第186話 実務ゼロで特権と不労所得ゲット!? 喜んで引き受けます!
「いえいえ! 私なんてまだこの街に来たばかりの新米ですし、そんな偉い役職なんて……。それに、お店の経営だけで手一杯で、ギルドの難しい仕事なんてできませんよ!」
私は慌てて断ろうとした。スローライフを目指しているのに、そんな責任の重い仕事を引き受けるなんて真っ平ごめんだ。
しかし、バルガスさんは食い下がる。
「そこをなんとかお願いしたい! 君のような優秀な人材……そして、君の持っている素晴らしい技術と知識が、この街には必要なのだ! もちろん実務は商業ギルドがやるから、君は助言してくれるだけでいい! 会議も、気が向いた時に出てくれるだけで構わんのだ!」
(実務なしで助言だけ?)
私の元OLセンサーがピクリと反応する。
それってつまり、天下りの「名誉顧問」みたいなものじゃないの?
「あの……ちなみに、お給料とか、ギルドの施設を優先的に使える特権とかって……」
「もちろんだ! 理事としての報酬は毎月支払うし、ギルドの卸売倉庫も最優先で利用可能だ! どうか、この通り!」
バルガスさんが、私に向かって深々と頭を下げる。
(……実働ゼロで、不労所得と特権ゲット!? なにこれ、最高すぎない!?)
これは断る理由がない。というか、スローライフへの特急券だ!
「……分かりました。この街の発展のためになるのなら、微力ながらお引き受けいたします!」
「おお! 感謝する! 感謝するぞ、コトリ君! 正式な承認は、来週開催の次回の理事会だが、反対する者は誰もいないから実質決定だ」
バルガスさんは、ホッと胸を撫で下ろし、安堵の表情を浮かべる。
その後、バルガスさんは、ダマールさんの件について、私がセーラさんから聞いたことよりも詳しいことを話してくれた。
それによると、ダマール商会は解散命令が出されたが、街の経済への影響を最小限にするため、ギルドから管財人が派遣されて公的管理下に置かれ、ゆくゆくは部門ごとに解体・譲渡されることになったという。これから詳細を詰めていくそうだ。
バルガスさんは、それらのことを一通り私に話した後に、何故か「この対応で、いいかね?」なんて聞いてきた。
私は一瞬「なんで私に聞くの!?」と思ったけど、きっと、私が理事に就任するから、事前の根回しなのだろう。バルガスさんが理事長でもあるそうで、こんな仕事までするなんて大変だなあと思う。次から、バルガスさんにわざわざ来てもらわなくてもいいように、定期的に商業ギルドに行って、重要な案件がないか確認しよう。最低限の仕事ぐらいはしなきゃね。
私は「いいと思います」と答えると、バルガスさんは、満足した様子で「東の国の警備員たちにも、くれぐれもよろしくお伝え願いたい」と言ってきた。
一瞬何のことか分からなかったけど、私が東の国出身ということにしてるので、「東の国の警備員」は、きっとこの店の従業員のことを言ってるんだろう。この前の泥棒騒ぎの時に、バルガスさんに「うちには頼もしい警備員がいます」と言ったしね。
私が「わかりました。しっかり情報共有しておきます」と述べると、バルガスさんは満足した様子で帰っていった。
そうそう、情報共有は組織の基本だしね。でも、今は皆店内にいて、会話が聞こえちゃっているから、改めてミーティングはいらないかな!




