第46話:泥の戦い4
翌朝、俺たちは出撃した。
カタツムリは侵攻用に改造した。
カタツムリの後方に二本の板をのばし、それを水牛の胴体に結び付けたベルトに結合した。水牛がカタツムリを後方から押すように改造したのだ。これで敵の攻撃から水牛を守れるだろう。
侵攻用カタツムリ一台につき5人の兵士が乗車した。13台のカタツムリが、出撃した。
ある程度まで鉱山に近づくと、流石に音で敵に察知されてしまった。
館周辺があわただしくなるの、ここからでも分かった。
敵兵が、泥の際まで押し出してきて、矢を放った。
しかし、こちらのカタツムリは前面が頑丈な板で囲われ、屋根まであるため、矢での被害は全くなかった。
矢の曲射で水牛を狙ったものもいたが、水牛使いが全てはじき返した。
逆に味方の矢でケガするものが相次いだようで、敵は館に撤退していった。
カタツムリは、泥の海を渡り切り、鉱山のある陸地に接岸した。
カタツムリ前面の道板が前に倒れ、兵士が飛び出していった。
盾を持った兵士が、事前の計画通り15人づつ4隊に分かれ、館の四方を包囲した。
「さて、ハンス殿、これからどうすればいい」
「敵が、こちらが何をしているのか察知されないように、間断なく矢を放ってください。それから壁を上るのに長けたものを3名貸してください」
「うってつけの者がいるぞ、大道芸でも食っていけると言われている者が3名いる。マルコ、ジョバンニ、パウロ出番だぞ」
「何でもお申し付けください」その中のリーダー役のマルコが答えた。
「君たちにお願いしたいのは、これなんだな」ハンスが説明した。
「そんなことでいいんですかい」
「いいんだなこれが、あとどうなるかは楽しみにしてくれ」
「はい」
館には間断なく矢が打ち込まれ、窓から様子をうかがうのも危険になっていた。
そこに3人が袋を背負って、館に近づいた。3人は鉤爪のついた縄を投げ上げ、屋根に引っ掛けると、するすると簡単に壁を上っていった、全く問題なかった、まるで猿みたいだった。壁を上り切ると、建物の角にある煙突に袋の中の物を全て注ぎ込んだ。
それはただの黒い粉に見えた。
黒い粉を煙突に注ぎ込むと、3人はスルスルと壁を降りてきて、何事もなかったかのように、味方陣地に帰還した。
「朝飯前の仕事だね」
「こんなのは楽勝だね」
「ふふん」
3人の帰還を確認したうえで、アジェンダが命令した。
「火矢を放て」
無数の火矢が曲射で放たれ、館の天井に落ちていった。
初めは何事も起こらなかった。
しかし何回目かの射撃で、数本の矢が煙突の中に入っていった。
とたん、全ての窓と扉が瞬時に吹き飛び、轟音とともに紅蓮の炎が噴きあがった。
館からは悲鳴と絶叫が聞こえてきた。そして、その館は轟轟と火柱をあげ炎上した。
あちゃー、こりゃ誰も助からないぞ。いつものことだが、大変悲惨なことになっているな。
「何が起こった」
アジェンダはじめ共和国軍の全員が余りのことに呆然としていた。
「粉塵爆発です」ハンスがすまして説明した。
「細かい粉と空気が一定の割合に混ざり合う時、そこに火が付けば大爆発を起こすんです。今回細かくすりつぶした石炭の粉を煙突から注ぎ込みました。それに火矢で引火させたのです」
「こんなにも凄い爆発をするのか」
「はい、炭鉱ではごくまれに起こります。粉塵場発が起これば大変な被害を出す災害となります。起こしてはいけない事故なのです」
「これでは敵には生存者はいないであろう。改めて恐ろしいことだ」
アジェンダはハンスを怯えるような目で見ていた。
まあそうなるよな。あいつは普通じゃない。でもやっていいいよといったのはあんただからな。俺は知らないよ。
火災が収まった後、俺たちは焼けのこった館に入った。内部は黒焦げだった。賊も大部分は焼け死んでいた。
一人比較的炎が少ないところにいたのか、虫の息だが生き残っているものがいた。
「おい、何が最後に言いたいことはないか、この黒幕はいるのか」
「に 西の帝国が」そいつはそう言い残して息絶えた。
「西の帝国ってなんだ」
「聞いたことないな」
「何だろう」
「全部で27名の死体を確認しました」
「後三名いることになる、鉱山の中か」




