038【夢の底の悪魔】
注意。
■■■■は、文字化けではありません。
〖神暦 3240年 4月9日〗
日記の筆者『アリス』
場所「マリリアの家」
悲鳴が、聞こえた。
一本の剣が、振り下ろされた。
ワタシに向かってではない。
…はっ!
ワタシは目を覚ます。
…夢か。
この頃似たような夢を何度も見る。
そして、忘れる。
「もう一度寝よう。」
ワタシは呟き、横にいるお兄ちゃんの腕を枕替わりにして、もう一度眠りについた。
…また?
あの夢だ。
いつも、ここで、この瞬間で、「アリス」としての記憶が途切れるんだよな…
ザザッザザザッ
「ここ…は?」
ワタシは屋外に立っていた。
外見は…アリスじゃない。
いや、アリスってだれだ?
「■■■■お姉ちゃん。」
子供の声がした。
「…なぁに?」
ワタシは振り返る。
「…あのね、あのね、お母さんが、魔法のことなら、■■■■お姉ちゃんに聞いてみてって言ってたの。」
その少女が嬉しそうに言う。
…あぁ、そうだった、ワタシは■■■■。
この村の一番の魔法使い兼魔法学者の15歳の女の子。
「で、なにが知りたいの?」
ワタシは彼女の頭を撫でる。
「…あのね、あのね、動物さんとお話ししたいの。」
動物との会話か。
「う~ん。 わかったわ。 けど、魔法じゃないわよ?」
「…魔法じゃなくてもいいよ!」
「よし、なら、まずネコさんからの始める?」
「うん!」
彼女は嬉しそうに、はしゃいだ声を出した。
数日後。
「ミャーミャー」
ネコが鳴いている。
「…お腹が空いた。 って言ってる。」
少女…エマが言う。
「お~すごい。」
ワタシは手を叩いた。
これは、魔法ではなく動物が喋る時に発生る微量の魔力を解析する技術だ。
「ミャミャーミャー」
ネコがもう一度鳴いた。
「…わかんない ネコさんなんて言ってるの?」
エマが問う。
「えっとね…」
威嚇?
じゃなくて、「危険」っていってるのか?
「…ちょっと待ってて、[魔力探知]。」
…あ、爆発?
「…行かなきゃ!」
ワタシは咄嗟に爆発した方へ飛ぼうとした。
「…■■■■お姉ちゃん、どうしたの?」
「…エマ、ここで待ってて、すぐ帰るから。」
ワタシはそう言い残して飛んで行く。
ドカン!
また、爆発音がした。
誰かが魔法で戦っている。
…あ、
森の中だ。
「見つけたわ。 [光の束縛]!!」
ワタシは上空から魔法を放った。
…砂埃が徐々に沈んでいく。
そこにいたのは、一匹の魔獣と、一人の少女だった。
彼女は、夜空のような服を身に纏い、白に近い瓶覗色の瞳と、白皙の肌を持ち、ひ弱で、風が吹けば倒れてしまいそうだった。
身長からして、まだ幼いように見えるが、彼女の表情…瞳は、決して幼いものではない。
全てを見透かしているような、
全てを理解しているような、
全てを悟っているような、
そんな瞳だった。
「[解除。]」
ワタシは呟き、彼女の束縛を解いた。
「…貴女は?」
ワタシは尋ねる。
「え、僕?」
彼女が、自分を指さした。
美しい声だった。
「[光の槍]」
ワタシは魔獣を葬った。
「改めて、貴女はここで何してるの? 女の子が一人で森にいるのは危ないよ?」
「…女の子? …あ、そっか、僕、いま女性の体だったんだ。」
彼女がそうつぶやくと、彼女はみるみるうちに、背の高い青年へ変身していた。
「…どういう事?」
ワタシは少し混乱する。
「まぁ、簡単に言うと、この世界では、何故か僕の魂は女性の体を望むんだよね。 僕男性なのに…」
「なるほど…」
ワタシは何故か、妙に納得した。
「そんで? ワタシは■■■■。 魔法使いよ。 貴方は?」
「僕は、魔法使い……かなぁ、ま、名前はルティマだ。」




