた。
「ふっふー 実はね、昨日眠っている間に魔法の統合が完了したんだ~!」
テオが笑顔でジャンプした。めずらしくはしゃいでいる。
「と、言うと?」
「いやぁ 僕の元々持っている魔法、[周辺地形図面化]と[魔力探知]と[座標特定]と[天体観測]と[干渉断絶]を統合して[統合魔法: 冒険家]を手に入れたんだよ!!!! そのおかげで、半径3km以内の地形を、僕は把握することができるようになったんだよ!」
なるほど。
すごいな!
この旅が楽になりそうだ。
あ、それと、[統合魔法]とは何なのか説明する。
一言でいうと、同じ系統の魔法をくっつけたり圧縮したりして造った新たな魔法だ。
色々な魔法を一つの魔法として管理でき、また、魔法同士を協力させることも出来る。
テオので例えると、普通の[周辺地形図面]は半径1kmくらいしか見ることができないが[魔力探知]でその力を倍増させている。…といったところだろう。
ちなみに、統合魔法を魂に定着させると[固有魔法]になる。
[固有魔法]は魂が直接管理しているため、その人の潜在能力に干渉し、すごく安定して魔法が使えるのだ。
さらに行くと[固有能力]になり、そのさらに行くと[魔導能力]になり、そのまたさらに行くと[究極権能]になるのだが、まぁおいておこう。
ちなみに私の[生活楽ちん魔法]は固有魔法なのだ。
「よかったじゃん。 ねっ、あとはどういう力があるの?」
私はテオに尋ねた。
「あとはね、敵の動きを記憶して、次に活かすことができるようになったよ。」
テオが答える。
あれ?
敵の動きを記憶する…それは、魔法ではなく能力では?
[統合魔法]はあくまで魔法なので魔法しか扱えないのだが、テオの[統合魔法: 冒険家]は主自身の潜在能力、『記憶』を扱っている事になる。
ということは、テオは気が付いていないだけで[冒険家]は恐らく[統合魔法]ではなくその進化版、[固有魔法]ではないのか?
「テオ。それ、本当に[統合魔法]?」
「え、うん。多分…」
「調べたげる。[鑑定魔法: 力量解析]!」
この魔法は、相手が持つ魔法や力を勝手にのぞく魔法だ。
《解析結果中》
頭の中に文字が響く。
音ではないのだが、はっきりとした文字でもない。
『解析中』という意味を持った波動が頭の中に流れ込んでくる感覚だ。
《解析結果 「失敗」》
失敗⁈
え?
言っちゃ悪いが、私はテオより遥かに魔法の扱いに長けている。
そんな私が失敗だと?
「ふっふー 今、鑑定できなかったでしょう? [干渉断絶]で、外部からの内部への攻撃が出来なくなっているんだよね~」
テオが腰に手を当て、自慢げに言った。
…攻撃ではないのだがな。
「いや~にしても凄いわ!私の魔法を遮るなんて。フツーの人間にはそんなことできないわよ?」
…[固有魔法]かどうかの判別は、面倒くさいしまた今度にしよう。
「そんなに凄いの?」
「そんなによ!」
「そんなにかなぁ…」
「凄いって!だって私、昔にテオの数倍強い魔人と戦ったことがあるんだけど、[精神支配]でイチコロだったのよ?けど、私の干渉を拒んでいる時点で、テオはへたな魔人より強いってことなんだってば。」
「そんなにかぁ…」
そういうことだ。テオは元々の魔力量が多いので、まぁ納得できなくもない。
「まぁいいや、さっさと進もう!」
「うん!」
四、五十分後
「「つ、着いた!」」
二人で声を合わせた。
目の前に大きな扉がある。これがテオの言う扉だ。
黒く大きく、植物のような模様が描かれている。
しかし、少し厄介なことが…この扉、封印魔法のようなものが施されていて開かないのだ。
「どうしたもんかね~」
私は頭を抱えて悩む。
「イズ、解析してみてよ!」
「う~ん…わかったわ。やってみる。」
さっきテオに解析妨害をされたので本人に『解析してみてよ。』と言われるのは少し腹が立つが、私の技量不足なのでいいこととする。
「[解析魔法: 詳細解析]~」
…扉の封印術式が頭の中に流れ込んでくる。
「テオ 扉の右下にあるボタンみたいなやつに、魔力を込めて。」
私は右下のボタンを指さす。
「オッケー」
テオが言い、ボタンに触れた。
ドゥン
機械の作動音ような、低い音が響いた。
それと同時に扉に何かの模様…魔法陣が浮かび上がった。
「よーし、じゃぁこの魔法陣を解読すれば…」
「解読…?」
「うん!この魔法陣の術式を読み解いて組みなおせばいいのよ!」
「干渉魔法でできるの?」
テオが魔法陣を指さした。
「それが無理なのよ。」
「じゃぁ、どうやって?」
「魔法じゃ無理だから直接書き換える。」
「直接…?」
この魔法にはテオものと同じ、[干渉断絶]…、それもテオより百倍は強いものがかけられている。
なので、もう物理的に書き換えるしかない。
「テオ!そのリュックに付いている竜の牙、借りるわね!」
そう言って私は、テオのリュックにぶら下げてあるお守りをひったくり、それで扉に直接ガリガリと文字を書き込んでいく。書き込むというよりか、掘っている。
「え、ちょ、それ、じいちゃんの形見のお守りっ…」
「知らんわ。そんなん。」
「え、ぇぇ…」
ガーリガーリ
テオの言葉など無視して私は書き続ける。
「え、と、ここに条件を追加…で、ここの出力をさげて…」
五分後
おおよそ出来た。
あとは、ここの術式を…解除!
私は魔法陣の全てを書き終えた。
「できた!」
私は笑顔で振り向いた。
「……」
顔で分かる。テオが怒っている。
「どしたの……?」
「どしたの?じゃないよーーーっ!!!!」
テオの叫び声が遺跡中に響きわたった。
「あれ結構大事にしてたのに!鉄の扉にガリガリしていたせいで、先っちょ折れてるじゃん!」
「…そんなに大事にしてた?」
「してたよっ!」
「そぉ?けど、そのおかげで扉の封印は解けたよ!」
私は扉を指さす。
「うん…ま、そりゃ、そうかもしんないけど…」
「いこーいこーっ」
胸のワクワクが抑えきれない、この奥に何があるのだろうか、何と会えるだろうか、楽しみー!
先の欠けた竜の牙をリュックに付け直しながら、テオがぶつぶつつぶやいている。
「馬鹿と天才って、紙一重だな………」




