第63話:決戦4
帝国軍の残党は、予想通りイタリカ王国に逃げていった。そこで怒り狂ったイタリカ王国の国民に襲撃されていた。
斥候の報告により、帝国軍には反転して攻撃してくる余裕など全くないことが判明した。
しかし、油断は禁物なため、一隊を防衛のため臨戦態勢で待機させ、他に警戒、偵察部隊を四方に放っていた。
そして、他の部隊では、勝利の大宴会が開かれていた。
俺達の部隊はキタイの部隊と一緒になって宴会していた。
シュタインがウダイに気に入られたようで一緒に飲んでいた。
「お前は本当の戦士だ、一人で500人に突っ込んでいくなんてふつうはできない」
「いやー、そんなに褒めんなよ。それよりお前らの弓の腕も尋常じゃないぜ。びっくりしたぜ」
「まあ飲め」
「お前も飲め」
二人は肩を組んで酒を注ぎ合った。
「今度お前と戦ってみたい。強いものと戦いたい」
「よーし、今度やろーぜ。帝国兵には手ごたえの有る奴がいなかったからなあ。あんたのなら良い勝負にいなりそうだ」
「うれしいぞ」
「わははははは」
勝ち戦のあとだ、皆がお互いの活躍を褒め合って、上機嫌になっていた。酒を注ぎ合い、どんどん出来上がっていった。
「あんたの槍は凄かった」
「お前の弓もなかなか」
「いやーそれほどでも」
「わはははは」
俺もその大宴会に交じりたかったが、シェンロンに引っ張られて、お偉いさんの会合に連れていかれた。
大天幕の中には、フリードリヒ王、ビクトリア女王とエーデル公爵、マルチェロ統領とアジェンダ司令官、イタリカ軍総司令がいた。
「遅れて悪かったな」シェンロンがそう言ってどっかりと座った。
「お前も座れ」
「えっ、俺はこんな偉い人の会合に参加する資格さえないですよ、ましてや座るなど」
「みないいか、こいつは帝国皇帝の首を挙げた英雄だ。ここに座る資格があると思うが。そしてキタイの大ハーンである俺が座っていいと言ってるんだ。どうだ」
シェンロンが、そこにいる全員をねめつける様に見回し言った。
「いいんじゃないの。ハン久しぶりね、相変わらず大活躍じゃないの」とエーデルが笑いかけてきた。
皆苦笑いしていたが、フリードリヒ王が断じた。
「許す、ハン卿の功績に免じ、この会合に出席を許す。ご苦労だった」
「恐縮です」俺は座るしかなかった。なんか針のムシロなんですが。
「こたびは皆ご苦労だった。見事敵を撃退したのは皆の活躍のおかげだ。この通りお礼を言わせてもらう」
フリードリヒ王が首を下げた。
全員が驚いた。大国の王が頭を下げたのだ。
「そこまでされることはない、これは全員の危機を全員が協力して跳ね返したのだ。誰が誰に礼をするというものではない」
「その通りです。これは東方諸国全体の危機でした。ランド王国としても協力は当然です」
「イタリカ王国としては、感謝の申し上げようもない。こちらこそ礼を言わせてもらう」
全員が立ち上がり、頭を下げた。
「もういいじゃねいか、全員が活躍したってことでよ。それよりこんだけ活躍したハンになんかご褒美はあるんだろうな。俺はこいつに大恩がある。キタイの大ハーンになれたのはこいつのお陰ともいえるんだ。どうなんだ」
俺は慌てた、ここでそんなことをいうのは、どうなんだ。
「シェンロン、俺は別に」
「いいからここは俺にまかせろ」
「もちろんハン卿には加増があると思ってくれていい」
フリードリヒ王が苦笑しながら断言した。
他の人たちも余りのことにゲンナリしたような顔をしていた。
「よしはっきり聞いたぞ。俺が言いたいのはそれだけだ。じゃ、こんな辛気臭いところに長居は無用だ。ハン、帰るぞ、あとはお前らに任すぞ」
シェンロンはそういうと席を立った。後にはキタイの文官が残った。
「はい」
俺もシェンロンに続いて席をたった。ここは俺には場違いだ、早く出ていくに限るよ。面倒なところは文官たちに任せればいいか。
天幕を出る前に、ちらっと振り返ってみたが、全員が何とも言えないような表情をしているのがみえた。まあ俺の知ったこっちゃないが。
俺達はその足で、シェンロン隊の所に向かった。大騒ぎしているのが、遠くからでも聞こえた。あー、早くあっちに混ざりたいよ。




