014【日常生活に支障が出るんだよ!!!!!!】
〖神暦・3240年 4月7日〗
日記の筆者『イズ』
場所「遺跡」
白龍が無理を言っている。
そもそも、生物を魔法空間に転送するのは、常人には無理なのだ。
常人には。
私は違う。
私は魔法の天才なのだよ。
魔法で出来ない事は無い。
…とかイキッているが、無理な物は無理だ。
「無理ね。」
『そこをなんとか…』
「無理。」
『そこをなんとか。』
「無理。」
…
(中略)
…
「無理。」
『なぜ無理なのだ?』
はぁはぁ、あのやり取りを、50回はした。
まぁいい。
なぜ無理なのか。
それはだな、魂を持っている物体…生命を魔法空間に送り込むと、魔法空間にある膨大な魔力が魂を圧迫して、魂が固まる。
つまり魔力酔いを起こすのだ。
魂が耐えられる魔力は、約100wI…龍なので、ある程度は抵抗できそうだが、流石にこの遺跡を抜けるまでの1、2日間も魔力に漬けられていると、さすがに死ぬ。
しかし、一度身体をバラバラにして、魂を魂のみの状態にすれば簡単に保護できるというわけだ。
「絶対に出来ないという事では無いんだけど…」
私が漏らした言葉に、白龍がすかさずに反応した。
『な、なんだ? 出来るのか?』
「うん…まぁね。」
『どうやって?』
「魔法空間を二つに分裂させて、魔力を片方にすべて流し込めば…」
『おお、出来るのか!!』
「けどね、片方の魔法空間の魔力が暴走しないように、ずっと細心の注意を払っておかなければいけないの。つまり、そこに魔力と精神を使わなければいけない。」
『おお、それぐらいいいじゃないか!やれやれ!』
…私はこの言葉にカチンときた。
私はスゥっと息を吸い、こう叫んだ。
「そうなると、私はずっと寝てるような状態になるんだよ!!! 日常生活に支障が出るんだよ!!!!!!!!!!!!!!!!」
『…だから何だ?』
「ふざけんな!!!!」
もういい、面倒くさい。
置いていくとか言ったらテオに怒られそうなので、強制的に白龍を魔法空間に転送する。
「よいしょっと。」
『え、何が起こっ…うわー』
白龍は抵抗する暇もなく、私が開いた時空の渦の中へと吸い込まれていった。
「よし終わった。テオ、行こう!」
…テオ?
私は辺りを見回す。
テオの姿がどこにも見えない。
「えぇ、もしかして、テオも一緒に魔法空間に入っちゃった…?」
たぶんそうだ。
しかし!
ポータルを開くのには、魔力を使う。
それも結構な量だ。
今日は魔力が残り少ないので、テオを救出するのは明日になる。
「えぇ、じゃ、もしかして、明日まで、私一人?」
はぁ、引きこもって魔法の研究をしていたころは孤独でいても、どうとも思わなかったが、こうなると悲しいな。
「じゃあここで明日まで待つか。」
そう言った瞬間、辺りが急に暗くなった。
「な? …ああ夜になったのか。」
この遺跡は天井が魔法で空になっている。
夜になるときに、急に暗くなるのはやめて欲しい。
心臓にわるい。
「…ねる場所がない。」
いつもは、テオのリュックの中で寝ていたから、こうなってしまった以上、安全に寝る場所がない。
「結界でも張るか。」
そこまで魔力を使わない簡易結界を展開し、[自動お着換え]で寝巻に着替えた。
「よいしょっと。」
小さな風呂敷を引き、その上に寝っ転がった。
「わぁ…星が綺麗。」
私はその星々を眺める。
本当に冒険に出て良かった。
つくづくそう思う。
「…ホントの星空と配置が同じだ…」
星の並びは、昔通っていた魔法学校で覚えた。
占星学とかいう、意味わからん教科で。
占星とは、星の動きで未来を予測する方法だ。
しかし、私は一つ、気が付いたことがある。
魔法の研究に没頭していたころ、毎日夜に星空を眺めていたのだ。
星の動きには、規則性が有る。
北極星を中心に反時計回りに回っている。
それは、周知の事実である。
しかし、占星によく使われる星、『朱星』や『赤星』などは、急に逆回りを始めたり、急に明るくなったりするのだ。
星が逆回りをする。
これは有り得ない話なのだ。
皆は神の奇跡だのなんだので、終わらせてしまったが、私は違う。
私は毎日夜に星を眺めたのだ。
そして、突き止めた。
ヴァーミリオンにも、クリムゾン、にも動きに規則性が有る。
一定間隔で、逆回りをし、一定間隔で明るくなる。
そして、私は軌道を計算した。
計算は得意だ。
魔法の計算などで鍛えたから。
…そして、この答えへと辿り着いた。
太陽の周りを公転する星は、地球だけではなかったのだ。




