016【赤き星達の追憶記(下)】
〖神暦・2803年 7月24日〗
日記の筆者『イズ』
場所「妖精の村」
「はい…じゃーね、あのーね、占星学をーね、はじめてーね、行きたいとーね、おもうね。」
教室に占星学の先生、バーバラ先生が入ってきた。
バーバラ先生は、人間の先生で、80歳のおばあちゃん先生だ。
通称 ばばぁ
ひどい…いや、ひどくない。
占星学とか意味わからん教科教えているし、服のセンスもズタボロだし、もうばばぁでいいやろ。
と思う。
「はい。じゃーね、二限目のね、じゅぎょーをね、初めてーね、いこーうとね、おもうね。」
「「はぁい…」」
皆の声に気力が無い。
キャサリン先生の時と違ってなんかこう、下に下がっている。
「はい、じゃーね、占星にーね、よく使われるーね、星はーね、何かーね、覚えてるーね?」
バーバラ先生は「ね」をいつも、少し大きめに言う。
ストレスだ。
イライラする。
「じゃーね、そこのーね、…る…い…?ルイくんーね。」
私のひとつ前の席の、男子が当てられた。
なんか先生に名前を忘れられていたような…
「え、っと、朱星…ヴァーミリオンと、…赤星…クリムゾンです。」
ルイが答えた。
「はい…せいかいーね、じゃーね、どうしてーね、えとーね、ルベルとかーがね、占星にーね、使われるかーね、知ってるーね?」
あーイライラする。
「えっと、ヴァーミリオンとクリムゾンは動きに規則性がなく、動きによって占いが出来るから…?」
ルイが続ける。
「はい。せいかいーね。」
しかし、どうして規則性がないのだろう…
普通の星は北極星を中心に反時計回りに回っているが、ルベルとクリムゾンだけ、違う。
なぜか東から西へと動きに、たまに西から東に動く。
これはおかしい。
「えっとーね、これはーね、神の奇跡とーね、いわれてーね、いますーね。」
神の奇跡?
そんな物は存在しない。
絶対に何かしらの物理法則にのっとっているはずだ。
幻覚でない限り…
その日を境に、私は毎日夜空を見た。
ヴァーミリオンとクリムゾンの動きを毎日毎日記録した。
そして、いくつかのことが解った。
ヴァーミリオンやクリムゾン…どちらも赤いので、赤き星と呼ぼう。
赤き星達は、約半年間東から西に動き、約半年間西から東に動く。
ただし、毎年ずれていく。
何故だ?
そもそも何故、赤き星達は東と西のルートを通る?
…太陽と同じ…
あ、地球は回っている。
太陽は動いていない。
じゃあ赤き星達は止まっていて、動いていない?
けれど、それは全ての星と同じだ。
こ私は星を三次元で考えた。
星空とは、平面ではなく、空間なのだ。
しかし、何も思いつかない。
…神の奇跡なんて有り得ない。
気が付いたら私は魔法の研究と同じくらい、星空に没頭していた。
百年後
はぁ、解らない。
あれから、赤き星達の軌道を計算し続けたが、どれも上手く嚙み合わない。
「はぁ…」
私は、引きこもって魔法と星の研究をする妖精になってしまった。
しかも、何故か身長が20cmにまで落ちてしまった。
しかも! 何故か翼が皆みたいな、一対、二枚の蝶の羽ではなく、二対、四枚の虫の羽みたいになっている。
まぁ別に、羽は透き通っていて、綺麗なので許すが、なぜ身長20cmなのだ!
「んん…」
私は背伸びをして、後ろを向いた。
「二ヶ月ぶりに、外出るか…」
私は、自分の何十倍をもある、扉を魔法で開き、外へと出た。
「あ~イズ!」
ルイが走ってきた。
「久しぶり~」
「相変わらず、小さいなぁ…」
「べ、別にいいでしょ!」
「まぁ…というか、広場に旅のサーカス団が来てるよ。見に行く?」
ルイが坂の上を指さした。
「行く!」
私は、返事をする。
「よし。じゃあ行こう。」
「…頭の上に乗るから、連れてって~」
私は、そう言ってルイの頭の上に座った。
もちろん、魔法で落ちないようにしている。
数分後
「着いた。」
ルイが言った。
見ると、ボールに乗ったピエロを中心に、ジャグリングをしているピエロが乗っている自転車が、反時計回りに回り、その奥、ジャグリングの自転車よりも二回り大きい円を、逆立ちの自転車が走っている。
私は、それをルイと一緒に眺める。
………
急に、私は、頭の中に電撃が走ったような気がした。
そう言う事か。
私は、ルイに「先帰る!」と言い、全速力で羽をばたつかせ、自宅に帰った。
「わかったぞ。」
赤き星達は神の奇跡でも、幻覚でもない。
れっきとした『星』だ。
ただし、もう一言付け足す必要がある。
惑星だ。
地球以外にも、太陽の周りをまわる星があった。
ヴァーミリオンとクリムゾンだ。
これなら、全てに説明がつく。
一、地球は自分の軌道を一定の速さで進む。
二、赤き星達も同じく自分の軌道を一定の速さで進む。
三、赤き星達の方が外側に有り、動きがゆっくり。
これをすべて取り込んで計算すると、こうなった。
逆に動く理由は、例で例えると、
『Aの汽車は、円の内周を走っている。Bの汽車は、外周を走っている。 AはBより早く走っている時、BがAよりも前に有ると、いつも道理前に進む。 しかし、AがBを追い抜いてしまうと、立場が逆転。Aから見るとBが、後ろ向きに走っているようにみえる。』
この原理だ。
やっと解った。
何故今まで解ら無かったのだろう。
急に明るくなる原理は簡単だ。
地球と赤き星達が一直線に並ぶと、距離が縮まる、すると、赤き星達は地球から見ると大きくなったように見え、光が強くなったように見えるのだ。
何故、皆解明しなかったのだろう。
ああ、凄い。
なんだこの感情は。
そうだ…帝国の学会かなんかで発表しよう。
…天文学に革命がおこるぞ。




