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テオとイズの冒険日記  作者: モードー
日記帳一冊目【無理なお使い】
6/13

005【路を行く、線を引く、それがやがて街になる】

〖神暦・3240 4月6日〗

 日記の筆者『テオ』

 場所「遺跡」



あった。これが遺跡だ。

大きな石造りの塀のような建物。

遺跡…なのか?

思っていたよりも綺麗な状態だ。

苔の生え、ひびの入った石などではなく、最新鋭の建造物のような雰囲気である。

縦、150m、奥行き10mほどだが、横幅は目視出来ないほど、大きい。


「入口あったよ。」


イズが扉を指さした。


「というか、魔法で飛び越えれば、楽勝でしょ。…って思っていたけれど、ものすごい高度まで[対物理結界]が

張られているね。」


イズが、遺跡の上空を指さした。


「だから、中を通らなければいけないんだよ。」


イズに言った。


「けど、たかが、10mでしょ? すぐに抜けることが出来るでしょ。」


早速、イズが遺跡に入ろうとしている。


「いや、そうじゃなくて、中は、魔法空間になっているんだよ。前にも言った気がするけれど、抜けるのに三日

は、かかるよ。」


僕が言葉を返した。


「ふ~ん。ま、行こう。」


イズが扉の向こうの暗闇に入った。イズに続いて僕も入った。



壁掛け松明を頼りに、方向感覚がおかしくなる暗闇を10mほど進むと、崖の上の様な場所に出た。

空が青い。いや、あれは魔法だな。空は青いが、太陽と雲が見当たらない。

ふと、下を見下ろすと、大きな平原がある。

1Kmほど先で途切れているものの、これほど大きな空間を作り出すのはそう簡単じゃない。

その平原の中心を見ると、石の建物がたくさんあった。

よく見ると都市の様な構造で、少し緑があり、神秘的な空気感が流れている。

構造上、あそこが商店街で、その向かいが公園かな?などと、想像を膨らませていると、一つ、あることに気が付いた。

噴水を中心として見れば、その都市は、道や建物が線となり、大きな魔法陣となっている。


「結界魔法だ。」


イズが呟いた。


「すごい。大昔のものなのに、まだ、ちゃんと機能している。」


イズが手ひらから小さな稲妻を、都市に向かって撃った。


ガッ


その稲妻が見えない壁に当たり、砕けた。


「やめなさい。遺跡に当たったらどうするの?」


一応注意しておいた。


「行きましょ。」


僕の話を無視してイズが、下へと飛んで行った。


「僕、羽ないから飛べないんだけど?」


背中に生えている四つの羽で、優雅に飛ぶイズに向かって叫んだ。


「飛び降りたら?」


イズが無邪気に返事をする。


「死ぬって。」


崖の下まで100m以上ある。


「大丈夫、大丈夫。 地面ギリギリで、風の魔法でキャッチするから。」


絶対に大丈夫ではない。


「ていや!」


イズが魔法で僕を崖の下に突き飛ばした。


「うわあぁぁ」


地面まで、真っ逆さまに落ちていく。

緑色の地面がどんどん迫ってくる。

地面まであと、5mもない。



まって、これ死ぬんじゃね?



そう思った瞬間、ドウッという低い音とともに、僕の体が浮き上がった。


「は?」


とっさに周りを見渡すと、僕の真下にある魔法陣から、風が吹いていた。


「だから、大丈夫って言ったでしょ?」


イズが片手でピースサインを作った。


これからはイズの話を信じようと思う。


「ありがとう。」


地面に降ろしてもらい、中心の遺跡へと向かう。

遺跡の中に遺跡がある。なんかシュールだな。

いや、そもそも魔法空間が遺跡そのものであって、あれは遺跡の一部…?

そんなことを思いながら、平原の中心へと向かう。


「思ったより遠いね…」


上から見下ろした時は、遺跡までの距離はせいぜい100mほどに見えたが、ここから見ると、500m先にあるように見える。


「というか、どーして私たちあそこ目指してあるいているわけ?」


イズが力のない声で呟いた。


「多分あそこに出口があるから。」


迷宮(ダンジョン)とか、古代都市とかは普通、中心に何かしら存在する。


中心。

全てを支え、全てが交わる場所。

古代の人々は、そんな中心に絶対的な安定感を感じ、信頼してきたのだろう。


「ふ~ん…あ、あと半分くらいよ。」


イズが指をさした。

気が付いたら、こんなところまで進んでいる。


「ホントだ。」


僕は手を頭の後ろで組み、耳を澄ませながら歩く。

風が地面をなでる音、鳥のさえずり、草の揺れる音。

それらが混ざり合い、計算された一種の音楽のように僕の耳に響く。


「平和だな…」


僕は青い空を見上げる。

もちろん雲と太陽はないが。

ふと横を見ると、イズが「ル~ルル~ルルル」と、鼻歌を歌いながら空中で踊っている。


「フフフ。」


平和だ。



10分後



「「着いた‼」」


二人で声を合わせた。

近くて見ると、やはり結界が施されているのがわかる。

シャボン玉のような薄く、ほんのり虹色な膜がある。


「対魔法結界だから、人体にはどうってことないのよ。」


その結界に、イズが触れた。

するとその結界がフィィィという音を出しながら、人間一人通れるほどの穴が開いた。

そして、そこをくぐり抜け、遺跡の中心へと向かう。


「この建物たちすごいね。こんなに高いビル、王都くらいでしか見たことがないよ。」


イズが、道の両端に連なる建造物たちを指さした。

高さは平均、20mほどで、すべて石で出来ている。

目をつむると、昔の人々の暮らしが目の裏に浮かんでくる。


「あ、見て! 石碑があるよ。」


イズが僕の腕を引っ張った。

イズについていくと、壁に文字のようなものが書かれていた。


「古代ライヒ文字だね。」


1000年程前まで使われていた文字だ。


「えっと、『ワレライチゾ…ハ、………カラノガレ…タメ、チカニ…チヲキズクコ…ニシタ。』って書いてある。所々劣化していて読めないけれど…」


古代ライヒ文字は、昔勉強したのだ。


「ふ~ん。」


イズが呟いた。

僕を引っ張ってきた割には、なにか無関心だ。


「ま、中心まであとちょっと!」


イズが僕の服を引っ張った。

気になる。解読したかったのに…。




5分後




「「着いた~(二回目)」」


大きな噴水がある。


「何も見落とすな![探法: 詳細調査]発動。」


イズが指をパチンと鳴らした。と、同時に無数の魔法陣が噴水を取り囲んだ。


ピュン ピュン ピュン


と音を立てながら、魔法陣から光の線が放たれた。

その光が当たった所から光の波紋が現れ、噴水全体的を覆う。


「開け。」


イズの声と共に、噴水の水が止まった。


「あれぇ?」


イズが首を傾げる。

その時、噴水の柱に、鍵穴のようなものが見えた。


「鍵が必要なんじゃない?」


僕は、鍵穴を指さした。


「ホントだ。この遺跡のどこかにあるってこと?」


イズが空中でひっくり返った。

けれどなぜ、開かないのだろうか。

鍵がないのは理解しているが、遺跡(ここ)を通り抜ける人は少なくない。

だから、噴水(とびら)を開くために鍵が必要とあらば、最初に通った者が鍵を見つけ、開いているはずなのだ。


「なんでだろう…」


僕は小声で呟いた。


「どしたの?」

「いいや、何でもない。鍵、探しにいくか。」

「そだね。さぁ、行くわよ!」


イズが拳を空に突き上げた。



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