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テオとイズの冒険日記  作者: モードー
日記帳一冊目【無理なお使い】
2/12

001【今から始まる 冒険日記】

神暦(しんれき)・3240年  4月1日〗

 日記の筆者『世界』

 場所「晴れの森」

 《季節は春ごろ、やっと長い冬が開け、人間たちは農業の準備をしている。

  その時ふと、「晴れの森」に目をやった。》



「[水流魔法: 水刃(すいじん)]!」


その森の中で、腰に剣をさした赤髪の少年が、魔法らしきもので一本の木をなぎ倒した。


「う~ん…もう少し広範囲に攻撃できるようにしたいな…」


少年が言い、指をパチンと鳴らした。


「改良版。[円形水斬(えんけいすいざん)」!」


その少年がそう叫ぶと、水でできた剣が無数に出現し、その剣が高速で回転し始めた。


ドカン!


大きな音を立て、少年から半径10m以内にあった木が全て吹き飛んだ。


「こっわ…もう少し威力抑えないと…」


少年がつぶやいた。

その少年の名は『テオ』。

魔法使いだ。


「あ、あの~もう日が暮れちゃてるわよ~」


テオの後ろで声がした。振り返ると背丈が20cmくらいの、女の子…いや、妖精が羽をばたつかせ飛んでいた。


「あ~、そうだイズ。焚火(たきび)のために、木の枝拾ってきて。」


テオが言った。

その妖精…イズが、「はいはーい」と返事をし、面倒くさそうに森の方へ飛んで行った。

テオがリュックを地面に置き、叫んだ。


「開け!」


すると、そのリュックは煙を出しながら大きくなり、三角形のテントのような形へとみるみるうちに変わっていった。


「戻ったよ~。」


ふわふわと浮いた数十本とイズが戻ってきた。

そして、魔法でその枝を焚火の形に組み、手から炎を出した。


「ていやっ!」


「早かったね…」


テオが言った。


「お腹すいた。なんかな~い?」


イズがテオに尋ねた。


「何にもないよ。」


テオが答えた。


「じゃあ、魚でも釣ってく~るね~」


イズがものすごい勢いで、川のほうへ飛んで行った。


「大丈夫かな…」


テオが頭を抱えた。




数分後




「戻ったよ~ん♫」


イズが自分の身体の三倍はある、大きな魚を担いで帰ってきた。


「おーすごい。じゃ、焼くか。」


テオが魔法で魚を焚火の上に浮かせた。


「後は魔法が勝手にやってくれる。」


テオが言った。


「冒険を始めて半年か…」


テオが星空を眺めながら言った。


「そだね。」


返事をしながらイズが、焼き魚を一人で平らげた。


「ちょ、お前…そんな量、どこに入るんだ?」


テオが驚いた。


「ま、寝ましょ」


テオに話を無視してイズが、テントの中に入った。続けてテオも、()きっ(ぱら)を抱えたまま焚火の灯を消し、テントの中へと入っていった。











〖神暦・3240年 4月2日〗

 日記の筆者『テオ』

 場所「晴れの森」

 《この頃やっと暖かくなってきた。

  故郷の村では今頃、田んぼの下準備をしているはずだ。》



「おはょ」


イズが起きてきた。


「おはよー」


イズが目をこすりながら呪文を唱え、足元に魔法陣を出現させた。


「[生活楽ちん魔法: 自動お着替え]」


魔法陣から放たれた小さな稲妻にイズが飲まれ、稲妻がジジ…と音を立てながらゆっくりと消えると、そこには青いワンピースを着たイズが居た。


「すごいでしょ。 尊敬しちゃうでしょ。」

「うん。 それ毎日言っているよ?」


適当に返事をしながら、僕は朝ごはんの用意をはじめた。

保冷バックの中に、氷漬けにされた魚が数匹入っている。

魚はあるな…めんどくさいし焼くか。 大抵の食材食材(モノ)は、焼いて、塩をかければ食べられるというのは常識である。


「[生活楽ちん魔法: 作り置き召喚]~~~~~~~」


『ん』をイズがむっちゃ伸ばした。

それはさておき、目の前にサンドイッチが姿を現した。


…明日から朝ごはんはこれでいいや。 こんな便利な魔法があるなら、先に言っておいてほしかった。


「すご。どういう原理?」


何も無い所から、何かを出現させるという[日常魔法: 物的召喚]自体は何処にでもある一般魔法だ。しかし、出現する物が食料品なら話は別だ。 まず、[物的召喚]は、予め魔法空間に転送させておいた物を現世に呼び出す魔法だ。 

元々は、戦場で素早く武器や盾を取り出すために開発された魔法だと、聞いたことがある。

だから、食品の取り出しには向いていない。


「原理はね、えっとね…作った食品を一回量子に変換して、そのバラバラになったものを魔法空間へ送り込むの。

で、取り出す時に再構成すると… あ~ら不思議 何と、食品が召喚できるのよ。」


…ものすごく難しい話だ。僕には理解できない。


イズはこう見えても(#イズ こう見えてって何よ~)魔法の天才なのである。

身長は小さいけれど、実は500年くらい生きている。

イズは、その500年間を実に無駄にして過ごして来たのだ。

くる日も、くる日も、ずっと魔法の研究だけに打ち込んで来た。

魔法の研究のために魔力を使い続けたため、精神の成長が遅かった。

今は大体精神年齢12歳くらいだろう。

13歳の僕から見ても、イズはとにかく世間知らずだ。だから、僕が無理やり冒険に連れ出した。

『イズ! 魔法ばっかりじゃなくて、もっと世界を見に行こう!』と。

そして今のここに至る。


「いただきまーす。」


二人で他愛のない話をしながら、サンドイッチを食べた。

食べ終わるころ、小さな鳥が飛んできて、テントの隙間に『テオイズコンビへ ギルマスより』と、書かれた封筒を挟んだ。


「ねえねえ。なんか、冒険者組合…ギルドから手紙、届いてるよ。」


イズがテントの隙間に挟まっている封筒を開き、手紙を取り出した。

冒険者組合とは、この国の冒険者のほぼすべてが所属している組合だ。


「なんて書いてある?」


イズに聞いた。


「えっとね、ギルマスからね『よ~よ~ テオイズコンビ! 君たちにお願いしたいことがある。』」


イズがギルドマスターの低い声真名をした。


「『それはだな… お使いだ!』」


お使い?


「『ちょっくら、セレスタル地方のヴェルク村まで行って、村長に預けている「風に関する魔術の書」を受け取っ

て、冒険者組合(ギルド)本部に持ってきてくれ☆』って書いてある。」


イズが手紙を畳んだ。


「ふざけんな。」


それと同時に、イズが手紙をびりびりに破いた。


その気持ちは良くわかる。(が、物に当たってはいけない)

セレスタル地方というのは、ものすごく標高の高い場所である。

それだけに、行くのも面倒なのだ。

ちょっくら、のノリで行けるような場所ではない。


「ん?」


封筒を畳もうとすると、何か違和感があった。

奥を見ると、もう一つ手紙があった。

広げて読んでみる。


「追伸。 報酬はイズが欲しがっていた古代呪具なんてどうだ? らしいよ。」


一応イズへと言ってみた。


「よし。 やるか!」


切り替えが早い。


「セレスタル地方って、バター高原の奥のさらに高いところでしょ? バター高原でさえ、標高1200mなのに、

ヴェルク村のある所は標高2500mだよ? ほんとに行く?」


バター高原には竜がいるのだ。

それも怖いし…あと寒い。


「いくぞ~!」


イズは行く気満々だ。 はぁ、行くか。


「じゃあまず、バター高原を目指すよ。荷物まとめるから、テントから出て。」


いつもとは違い、意気揚々とテントを出るイズに続く。そして、外に出ると僕はこう叫んだ。


「閉まれ!」


すると、テントの上空に魔法陣が出現し、テントが引き寄せられて行く。


「リュックに変われ。」


大きなテントがたちまち何の変哲もないリュックへと変化した。

そのリュックを空中からとり背負った。ずっしりと肩に重みがかかる。


「バター高原の方向ってわかる?」


イズに聞いた。


「ちょっと待ってね。」


イズがお茶碗サイズの方位磁針を出現させた。


「バター高原の方向を教えて。」


イズが方位磁針に問いかけた。

すると方位磁針がクルクルと数秒回り、日が昇ってきた方向…東を指した。


「こっちみたいだよ~」


イズが指をさした。

あ、そりゃあそうだ。

今まで忘れていたが、バター高原が東山脈地帯にあるのは、周知の事実なのだ。

ここ、晴れの森からは、ざっと200km…飛空艇などに乗れば一週間で着くだろう。

あの手紙には、期限など書いていなかったから気ままに、楽しく向かうとしよう。


「何ぼ~っとしてんの? 行くよ!」


イズが僕の背中をたたいてきた。


「よし。 行くか!」



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