013【図々しいにも程がある!】
〖神暦・3240年 4月7日〗
日記の筆者『イズ』
場所「遺跡」
白龍。
その巨体をくねらせ、ゆっくりとこちらへと降り始めた。
そして、とぐろを巻き地面に座った。
白龍の目がこちらをうかがっている。
白龍の顔は、こう巻物に描かれているような硬そうな顔ではなく、精錬された美しい顔立ちをしている。
…
つい、見とれてしまったが、なぜここに白龍がいる?
…そう言えば、この頃白龍が行方をくらましたとかどうとか、新聞で読んだ気がする。
こんな処に居たのか。
…まぁと言っても白龍は温厚な性格だし、頭もいい。
こちらから手出ししなければ、襲ってはこないだろう。
けれど、何か面倒くさい事が起こる気がするので、さっさと塔に隠れよう。
「テオ!行くよ…テオ?」
テオが右手を龍に突き出し、その手のひらから魔法陣が出現した。
「まって、攻撃しちゃだめ!」
「…攻撃はしてないよ。…よく見て。この龍、怪我をしてる。」
テオが龍の背中を指さした。
本当だ。
所々、刃物か何かで切られたような傷や、魔法…いや銃で撃たれたような跡がある。
「ひどい…」
とは言っても、白龍がこんなにも弱るなんて何かおかしい気がする。
「よし。これで大丈夫。」
テオが言った。
どうやらテオは白龍に簡単な回復魔法をかけていたらしい。
『感謝する。』
頭の中に声が響いた。
白龍の声であろう。
「あなた、しゃべれるのね…」
大発見だ。
白龍が喋った。
『そうだ。昔、友に教えてもらった。』
友か。
「ところで白龍さん。こんな所で何してんの?」
一番の疑問を白龍にぶつけた。
『いやぁ、北の空を飛んでいたら、人間の戦争に巻き込まれてしまったのだ。そして、ここに逃げてきた。』
北の戦争。
この星の北には島国が沢山有り、その国同士が戦争をしているのだ。
理由は三つ。
一つめ、領土の奪い合いのため。
二つめ、お金稼ぎのため。
そして三つめ、滅びぬ都の所有権を得るため。
この三つの要素が組み合わさり、北は戦争が絶えないのだ。
「じゃあ、この傷は?」
テオが背中の刃物で切ったような傷を指さした。
『ああ、これは炸裂魔法にやられたのだ。』
炸裂魔法。
上空に始点を置き、そこから斬撃を四方八方に飛ばす魔法だ。
敵の戦闘機や爆撃機などを、落とすために戦争でよく使われる。
白龍はそれに巻き込まれたのだろう。
じゃあ、この傷は戦闘機かなにかからの銃撃だな。
「科学って怖いよね~ 魔力を介さない物が多いから、防御魔法では防御しきれないし、解析魔法も使えないから、仕組みも分からない。」
私は白龍に[上位回復]をかけながら言った。
「だよね。魔法は発動するのに最小でも、0,5秒はかかる。けど銃とかは引き金を引くだけで攻撃できるもんね。」
テオが答える。
『その通りだ。そもそも科学を攻撃に使っている時点で、アウトなのだよ。』
…
よし。
回復完了。
これで動き回れるようになっただろう。
「できたよ。白龍さん。」
『感謝する。妖精の…ばあさん?』
「ふざけんな!!!!!!」
『いやぁ、だって、500歳だろう? 妖精の平均寿命、500歳。ばあさんではないか。』
「それ、昔の話! 今は病気の薬とか、治療法が見つかって、平均寿命1000歳よ!」
『ああ、そうなのか。この頃、我のおつむが正常に動かなくなってきたな…歳か』
歳なのだろうか…
ってか、白龍寿命なくね?
「まぁいいや。じゃあね。」
テオが白龍に手を振り、塔へ歩き出した。
『ちょっと待ってくれ。』
白龍が少し体を動かした。
『我、この遺跡から出れない。脱出すんの手伝ってくれ。』
脱出?
白龍はここに逃げてきたと言っていたな。
入れたのなら、出れるだろう。
「どういうこと?」
私は首を傾げる。
『ああ、炸裂魔法で瀕死状態になったのだ。すると、我を自律能力が勝手にここにワープさせたのだよ。まぁそのおかげで死なずに済んだのだがな。』
自律能力か。
思考とは関係なく、自律的に行動する能力や魔法の総称だ。
そのお陰で白龍は助かったということだ。
そして、ここから出られなくなったというこだ。
「無能?」
あ、口が滑った。
終わったぁ
『まぁそんなところだ。』
案外冗談が通じる龍だった。
(冗談だったということにしておこう)
「じゃあ、外に出るの、手伝ってあげよう!」
テオが私の目を見た。
…この時、私は理解した。
これはテオが暗に『イズ!魔法で何とかして!』と言っているのだ。
「わかったよ、てつだったげる。 じゃあ、その大きな体は邪魔になるから、私の魔法空間に入って。白龍さん。」
私はそう言い、魔法空間に繋がるポータルを出現させた。
…牛人の時、こうやってポータルを作るんだった…
あのときは、混乱していて頭が回らなかった。
[空間連結]なんてしなくて済んだのに…
(正確にはしてないけど)
『…中はどうなっておるのだ?』
「ん? まぁ暗い空間だね。」
『温度は?』
「寒いと思うよ。」
『…入ったら我はどうなる?』
「えっと、身体が壊れないように、一回分子レベルでバラバラにするの、あ、もちろん魂と記憶は別のところで保管するよ。でねその分子をn…
『嫌だ!!!!!!』
大きな声が頭の中に響く。
白龍が私の説明に横槍を入れてきた。
「えぇ…」
『バラバラとか嫌だ!!!!!!なんかこう…もっといいもの無いのか?』
白龍が身体をうねらせる。
…そして、私は心の中でこう叫んだ。
ねぇよ!!!!!!!!!!!!!




