第185話 ダマール会長逮捕のお知らせ。人は見かけによりませんね! ……え、私がギルドの理事に!?
「ヤマネコ商会のコトリ会長に、その席に座っていただこう。強大な外敵は、内部に取り込んで恩を売るのが商人の鉄則。東の国へ『我々は敵ではない』と恭順の意を示すのだ!」
「「「おおお……!」」」
四人の理事たちは、バルガスの保身と戦略が混ざり合った決断に深く頷き、感嘆の声を上げた。
こうして、コトリの「商業ギルド理事就任」と「ダマールの破滅」が、街のトップ層の的外れな打算と壮大な勘違いによって決定されたのであった。
◇
翌日の午後。
私が店番をしていると、カランコロンとドアベルが鳴り、商業ギルドの受付嬢であるセーラさんが興奮した様子で駆け込んできた。
「コトリちゃん! 聞いた!? あのダマール商会に強制捜査が入って、ダマール会長が逮捕されたのよ!」
「えっ!?」
セーラさんが興奮気味に、ギルドの内部情報を語ってくれたところによると――。
私が商業ギルドに届けたあの書類は、驚いたことに、先日この店を訪ねて、私のことをあんなに心配してくれていたダマールさんの商会の不正の証拠だったそうだ!
ダマール商会の幹部が食堂だったこの店を会合に使っていて、その時に置き忘れて、それをこの店の前の住人が隠していたという話だ。
ギルドの査察と衛兵の取り調べに対し、ダマールさんは「私は何も知らない! 全て部下が勝手にやったことだ!」と、経理部門の責任者のベッカーさんという人に責任を全て押し付けようとしたらしい。
しかし、トカゲの尻尾切りにされそうになったそのベッカーさんが、それに怒って、書類で発覚したダマールさんの悪事――脱税や違法な地上げだけでなく、街の職人たちへの脅迫、そして8年前にここであった店主失踪事件の真相も、洗いざらい喋ったのだという。セーラさんは、店主失踪事件のことは、言い辛そうにしてたけど、そこはちゃんと確認しといたわ。
この物件を購入するときに、商業ギルドの職員さんから、この建物は以前食堂で、その店主は借金で夜逃げしたと聞いていたけど、セーラさんによると、実は殺人事件の被害者だったんだって!
しかも事件の現場がこの建物! うーん、実際に幽霊が出たわけだし、この物件、心理的瑕疵にとどまらないんじゃない? 今すぐ引っ越したい気分だけど、リズちゃんがきてからは夜のおかしな気配はなくなったし、もうしばらく様子を見ることにしよう。そして、またおかしなことがあったら、今度こそ引っ越そう!
ちなみに、殺された店主の遺体は、ベッカーさんの供述通り、ハルモニア近郊の森から凶器と一緒に発見されたとのこと。ここの裏庭とかじゃなくてよかった!
それにしても……。
「……人は見かけによらないですねぇ」
私は、セーラさんが帰った後、ダマールさんのことを思い出しながら、しみじみと呟いた。
あんなに素敵な紳士だったのに、裏ではそんな悪いことをしていたなんて。
やっぱり、ビジネスの世界は怖いわ。
そんなことを考えていると、カランコロンとドアベルが鳴り、恰幅の良い紳士が店に入ってきた。
今度は、ギルドマスターのバルガスさんだ。
今日は千客万来だわ。
「あ、バルガスさん! いらっしゃいませ!」
「やあ、コトリ君。突然すまないね。今日は、君に折り入って頼みがあって来たのだ」
バルガスさんは、いつも以上に改まった態度で、私の前に立った。
「頼み、ですか?」
「うむ。実は、ダマールが捕まったことで、商業ギルドの『理事』の席が一つ空いてしまってね。ダマールは理事の一人だったんだ。どうか、君にその後任を引き受けてもらえないだろうか」
「……えっ? 理事?」
理事って、役員ってことだよね? 私みたいな子供が?




