第182話 泥棒の事後処理はバルガスさんにお任せ! ついでに床下から出たゴミ(木箱)をギルドに届けます
「ふむ……。こいつらは……街のごろつきだな。昨夜、酒場で『デカいヤマがある』と騒いでいた連中がいたとの情報が入っていた。きっとこいつらのことだろう」
バルガスさんは厳しい顔で男たちを見下ろした。
「君の実力は冒険者ギルドのギルドマスターのゴードンから聞いている。こいつらは、君の店に盗みに入ろうとして、君と君の使い魔のその魔狼犬に撃退されたということでいいかな?」
「あ、はい。そんなところです」
撃退したのは私とコロじゃないけど、とりあえずそういうことにしておこう。
それにしても……あの冒険者ギルドの試験官のおじさん、ギルドマスターだったの!? 確かに只者じゃない感が漂ってたわ! 主に見た目が!
「やはりそうか! 衛兵、こいつらを連行してくれ! 厳しく取り調べるぞ!」
「はッ!」
衛兵さんたちが手際よく男たちを運び出していく。
ふぅ……よかった。バルガスさんが来てくれて助かったわ。
「それにしても、物騒だな……。やはり、君のような若い女性が一人で店を構えるのは危険かもしれん」
バルガスさんが心配そうに眉を寄せる。
「あ、いえ! 私には頼もしい警備員たちがいますから!」
リズちゃんとリックとコロ。3人もいる。
「警備員? ははは、そうか。それなら安心だが」
「バルガスさん、朝早くから本当にありがとうございました!」
「うむ。何かあれば、いつでもギルドを頼りたまえ」
騒ぎが一段落し、近所の人たちも「よかったよかった」と散っていく。
私は皆にお辞儀をしてから、店内に戻った。
「ふぅ……朝から変な汗かいちゃった」
私が大きく息を吐きながら厨房へ向かうと、テーブルの上に、見慣れない古ぼけた木箱が置かれているのに気づいた。
「あれ? リズちゃん、この木箱は何ですか?」
私は、テーブルの椅子に座って朝ごはんを待っているリズちゃんに質問した。
「ん? ああ。掃除をしていたら、床下から出てきたのだ。邪魔だから処分しておけ」
「床下の掃除って……リズちゃん、意外とマメなのね。ありがとう!」
私は木箱を手に取る。
少し土で汚れていて、かなり古いもののようだ。
「もしかして、前の住人の方の忘れ物かしら?」
(でも中身が空だったら、捨てていいかな? リフォームの時も前の住人の家具は全部捨てちゃったし)
そう思って蓋を開けてみると、書類の束が入っていた。
ゴミとして捨てることもできるけれど、他人の持ち物を勝手に処分するのは少し気が引ける。もし重要なものだったら、後で面倒なことになりそうだし。
「……そうだわ。さっきバルガスさんが『何かあれば、いつでもギルドを頼りたまえ』って言ってくれてたわよね」
今日は定休日だし、後でギルドへ直接相談に行ってみよう。
ついでに、さっきの騒ぎのお礼も言っておきたいしね。
「よし、後でギルドに持って行こうっと! リズちゃん、見つけてくれてありがとうね!」
私が木箱を四次元バッグにしまい込むと、リズちゃんは「うむ、よきに計らえ」と満足げに答えた。
◇
数時間後。
私はコロを連れて、商業ギルドを訪れていた。
「あ、コトリちゃん! さっきは大変だったわね。怪我はなかった?」
受付カウンターにいた女性職員――セーラさんが、心配そうに声をかけてくれる。
ギルド内でも、今朝のヤマネコ商会前での騒動はすでに知れ渡っているらしい。
ちなみにこのセーラさん、私が初めて商人登録に来た時は「おままごとなら他所で」と塩対応だった人だ。
でも、うちの店がオープンして数日後、お忍びで買いに来た彼女が『妖精の宝石ジャム』の虜になって以来、すっかり常連客となり、今では親しく話せる顔なじみになってくれていた。
「はい、お騒がせしてすみません! 皆さんのおかげで無事です。……あの、今日はちょっと忘れ物を届けに来まして」




