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第52話:荒野の戦い4

戦いは早朝より開始された。

王国軍は、中央、右翼、左翼が、ほぼ一体化し重装歩兵による堅固な陣を形成していた。

そして、敵の重装歩兵が強敵だとの情報により、少しでも耐えられるように、中央が少し出っ張る凸型の陣形を作っていた。

敵は重装歩兵によほど自信があるのか、矢戦などせず突進してきた。

それを味方の重装歩兵が受け止めた。こちらの重装歩兵も精鋭を選りすぐっており、初戦は歩兵の捻じり合いになった。

現在は互角で戦えていた。


シュバルツ様は全ての味方の騎馬隊を左翼に集めていた。これで左翼では騎馬隊は敵の倍になる、右翼には騎兵はいないが、そこは別の策があった。

ハン隊の騎兵はリュウが指揮していた。クロイツ隊はクラインが指揮している。二千対千の戦いだ、普通に戦っても勝つだろう。

クラインはとても堅実な戦いをする指揮官だった。騎兵を率い、敵とまともにぶつからず、側面を襲い、敵の数を削いでいった。

リュウの同様の策を取った。こちらの方が多いんだ、敵を少しづつ削いでいけば、そのうち敵は崩壊する。


右翼の敵騎馬隊は戸惑っていた。いるはずの騎馬隊はいず、長大な槍衾が前を遮っていた。何度か突っかかっていったが。敵槍兵は精兵で、崩す事が出来なかった。

敵騎馬隊の隊長が、この槍兵はどうせ追っては来れないんだから、俺たちは左翼の騎馬隊の応援に行けばいいんだと気づいたとき。

右手の森から騎馬隊が出現した。


それはシェンロン率いる2000のキタイの騎馬隊だった。

俺とシュタインも参加しているけどね。これが強烈な隠し玉なんだな。

敵は余りのことにどうしていいか分からないようだった。槍隊の前をぐるぐる回るだけだった。


「全員曲射」

シェンロンが叫んだ。キタイの兵は子供のころから馬に乗っているため、両足で馬体を締め付けることで、上体が安定し、両手が使える。騎射などお手の物だった。

2000人が天に向け矢を放った。


シェンロン達は、さらに敵に接近した。


「最前列30騎、直射10連」

最前列の最精兵30人が直射で10矢連続で放った。それは目にも止まらぬ早業だった。


二千本の曲射と、三百本の直射はほぼ同時に敵に到達した。つまり、二千本の矢が天から降り注ぎ、同時に三百本の矢が正面から襲い掛かって来たのだ。


シュタインは舌を巻いていた。


こんな同時攻撃、俺でも防げるかどうか分からないぜ。しかも相手は、片手は手綱を離せないような半端な騎兵だ。両方の矢を防ぐのは絶対無理だ。大混乱に陥るだろう。


そうか、ならば、もっと混乱させてやろうじゃないか。


シュタインは馬に鞭を当てた。全速力で敵に向かっていった。

「おい、シュタインどこに行くんだ」俺は慌てたが、そんな声はシュタインには到底届かなかった。


敵に矢が襲い掛かった。曲射、直射どちらも防ぐことは到底無理で、どちらか、あるいは両方が敵に突き刺さった。

「うわー」

敵が悲鳴を上げた。

約半数が落馬した。死亡したか、戦えないほどの傷を負っていると思われた。


そこにシュタインが突撃した。

「コノヤロー」戦斧を振り回し、当たるを幸い、なぎ倒した。

どうせ周りには敵しかいない、どんな無茶をしたってかまわないんだ。いくぞ、おりゃー。

敵は矢が降り注いで大混乱に陥っているときにシュタインの突撃をうけ、どうしていいか分からない状態に陥っていた。

「何だこいつは」

「取り巻いて殺せ」

「強いぞ」

「うわー逃げろ」

シュタインは勢いのまま相手の隊列を引き裂き、味方の槍隊の所まで到達した。味方を背後に従え、向き直った。返り血で真っ赤になったその姿は壮絶だった。

そこで戦斧を頭上にかかげ大見えを切った。

「死にたい奴はかかってこい」

敵は全員が戦慄した。


「うわっはははは」シェンロンは爆笑していた。


「お前の所には、とんでもない奴がいるな。みろ一騎で五百騎を圧倒しているぞ。ああいう奴は大好きだぞ」

「あいつを死なすな。全員抜刀、突撃」

キタイの兵は小さい偃月刀に似た二刀を両手で使う。その剣を全員が抜刀し、天に掲げた。

頭上に掲げられた四千の剣が、陽光を反射し、ギラギラと光った。


いい加減浮足立っていた敵騎兵はキタイの騎兵が抜刀し突撃しているのを見て戦意を喪失した。シュタインから離れるように左右に逃げ出した。


「ウダイ、右」シェンロンが横にいる髭ずらの熊のような大男にむかって命じた。

「ウス」


「おら、なんで走らねーんだ。ここは手柄立て放題なんだぞ」シュタインの馬の脚が止まっていた。


「ははは、馬だって疲れるんだよ。お前は無茶しすぎだ。馬を休ませてやれ」

キタイの兵に次々と抜かれて、シュタインは自分の頭をたたいて悔しがった。

「チキショーしょうがネーナ―」


そこからは戦闘ではなく虐殺だった。

馬も人もその力の差は歴然だった。加えて、敵は逃げており、撤退戦の時が損害が多くなるのは常識だった。撤退する敵の背に無慈悲な攻撃が加えられた。


「ウダイ、どうだった」

「これは戦いではない。俺は弱い者いじめは嫌いだ」

「それは良く分かるが、相手は侵略者だ。理由もなく攻め込んできたものだ。占領したところでは女子供をいじめているようだが、どう思う」

「女子供は守るものだ、それをいじめているのか。それは武人ではない。それはただの悪党だ。悪党は嫌いだ。そんな奴らは俺が倒す」

「そう来なくちゃな」


敵右翼騎兵はもろくも壊滅した。







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