第47話:泥の戦い5
アジェンダが鉱山の中に呼び掛けた。
「外の連中は全て仕留めた。後はお前たちだけだ。投降せよ。さすれば穏やかな死を迎えられるだろう。そうでない場合は、今までの罪により、拷問の後の苦しい死になるぞ、さらに親族も罪を問われることになる。それでもいいのか。また一般の平民が命令により行っていたと認定されれば死罪を免れる可能性もある。投降せよ」
おとなしく出頭すれば悪くても一瞬で死ねるし、家族も助かるかもしれない。もしかしたら命も助かるかもしれない。できれば出頭してほしいものだが。
「誰も出てこんな」
「あるいは、中で自決しているかも」副官がそうであればいいという風にアジェンダに言った。
「それだけの覚悟があればいいんだが」
自決していれば連座は免れるかもしれない。もうこれ以上の悲劇がないように俺もそれを望むよ。
「決死隊を募る、入り組んだ坑道の中だ、どこから攻撃がくるかもわからん。もちろん死んだ場合家族には十分暮らせるだけの年金を支給する。死んでもいい者10人を募る。生きて帰った場合は通常の賃金の3倍を支払う。これでどうだ」
いってみれば相手は3人だ、気を付けていればそうそう死にはしないだろう。こんな割のいい仕事はない。
全員が希望した。
「共和国軍の士気がかくも高いと知り、小官は感動している。しかし死ぬ確率はある程度ある。結婚している者、老齢の親がいる者、長男はこれを除く」
これで候補者は21人になった。全員がくじ引きし、10人が選ばれた。
「では、出撃する」
アジェンダを先頭に、共和国軍兵士10人が坑道のなかに入っていった。
さすが隊長だな、危ない仕事の先頭にたっている。指揮官はこうでなくちゃな。じゃなきゃ部下がついてこない。
しばらくして全員が帰還してきた。
同時に三名の死体を運んできた。
「坑道内で自決していた」アジェンダがつぶやいた。
見ると二人は背中から刺されていた、最後の一人は自分で喉をついたと思われた。
「兵士が平民を口封じに殺し、最後に自決したんですかね」
「まあ、そういったところだろう」
「なんか嫌な国みたいですね」リュウがぼつりといった。
「ああ、おれもそう思うよ」失敗したら平民も殺して皆んな死ぬって、どんな国なんだよ。敵につかまっても生きてる方がいいだろうが。
「そんな国がもしかして攻めてくるかもしれないんですね」
「ああ、もっと守りを固めないとな。このことは王に報告しないとな」
館の地下に、多数の巨大なトカゲが飼育されていたのが発見された。
「運搬はこいつらが担っていたのか」
「ということはおとなしいのかな」
「一応言うことは聞くんじゃないか」
こいつらは、おとなしくもなかったし、言う事を聞くこともなかった。使役してみようとしたところ、何人かががっぷり嚙まれ、毒もあることが判明した。噛まれたところが尋常でないくらい腫れあがったのだ。
どう使っていたかは全くわからなかったが、トカゲは危ないため全て殺された。
あれ、どう使ったんだろうね。でもすんごく狂暴で、毒もあるからそこらに放つわけにもいかず、殺すしかないよね。仕方ないよね。
これで泥の戦いも終わった。あとは帰るだけだ。




