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第61話:決戦2

シェンロンの騎馬隊が、敵の分厚い陣形を突破した。


敵の陣形を突破したシェンロンが見たものは、先に陣形を突破したシュタイン隊だった。シュタインは何かよくわからない雄たけびをあげながら、敵の後方から再突入していった。


「あいつが一番乗りか」

「くそー。矢戦したからか。あいつならそんなこと考えず、突っ込みそうだもんなあ。くそ負けた負けたあ」

シェンロンが一番乗りでなかったことをたいそう悔しがっていた。


「シュタイン隊が一番か、あいつはやると思ったんですよ」

俺は嬉しそうにシェンロンに言った。

「ハンにはもったいない奴だぞ、俺にくれないか」

「嫌に決まってるでしょう。あいつは俺の大事な仲間です」

「仕方ねーなー」


その後何隊もの部隊が敵陣を突破し、再突入していった。

敵は四分五裂どころか何重裂にもなっており、大混乱に陥っていた。


「敵陣大混乱に陥っています、好機です」

本陣は沸き立った。


そのなか幕僚の一人が右を指差して叫んだ。

「右翼ランド王国軍突撃します。先頭はエーデル卿です」

その言葉通りエーデルを先頭にランド王国軍は錐体隊形で敵陣目掛け突撃していた。エーデルは剣を振り回して何か叫んでいたが、何を言っているかはここまでは伝わらなかった。


別の幕僚が左を指差して同様に叫んだ。

「左翼フェルシアーノ共和国軍も突撃です。先陣はアジェンダ指揮官です」

みれば左翼でもアジェンダを先頭に同様の隊形で突撃していた。アジェンダはただ無言で剣を前方に突き出していた。


それを聞きシュバルツの心は躍った。若者が躍動している。老人にとって、こんな心が浮き立つことがあるだろうか。

「シュバルツ様、わが軍に指令を」

じっと立っているだけのシュバルツに焦れたように副官が進言した。


それを聞いてシュバルツが威儀を正した。

「そのとおりだな」

「ブルク王国軍全軍に命じる。総攻撃だ。全軍突撃、ありったけのドラゴン旗あげろ」

周囲が歓声に満ちた。手を突き上げるものも多かった。

「は、全軍突撃。ドラゴン旗あげよ」

そのなか副官が冷静に復唱し、テキパキ命令を発した。

命令を出すと途端に突撃しだした一隊がいた。

一人の騎兵を先頭に、一部隊があっという間に突撃しだした。


「突出するわが軍の騎馬隊がいます」

「誰だ」

「あの旗はオットー卿です。既に突撃準備していたようです」

シュバルツはついに笑みを漏らした。うちにも生きのいい若者がおるじゃないか。うれしいぞ。こんなうれしいことはない。


その時、敵陣の一角が突然割れ、敵兵が数名中に舞った。

「もう少し手ごたえの有る奴はいねーのか」

それはシュタインだった。シュタインはすでに返り血で真っ赤になっていた。

「よーし、もう一回突入だ。野郎どもついてこい」

ウオーと歓声があがり、シュタイン隊はまた敵陣に突入していった。


「わははははは」

シュバルツはついに笑い声をあげた。


「あいつが一番の元気者だな」

良いぞ、非常に良いぞ。若者が元気に活躍している、躍動している。これが見たかったんだ。

「血がたぎるのお。儂も突撃するか」

シュバルツが剣をもって立ち上がった。

「いけません」

周囲の幕僚がシュバルツを押しとどめた。

「総大将は、本陣で全体の戦況を見極め、各隊に命令を出し、部隊を有機的に戦わせるのがそのお仕事です。ここはご自重を」

幕僚は必死だった。シュバルツが本当に戦場に出るように見えたのである。

「そんなことくらい分かってるわい。言ってみたかっただけだ」

シュバルツがどっかりと席に座ると、周囲は安心したように吐息を漏らした。



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