第50話:荒野の戦い2
実は城を出る前に、シュバルツ様に呼び止められていた。
「ハン卿に頼みがある」
「私にできることであれば、何なりと」
「貴君はキタイのシェンロン殿と昵懇と聞くが、本当だろうか」
「はいあの爺さんとは昔から腐れ縁があります」
「では敵の足止め作戦のあと、シェンロン殿の所に行ってもらいたいのだ、彼に頼みがある」
「あの爺さんに頼むんですか、とんでもなくがめついですからボッタクられますよ」
「今回は良いのだ。それが次の戦いの要になるのだ。頼む」
「分かりました、金さえ払えば、何でもしてくれると思います」
「金は十分に払う。頼んだぞ」
というわけで、俺たちは国に戻らず、北上し、キタイに向かっている。まあ敵もまさか北に向かうとは思わないだろうから、逃走にもいいしね。
数日北に馬で駆けると、巨大な天幕の集団に出くわした。キタイのパオである。
何度も来てるとこなんで、俺の顔はみんな知っていいる。
「ハンか、しばらくだなあ」顔見知りの男が話しかけてきた。
「シェンロンに用事があるんだが、今どこにいる」
「ああ、今はあの中央のパオにいると思うよ」
「有難う」
俺は中央の巨大なパオに向かった。入り口で警戒している男も顔見知りだった。
「ハン、元気にしてたか」そいつは陽気に話しかけてきた。
「ああ、元気にしてたよ、シェンロンはいるか」
「中にいるよ、シェンロン様、ハンが来ましたよ。なんか用事があるようです」
中に声をかけると、わざわざシェンロンが出てきた。
このじいさんとは子供のころからの知り合いだ。キタイのたくさんいるハンの一人で、一部族を率いている。
俺の親父と仲が良かったようで、子供の時分はだいぶ可愛がられた。俺が初めて会った時からじいさんで、今もおんなじじいさんだ。俺はこいつは生まれたときからじいさんだったんじゃないかと疑っている。
「ヨハン久しぶりだな。まあ入ってくれ」シェンロンは珍しく上機嫌だった。
俺は、パオの中に入った。そこには昔懐かしい景色が広がっていた。
「ヨハン、お前が送ってくれた芋と麦は、大したもんだった。芋も麦も大量に収穫でき、他から食料を買う必要がなくなった。まあ、農耕するのは誇りに反する、なければ他から奪えばいいというのも一定数いるが。主に女性だが男にも戦いなんてない方が良いというものが増えている。技は殺し合いじゃなく狩りで磨けばいいとの意見も大きくなっているのさ。まあ腹が膨れれば過激な意見は減るわなあ」
「最近西方諸国を侵略した国がいてな、もともと食料を買っていた国が変わったんだよ。こいつらがろくでもない奴らで、食料の値段を吹っかけてきやがったんだが、あのイモのおかげで、買わなくともすんだぜ」
「その後突然攻めてきやがったが、逆にコテンパンにやっつけてやったぜ」
シェンロンが豪快に笑った。この爺さんメチャクチャ強いからなあ。相手も気の毒に。
「それはよかったです。今回はシュバルツ様より書状を預かっています」
シェンロンが書状を読んで顔色を変えた。
「あの馬鹿どもが攻め込んできたのか」
「そのようです」
「それを先に言え、あのクズどもにもう一度一泡吹かせてやる。今回は言い値で助けてやるよ」
とりあえず金はとるんだな。




