011【仲直りした話】
〖神暦・3240年 4月7日〗
日記の筆者『イズ』
場所「遺跡」
扉を抜けると、広い大広間のような空間につながっていた。
天井はドーム状で、先ほど通った扉以外は、装飾はない。
壁も床も石造りで、その無機質な空間を五、六個の壁に掛けられた松明が照らしている。
「ここってさ…」
バタン!
私の言葉を遮り、大きな音が響いた。
振り向き、背後を確認すると扉が閉まっている。
「え、もしかして閉じ込めたられた?」
何か脱出方法はないかと、私は辺りを見回す。
目に入るのは、壁にもたれかかって先が折れたお守りを見つめるテオだけだ。
「あ、うん。そーなんじゃない…」
力のないテオの声が聞こえた。
「…ごめんね…ホントに…」
「あ、うん。いーよ。全然。『せっかく貰ったものなのに、何壊してんだよ』とも、『イズってそういう所あるよね』とも思ってないよ。うん。全く思ってない。」
絶対思ってるだろ。
ごめんて。
「…なんかいる。」
テオがゆっくりと、前に指をさした。
その指の先をたどると…魔獣のような生き物がいた。
「まって、まって。これ、魔装魔導衛兵よね⁈」
鉄でできたムカデ。
前に倒したのと全く同じ型…いや、少し違うな。
剣を持っていない。
というか、こいつは何だ?なぜいる?
…いや、どこかで聞いたことがある。
旧帝国時代に造られた街や迷宮には、その主要部分を守る魔獣や魔物…いわゆる『ボス』が存在する。
部外者である私達は『ボス』を倒さなければこれより奥へ進めない。
「よし、テオ!やるよ!」
「好きにして。僕はここで見ておく。」
「はぁ?」
ああ忘れていた。
喧嘩中だった。
…にしてもっ。
まぁいい。
一人で、倒せる。
「[雷撃]!」
私は初めに、無数の雷の矢を魔装魔導衛兵に向けて放った。
ドドド
魔装魔導衛兵は、その長細い体をくねらせ、私の放ったすべての矢をよけた。
まぁそうなることは予想できている。
もう少し強い魔法をか…
ドッ
私は魔装魔導衛兵の尻尾にはねられ、壁に叩き付けられた。
…[常時魔法: 表面結界]のお陰でダメージはないものの、かなり痛い。
「じゃ、もうちょっと強めの![集光砲]!」
私の手のひらから、青白い光の線が放たれる。
これは光を一点に集め、熱エネルギーを発生させる魔法だ。
ビッ
よし。
当たった!
一撃必殺ではないもの、致命傷にはなるはず…
え?
集光砲、当ったよね?
魔装魔導衛兵には傷一つない。
…この魔法は、大岩をも貫通する威力だぞ?
「[鑑定魔法: 力量解析]」
《解析結果…対象は物理攻撃への高い耐性を有している可能性、大。》
魔装魔導衛兵は心が無いので[精神支配]することも出来ない。
魔力が練りこまれている鉄…魔鋼でその身に纏っている上に、物理攻撃への耐性を持っている。
…一筋縄ではいかなそうだ。
ドォン
魔装魔導衛兵が、私に向けて炎の魔法を放った。
炎の速度は遅いので、よけるのはたやすいことなのだが、火力が凄い。
「[雷之鎖]!」
私は魔装魔導衛兵の周囲に四つの魔方陣を設置した。
ジジ…ドカン!
その魔法陣から強い光が放たれ、魔装魔導衛兵に直撃した。
…
「うそでしょ…」
またもや、傷一つ見当たらなかった。
…まって、こいつ倒せなくね?
「奥の手見せるしか…」
ドッ!
油断してた…痛い。
今度は地面に叩き付けられた。
しかし、私ってこんなに弱かったっけ…
…あぁそうだった。
今の私。
150wIしかないんだった。
バン!
頭上から無数の剣が降ってくる。
こうなったら奥の手を発動するか。
私は防御魔法を全面展開した。
私を中心にガラスの壁のようなものが形成される。
そして、私を囲むように、ガラスの球体が出来上がった。
「ヴァルジュ スペラ ファステ カイラ」
私が魔法の詠唱を始めたと同時に、魔装魔導衛兵は私に向けて、無数の炎の矢を放った。
ドォォン
防御魔法が有るから大丈夫…
ピシッ
防御魔法にひびが走った。
「マス トロ ヴァレ タイト ウェルヴェ」
ピシピシ
間に合ってくれ。
「カリス ミュウ ファルトス アーカラス」
ビシビシビシ
私は炎の渦に巻き込まれる。
防御魔法は持つか?
「ヴェルダ フォ…」
ビシッ バリン!
…割れた。
ドドド
無数の炎の矢が私に迫る。
やばい。
まともに受けたら死ぬ。
逃げ…いや無理だ。
「[水の壁]!」
すると、私を守るように水の壁が現れた。
テオ…?
「さすがに仲間は、見殺しには出来ないよ。」
テオだ!!
水の魔法で、死は免れたが、魔法の詠唱が途切れてしまった。
「…よし。アレやるか。」
テオが左手を魔装魔導衛兵に突き出した。
「アレね、わかったわ。」
私は左手を突き出した。
「せーのっ」
「「[水流雷撃破壊]!!!!!!」」
テオと声を合わせ、叫んだ。
ドォン
水が現れ、魔装魔導衛兵を包む。
そして、そこにめがけて私は雷撃を放った。
[水流電撃破壊]
これは昔、テオと一緒に開発した魔法。
私とテオの合わせ技だ。
テオが敵を水流で捉え、そこに私は雷撃を撃つ。
水は導体なので、電気をよく通すのだ。
ジジジッドカン!
大きな音とともに、魔装魔導衛兵が水流の中で砕け散った。
「ば、爆発するよ!」
私はテオに向けて叫んだ。
「あいよ!」
チチ…ボン
鈍い音が響き、魔装魔導衛兵の破片が水の中で、跡形もなく爆散した。
「ふー、終わった~!」
テオが胸をなでおろした。
…チェッ魔装魔導衛兵の魔鋼、全部爆発したから、収入は0か…
ギギギギ
うしろを振り向くと、扉が開いていた。
さっき通った扉ではない。
新しく扉が現れている。
…扉の先には、森が広がっている。
魔法空間だ。
まだ遺跡は続いているらしい。
「たぶん、あそこから出れると思うよ。」
テオが指をさした。
「あ、うんそれと、さっきはごめんね。」
「…別にいいよ。」
「え?よくないでしょ。おじいちゃんの形見でしょ?」
「うん。でも、魔力に浸して二日くらい置いておいたら、自動的に修復されるというこを今思い出した。」
「あ、そうなの? …でも、旅の道中のお守りは?」
「大丈夫、姉ちゃんに貰ったのと、アリスに貰ったのがあるから、それを付ける。」
「テオのお姉ちゃんは知ってるけど、アリスって誰?」
「僕の妹。」
「えっマジ⁈妹いたの?」
「いたよ。」
「マジ?何歳?」
「13歳。」
「え、…テオ何歳?」
「13歳。」
「双子?」
「うん。まぁそう言うこと。」
「知らなかった…」
そんな事を話しながら、私達は扉をくぐった。




